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2014.08.16 (Sat)
【その他の記事】PEOPLE vol,1 石田剛規(SUNS.EXEオーナー)
インタビューの新シリーズを開始します
BOJはこれまで日本の大学のバスケット界をメインに取材を行ってきました。情報の少ないカレッジバスケの世界について、もっと多くの人に知ってもらいたいと思ってきたからです。それとは別に10年以上の活動を通し、大学を経て活躍を続ける選手等、バスケットに関わる多様な人についてのことも伝えたいと考えるようになりました。今回始めるシリーズは、そうしたバスケットに関わる人についてその思い、活動を追っていきます。
第1回は、昨年NBDL東京エクセレンスの主将としてリーグ優勝に貢献し、このほどリーグが開幕した3×3のチームオーナーとして新たなチャレンジを始めた石田剛規選手にご登場いただきます。

2014年7月12日に開幕を迎えた日本最高峰の3×3リーグ「3×3.PREMIERE」。その中のひとつ、SUNS.EXE(さんず どっと えぐぜ)のオーナーを務めるのは、NBDL東京エクセレンスでプレーする現役プロバスケットボール選手の石田剛規だ。大学でその才能を開花させ、卒業からちょうど10年。どのような考えがあって3×3へと参戦をしたのか、湘南ひらつかビーチパークにおける開幕戦を終えたところでその思いを語ってもらった。
実現するための第一歩が3×3チームのオーナー
2014年、3人制バスケットボールのリーグ、「3×3.PREMIERE」が誕生した。3×3(スリー バイ スリー)は従来の3on3を元に、FIBAが正式な統一ルールを定めた新しいバスケットボールの種目だ。「PREMIERE」は日本における最高峰と位置づけられたプロリーグである。
このたび誕生した7チームの中で、神奈川の湘南地域をホームとするのがSUNS.EXE。プレイヤーでありながらチームを持つという新しい石田のチャレンジは、どこから生まれたものだったのだろうか。
—まずは3×3のチームのオーナーになろうというのは、何がきっかけだったのでしょうか。
「自分はプロとしてここまでバスケットをやってきました。まずはトヨタに入ってこれまで千葉ジェッツ、東京エクセレンスとチームを渡ってきましたが、そこで見えたこと、感じたことがいろいろあります。それぞれのチームごとにやろうとしていることがあって、盛り上がったりそうでなかったりしている部分があると思います。そういうのを見ているうちに、もっとこうした方がいいのになというアイデアが出てきたんです。でも自分は契約してもらっている立場。現役の選手だし、それを実行するには自分の立場では動きにくい。それぞれが理念を持って頑張っているチームに自分のやりたいことをプラスするというのは、なかなか難しいことだったんです。昨シーズンから東京エクセレンスでプレーしていますが、新しくできたチームだったので、これまでの経験から何かいろいろとお手伝いすることができたらと思っていました。でもこのチームは『スポーツは文化』だという確固とした理念を推し進めているチーム。それはとても素晴らしいことなんですが、僕が考えたのは理念のようなこととは別に、もっと簡単なところ、むしろバスケットボールから離れたところでも何かできないかということでした。それができるのがこの3×3のオーナーということなのかな、と考えたのが参加のきっかけです」
—選手としてだけではなく、バスケットボールに対して何かがしたいと思ったことがチームオーナーにつながったということですね。リーグができるという話はいつ頃あったのでしょう。オーナーについて具体的に考え始めたのは?
「リーグの話を聞いたのは昨年、2013年の夏頃ですね。自分はアディダスと契約しているのでそこから入ってくる情報があるんですね。アディダスは3×3のスポンサーですが、この競技が盛り上がってきているぞというのはもともと聞いていました。そのうちにリーグができるという話になって、それが本決まりになったときにすぐに参加しようと決意しました」
—現役選手では石田選手と同じようにつくばロボッツの岡田優介選手が共同オーナーを務めるチームもありますが、選手でもチームを持てるというのが面白いところですね。
「オーナーの立場や職業に特に制限はないと思います。僕は個人でやっていますが、千葉ジェッツのように元のチームがあって、というところもあるし、現状は誰でも参加できる状態だと思います。例えば商店街単位であったり、企業であったりも可能だし、申請者の中からリーグが基準を満たしたチームを選ぶということですね。
—いずれは自分のチームを持ちたいといった希望は持っていたんですか?
