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第86回全日本大学バスケットボール選手権
筑波大学が3連覇を達成 3連覇以上の達成は1999年の日本体育大以来

2008.12.19 (Fri)

【2008インカレ・コラム】彼らが応援する理由・天理大

関西リーグ&西日本選手権覇者の天理大が教えてくれた
チームで戦うことの意義

081207enjintenri今インカレでは、関西勢の躍進が目立った。大会初日に関西3位の立命館大が第1シードの青学大を苦しめたのを皮切りに、関西1位の天理大は関東2位の東海大を退けての6位入賞。関西2位の同志社大も東海地区の実力校・愛知学泉大を破ってベスト8に名乗りをあげた。関西のチームが2つベスト8に残るのは1999年以来9年ぶりのこと。毎年、東京で開催されるこの“アウェー”な大会で、今年結果を残せたのはなぜか―?

それは選手たちが鍛錬してきたプレーに加え、「応援の力」も大きかったに違いない。立命館大も同志社大も、関西らしいノリのいい応援でコートのメンバーに“いつも通り”の力と笑顔を与えた。特に天理大はメンバー一人ひとり違う応援を繰り出したり、別働隊が登場したり、ハーフタイムにスタンド内で集合をかけてみたりと選手を楽しませながら自分たちも楽しんでいた。しかし、天理大のキャプテン・野口翔は意外な言葉を口にした。

「応援団は本当は全く来ない予定でした。去年も1人も来なかった」

インカレ前に、天理大に何が起きたのか?どうしてこのようなチームに生まれ変われたのか。コートとスタンド、それぞれの場所にいる4年生に聞いてみた。

写真:ラストゲームである5位決定戦が終わった後、スタンドとベンチのメンバー全員で円陣を組む天理大

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「やっぱりこの舞台で応援してほしい」
リーグ後のミーティングでつながった思い

081207noguti_ouen天理大は昨シーズンも“能力の高さは関西でもピカイチ”という前評判があったが、関西・西日本ともタイトルを取ることはできず、インカレでも関東11位の筑波大を相手にこれといった印象を残せず敗れた。今年、この試合を振り返ってもらうと、皆一様に同じ敗因をあげた。

「去年なぜ負けたのか?来たのは登録選手だけで、応援は来られなかった。代々木の暗い中で1回戦をやったんですが、応援がなかったから負けたのもあります。応援がいるのといないのではやっぱり違う」(#10サンバ)
「去年は応援団も連れて来られず1回戦負け。それに比べて今年は本当に心強いです」(#8知念)


なぜ、昨年は来られなかったのか。答えは簡単だ。関東以外のチームは、移動費・宿泊費を考えると登録選手以外のメンバーも伴うには負担が大きい。それでも応援しに来る理由が、昨年の天理大にはなかったのだ。

「今年のリーグ戦までは、自分たちは関西の中でもそんなにいいチームではなかったです」と野口は言う。原因はAチーム・Bチーム間の温度差にあった。大所帯のチームが必ず直面する悩みに、天理大もぶつかっていた。

「A・Bの溝というか、ギャップがあって。でも、リーグ戦が終わったあとの全体ミーティングでAもBも両方、思っていることを言い合いました。それでコミュニケーションがとれて、チームがいい方向に向かっていったんです。うちはAとBの練習は時間をずらしてやっているんですが、今まではAの練習の時間はAのメンバーだけ、Bの練習のときはBのメンバーだけがいるという感じだったんです。それを、Aの練習をBが見る、Bの練習もAが見るというように互いのプレーを見合うことにしたら、今まであまりしゃべることのなかった奴ともコミュニケーションをとれるようになって、チーム全体のコミュニケーション力が上がったのが良かったと思います」

そして何より、このミーティングでAチームのメンバーが発した言葉に、Bチームのメンバーは“いっちょ、やったるか”という気持ちになった。その言葉とは、「やっぱりこの舞台で応援してほしいから、みんなに見に来てほしい」。

それは応援してもらうに足るプレーを見せる、という宣言だった。もうこのときには選手登録期限を過ぎており、Bチームのメンバーは応援するには一般の観客と同じようにチケットを買って入るしかなかったが、それでも応援しに行くことを決めた。

「ありがたいですね。うちは部員が50人くらいいるし、特に4回生でメンバーに入れなかった奴の思いをどうこちらに向けていくかで悩んだこともあったんです。でも、めっちゃ声を出してくれている川端ってリーダーがいるんですけど、あいつはリーグのときは見に来なかったこともあったんですがミーティングのあと変わってくれて、あいつが引っ張ってくれたので応援もああしてまとまったと思います。あいつにはすごく感謝しています」(野口)

081207kawabataその川端応援団長は実は、年は1つ上になる。「天理のフォーメーションとかが好きで、天理でバスケットがしたいと思って、浪人して1年間勉強して一般で入りました。仲間に恵まれたので、この年に入れてすごくよかったと思っています。自分は出られないですけど、応援で貢献できたらなと思って」

それだけの思いを持ったメンバーが応援に回ってくれている。その思いがコートに立つ選手のプレーを冴えさせ、それによってまた応援が盛り上がり、コートも盛り上がり…という相乗効果が生まれた。

写真上:天理大のキャプテン#4野口(中央)。笑顔の裏にはチームをどうまとめるかという悩みがあった
写真下:中央が天理大の応援リーダー。「天理でやりたい」という気持ちを応援で表現した