「自分でチームを作れたらいいなという考えはありました。どのリーグでもこだわりなく。でもそうすると1億2億というお金を動かさなければいけなくて、それはプレイヤーとしてはやってきたけど、チーム運営をするといった活動実績のない自分にはなかなか難しいなと。一方で、今ある既存のチームの中で運営側に回るという方法もあるかなとは思いました。しかし現役選手のうちは運営の活動できません。両方の面でどうしよう、と考えていたところに3×3の話が出てきて、これだったら自分の立場でもチームを持てる規模だし、プレイヤーとしてもシーズンに影響しない。いろんな条件が合致したし、ちょうどいいタイミングでもありました」
—チームを持ちたいという気持ちは何が根幹にあるのですか?
「僕はトヨタを2009年に退団したあと、バスケットから一時離れていた時期があります。そのときの経験から自分のチームが欲しいというよりは、別の足の踏み場というか、場所があるといいなと思っていたんです。それが今回作ったSUNSという3×3のチームです」
クラウドファウンディングは
“人を巻き込む”きっかけ
SUNS.EXEは設立時にクラウドファウンディングで資金を募った。単なる資金集めというだけではなく、「居場所作り」を謳ったその趣旨には、バスケットという世界に誰もが集いやすい環境を作っていこうという意志が読み取れた。
—オーナーとして具体的にどんな仕事をやっているのでしょうか。
「だいたいが雑用みたいなものです(笑)。広報担当者はいますが、ホテルやチケット、ドリンクの手配といったチームのマネージャーみたいなこともすべてやっています。そのほかは営業してお金を集めることも重要な仕事ですね」
—そうした資金集めはホームである湘南の地域をメインにしているんですか?
「資金集めといったことは、リーグが開幕した今日から具体的にできるのではないかと思います。結局これまではこんな団体があるんです、こんなことをしようと思っています、と言いつつ実体は何もなかった。でもリーグが開幕してこんな形で人が集まって、盛り上がっているんですよ、と形や結果が見えてこそ、売り込みにいけるものです。形がない期間は知り合いやバスケットが好きな人にしか応援してもらえませんが、ここからまた広げていけると思います」
—資金集めはクラウドファウンディングなどを活用していますね。NBDLなどに比べたら規模は小さいですが、それなりの資金が必要かと思いますが、ほかには?
「個人的な出資と、あとはスポンサーによって成り立っています。ワンシーズンの運営のために、最低でも数百万という規模でまとまるのではないかと思っていますが、なんとか目処が見える金額でもあります」
—クラウドファウンディングで出資を募る際、「居場所作り」についての考えを語っていましたね。日本でバスケットボールが今ひとつ盛り上がりきれない中、まずは「人々が自然と足を運べる居場所を作りたい」と。
「そうですね。まず、こういう試合のようなイベントがあることが基本です。バスケットボールをこれまでずっとやってきましたが、『僕たちバスケットボールのチームです』と言っても見に来るほどの関心を持ってくれる人はそこまで多くないと感じてきました。でもみんなバスケットボールって一度見てくれたら面白いと言ってくれるスポーツだと思います」
—それはバスケットを知る人がみんな抱えている思いですよね。「見れば面白いのに」と。
「そうです。でもその見るきっかけを作るのに、バスケットボールだけを押し出しても人が集まらない現状がある。だから僕はそれ以外の部分を広げていって、ファンになってもらって、見に行くきっかけにしてもらえたらと思っています」
—人に足を運ばせる「きっかけ」とは例えばどんなものでしょう。
「実はチームを作ったときに、SUNS.EXEはバスケットボールのチームだけどバスケ以外のこともしたいなと思ったんです。例えば、クラウドファウンドもそのひとつです。個人がスポーツチームのスポンサーになるというのは、なかなかないことだと思います。出資自体もしたことがない人が多いでしょう。それを少額からすることができる。それによってそのチームへの思いはもっと強くなるはずです。そして出資した分、見返りが大きければまた来年も出資しようと考えるはず。それが“きっかけ”のひとつで、僕らは何がその出資のリターンとなるかを考えていきます」
—クラウドファウンディングは単なる資金集めのツールではなく、きっかけのひとつということですね。リターンとして現状どのようなものを考えていますか?
「今年はチームができたばかりなので、チームグッズやチームとのふれあいの場をリターンとして提供しています。でもそうするとバスケットに関係したことばかりになってしまいます。そうではなくて、僕らは湘南にあるチームだから、このチームに出資していると湘南のいいものが届くとか、湘南で行われるバスケット以外のイベントに選手と参加できるとか、バスケットボールに関係なくても得した気分になれる、尚且つスポーツチームも支援できている、そんな形にしていきたいんです。それでチームが成り立って地域も盛り上がるという風になれば、より関心を持ってもらえるんじゃないかなと思います」
—今日も大会後に選手や観客も一緒にビーチクリーンを行うそうですが、バスケットをきっかけに、さまざまなことを行い、リンクしていく形ですね。湘南のいいものというと例えば?
「今は湘南の地域をいろいろ回って、探している途中でもあります。この平塚の近くに、海に似合うデオドランドスプレーを作っているところがあるんですが、それが本当にいいものなんです。例えば出資者へのリターンの中にチームグッズと一緒にそれを入れることも一案です。そうすればこの地域にこんなものがあるんだと知ってもらえて、ブランドにもメリットがある。それを認知してもらえたら次は何が届くんだろうという次の楽しみにもつながるし、僕らもチームのもの以外を届けられるのが面白くもある。次は地域の農園のジャム、次はまた地元の何かといったような、そういう展開を考えていきたいなと思っています」
—そのほかの展開としては。
「バスケット的にはこうした3×3の試合が軸です。あとはクリニックやスクールも今後開いていければと思っています。とにかくこの地域と関係を深めていくことですね。今日の開幕戦はサッカーの湘南ベルマーレが主催なんですが、一緒に何かできないかなとも思っています。チームを軸に何ができるかがチーム存続のポイントだし、そのために何ができるかを考え続けていきたいですね」
写真中:大会終了後、選手観客を問わず使った場所をきれいにということで、ビーチクリーンを行った。
弁護士に整備士などバラエティ豊か
神奈川の選手を中心にしたSUNS.EXE
SUNS.EXEは主に神奈川在住のメンバーで構成されている。その地域に暮らす選手やチームだからこその特色を大いに活かすつもりだ。メンバーそれぞれ、これまでやってきたバスケットの環境は全く異なるが、どういったチームケミストリーを生み出し、この地に根付いていくのか。また、3人制バスケットという石田にとって新しい挑戦も楽しみでもある。
—チームのメンバーのことについて教えてください。
「小宮、阿刀のふたりは福岡在住で、残りは自分も含め神奈川に住んでいます。本当にこの辺りですね。飯島は弁護士、濱田は米海軍の整備士をしていたりみんな仕事を持っています。僕以外のメンバーは全員これまでストリート等で活躍してきました。福岡のふたりは遠いので今回は来ていませんが、次の福岡の大会に出てもらおうと思っています」
—6人のうち、大会によって登録する4人のメンバーが変わる形になるんですね。3×3はドラフト形式でチームを決めましたが、なかなか個性豊かなメンバーです。チームメイトのことは元々知っていたのでしょうか?