無限の励ましと的確な指摘
「皆で楽しむことができてよかった」

081207syugotenri迎えた本大会では、まず一回戦で札幌大に快勝。天理大の4回生にとっては初のインカレ勝利だった。そして、去年はなかった応援が大いに注目を集めることとなった。#15根来が得点をあげれば長渕剛の「トンボ」の冒頭を歌い、沖縄出身の#8知念がドライブを決めたなら「シーサー」コール。「うちは2回生や3回生におもしろいやつが多くて、どれもそいつらが適当に始めた応援に全員が乗っかる感じで定着していきました」(川端)という。また、#10サンバが厳しいマークに合い、ファールされることが多くなると、「サンバー、大丈夫!」とたとえスタンドと反対側のゴール下であっても励ましの声が飛んできた。

今年、西日本選手権、関西リーグで初優勝を飾ったときより、今の方がチームとして強いのではないか?そんな手応えも生まれた。そしてそれを見事に証明してみせたのが、4回生の引退をかけた大一番、二回戦の東海大戦だった。

会場は一回戦とは異なる横浜文化体育館。チーム応援席はコートレベル、ベンチのすぐ後ろに作られたが、IDのない天理大の応援メンバーは2階客席から応援するしかなかった。しかし、そのハンデをものともしない。今にもティップ・オフという緊張感が溢れる中、大きな声が響いた。
「レッツゴー、天理!レッツゴー、天理!」
声の元をたどると、ベンチと反対側の通路でこっそり待機していたメンバーが1人。グリーンのチームスウェットに黄色いメガホンで声を張り上げていた。観客は驚いて笑い、空気が一気に和んだ。天理大のメンバーも硬さが取れたに違いなかった。立ち上がりから野口らの連続3Pシュートで12-0と先行してみせたのがその証拠だ。

川端が「インカレでのベストの応援は東海大戦」と言うように、第2シードの東海大も気迫溢れるプレー、そして必死の応援を見せたが、天理大も負けじと対抗した。結局、最初のアドバンテージが生きてトップ4シードを倒すアップセットを演出。これでインカレ最終日、そしてオールジャパンまでこのチームで試合ができることになった。「あれでチームが一丸になれたんじゃないかと思います」(川端)

天理大にとって1番いい状態で臨んだ翌日の準々決勝・慶應大戦は、代々木第2体育館に戻り、ここでも「レッツゴー、天理!」を試みた。だが、観客はその姿を見やるだけでなかなか乗ってこない。
「会場の雰囲気はすごくアウェーな感じ(笑)。関西では僕らが色々やってみたら何かしら反応があるんですよ。そのアウェーな感じでさらにやる気は出ましたが、関東はリアクションが薄い感じですよね?」(川端)
関東のファンにとっては少し耳の痛い話だ。だが天理大のメンバーはこれにめげることなく、ハーフタイムに川端が”集合”をかけて意思統一し、後半に向かった。「やっぱり、応援も気持ちを1つにしないと伝わらないから」

結局、最後に突き放されてしまったが、結果的に優勝した慶應大を最も苦しめた。何より印象に残ったのは、接戦の苦しい中でも、ビハインドになって追い詰められても、コートのメンバーが笑っていたことだ。
「インカレは楽しくやろうと応援団のメンバーと一緒に言っていたので、負けているときでも常に笑ってやろうと思いました。やる方も楽しくできたし、応援団も来てよかったと言ってくれたので、それが1番よかったです」(知念)

081207tenriouenさらに、ラスト2戦は応援メンバーが文字通りチームを引っ張った。準々決勝翌日の順位決定戦は、もう上位が望めず気持ちを維持するのが難しいもの。その上、連戦の疲れがあり、相手も関西リーグで勝っている同志社大ということもあっていいパフォーマンスが出なかった。するとすかさずスタンドから「集中してくれ!」と声が飛んだ。応援してほしいと言われても、それに足るプレーを見せてもらえなければ“応援”はできない。これはBチームのメンバーとして譲れないところだった。

「同志社大戦のあと、Bチームのメンバーに『試合に出ているからにはああいうのはあかんのとちゃうの?』と言われて気を引き締め直しました」と野口は振り返る。これこそがA・B一緒に乗り込んだ最大の効果であり、天理大のコートとスタンドの関係が他チームとは少し違っていることがわかるエピソードと言える。それぞれが対等だから、応援を通してチームの力になれるのだ。

翌々日の最終戦・明治大戦では、コートにそれまでの集中力と笑顔が戻った。最後は力の差を見せられる格好となったが、メンバーは楽しそうに笑っていた。試合後にメンバーがベンチ後ろのスタンドに回って見上げると、Bチームのメンバーも笑っていた。そのまま全員で円陣を組む。全員で戦い、全員でこの結果を残した。その姿は当たり前のようでいて、新鮮ですがすがしい印象を関東に残してくれた。

「応援のメンバーも皆気持ちは1つなので、一声掛ければもうまとまる。だからリーダーと言っても別にそんなに大変なことはなかったです。メンバーはこの応援がすごく励みになっていたみたいなので、それでまた僕らも一生懸命応援しようという感じになれました。うちは皆、バスケットを楽しむことを1番に考えているので、これからも会場で天理のバスケットを楽しんでもらえたらいいなと思います」(川端)

写真上:「応援も気持ちを1つにしないと伝わらない」。スタンドのメンバーで“集合”&意思統一を重ねた
写真下:同志社大戦ではきっぱりと意見を言い、プレーがいいときに盛り上がるだけではない応援の姿を見せた



【2008インカレ】5位決定戦 明治大VS天理大
【2008インカレ】11/29一回戦 青山学院大VS立命館大(立命館大応援リーダーコメント)
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