「小宮と阿刀はドラフトで知りましたが、それ以外の選手はまったく知りませんでした。選手のリストを見て、神奈川に住んでいるということでコンタクトを取って、会って決めました。お互いのプレーもわからない状態でしたが、地元に何ができるかというのを考えていきたかったので、ポジションのバランスは見つつも、この地域の選手でやっていこうと」
—全く知らないというのは思い切った決断のようにも思えますが、そこは神奈川のチームだからというのが大きな理由なんですね。ところで、石田選手は3人制バスケットの経験は?
「まったくないですね。遊びでもやったことがないし、わからない世界です(笑)。だから今回メンバーを選びながら、みんなに分からないから教えてねという感じでしたね」
—実際やってみてどう感じていますか?
「やっぱりフィジカルが大事な戦いだと思うし、コートが狭いから展開が速いところが面白いなと思いますね。高さとかフィジカルの強い方が有利だと思いますが、うちはそれを優先して集めたメンバーでもないので、今のメンバーでどう戦っていくかを試行錯誤していく必要があります。でもお客さんとの距離も近いし、僕はこんな環境でやった経験がないので面白い。屋内でやるバスケットとは違う楽しみ方をどんどん売りだしていきたいですね」
—10分制ですが思った以上にハードに感じました。普通のバスケットと違って難しいところは?
「体力的にはキツいですね。今日は暑さのせいもありましたが。あと、シュートは難しい。ゴールが見づらいのと、風が少し吹いただけでボールが流れて入らなくなってしまいます。それが自分のせいなのか風のせいなのかわからなくて、どう修正するのか判断がつかないんですよね。でもそれもまたしょうがないというか、面白さのひとつだと思います」
—そういう部分は選手の技術も必要だし、観客にとってはひとつの観戦ポイントかもしれませんね。ラウンド6まで戦いが続きますが、SUNS.EXEをどのようなチームにしたいですか?
「びっくり優勝するようなチームですね。安定して強いというよりは、何か起こしてくれるような。今日はダメだね、っていう日は申し訳ないですけど(苦笑)。でも試合をやるからには真剣に熱くやり続けたいし、あとは楽しんでやっているところ、負けて悔しがっている姿もすべて見てもらえればいいと思います。観客が見たくなるようなチームを目指します」
—オーナーとして動いている訳ですが、石田選手は現役のプロバスケットボールプレイヤーでもありますよね。もちろんSUNS.EXEにもオーナー兼選手として出場している。そのバランスや切り分けはどう考えていますか?
「プロの選手って意外と自由な時間が多いんですよ。チームの練習をしても2、3時間だし、そこから個人練習をしてもプラス2時間ぐらいですよね。残りの時間で何かできないかなという気持ちはずっとあったし、エクセレンスにもわりと自由にさせてもらっているのでちょうどよく切り替えはできていると思います。プレーだけしているときと比べれば確かに負担もあるといえばあるんですが、それも楽しんでやっていますね」
写真下:蒲谷(右)、西塔(左)といった学生時代からの同期たちもこの3×3に参加している。
現役から離れていた時期に気づいた
バスケットの世界を広げるという考え
高校時代は無名の選手だった。世界が開けた第一歩は、慶應義塾大への進学。そこで1部昇格を成し遂げ、リーグ、インカレを制覇した。プロのプレイヤーとなるが、2009年にはヒザのケガもあって一時引退。その間に全国を回ってクリニック活動を行ったほか、フジテレビの月9ドラマ『ブザー・ビート』にも端役で出演を果たすなど活動の幅を広げた。2011年に再び現役復帰した後は、インタビューにもあるように、プレイヤーである一方でバスケット界全体のための貢献を考えた活動を行っている。一プレイヤーであった状態から、さまざまな変遷を経て、今もなおバスケットに関わり続けている訳とは。
—石田選手のバスケットキャリアもだいぶ長くなったと思います。ここまで深くバスケットに関わるような、人生の転機はいつ訪れたと思いますか?
「こんなにずっとバスケットをしているとは考えていませんでしたね。転機はトヨタを辞めて1、2年間、全国を回ってクリニックなどの指導をしている期間にあったと思います。そのままバスケットをやめて別のことをやることも考えましたが、指導をしていてやっぱりバスケットは楽しいなと感じることができました。そのあと千葉ジェッツに縁ができたときに、これはもうどっぷりバスケットの世界に浸るべきじゃないかと」
—むしろ第一線を離れていた時期がきっかけだったんですね。その2年間の間にドラマに出演したりもしましたが、違う世界を覗いて見えたものはありますか?
「ドラマの件だけではなくて、バスケットボールを選手でどっぷりやっていた状態から退くことで、一歩引いて考えられたのは良かったと思いますね。自分のキャリアを振り返る意味でも。そこからバスケットで生きていくことはどういうことだろうと考えていきました。プロ選手には寿命があるし、今はWOWOWでNBAの解説もさせてもらっていますが、それで1年間ずっと仕事になる訳ではない。コーチといっても枠があって数が制限されてくる。そうすると自分で何かを生み出さなければならなくなります。自分でスクールを運営する人もいれば、ストリートのイベントを立ち上げる人もいる。すると今度はバスケットという枠の中の狭い場所の奪い合いになっていってしまうんです。だから僕はバスケットボールを軸にしながらも、別の角度から攻めたいなと思うようになりました」
—バスケットの世界の中に生きる場所を見つけるのではなく、その世界を外に拓いていくというのは新しい感覚かもしれません。競技者としてだけの視点ではなくなっていますね。それが今回の3×3への挑戦でもある訳ですね。
「ここまでくると、自分のプレーを向上させるためだけにプレーするのは現実的ではありません。エクセレンスは昨年NBDLで優勝したし、プレーで貢献できた充実感もありますが、それ以上にチームを育てるとか何を残すかといった気持ちの方が強いかもしれません。エクセレンスはできたばかりのチームなので運営にも『もっとこうした方がいいんじゃない』とアドバイスもしています。そんな風にこの数年はずっとプレー以外のことも考えながらやっています。自分のやりたいことが直接何か大きいことにつながるかどうかわからないけれど、バスケット界のポジティブな盛り上がりにつながって欲しいんです。今回もクラウドファウンディングでいろんな人を巻き込んでスポンサーとなってもらっていますが、何か新しいものが形になればいいなと思っています」
—今バスケットは自分にとってどういうものになってきているんですか?
「プロになったときはバスケットは仕事だから、というシビアな感じでやっていました。今もプレイヤー、解説、クリニック、オーナーとバスケットばかりやっていますが、これほどバスケットを仕事にするとは想像していなかったし、不思議な感じです。バスケットボールが自分にとって何なのかといったら今も分からないというのが正直なところですが、頭の中では頑張ってバスケットボールから離れようとしています」
—離れる?それはなぜ?
「バスケットボールをやり続けてはいますが、そうすると考え方がバスケ、バスケとバスケ中心になってしまうんですよね。エクセレンスにいたらやっぱり選手としてプレーの向上を求めます。もちろんそれはいいことだけど、それだけをずっとやっているとただ勝ちたいという考えばかりになってしまう。そうすると逆に思考が止まってしまうんですよ。バスケットが大好きで盛り上げたいから、いろんなことを仕掛けてはいくんですが、バスケットから少し離れた頭も持っていないとダメだなという気もするんです。でも自分にとってバスケットってなんだろう、よく分からないな(笑)」
—それでも自分の進む道がバスケットである、ということは確かなようですね。
「それはそうですね。ただ、バスケットは現状そんなにお金にならないビジネスなんですよね。だからもっとバスケットを外に向けて広げていかなければいけないと思うんです。いろんな人を巻き込んで、いろんな仕事が増えればバスケットの業界全体が大きくなっていくのかなという思いがありますね」
—バスケットで自分の道を切り開いて、さまざまな体験をしてきましたね。大学で日本一になって、プロ選手になって、人にバスケットを教えるという活動も積極的にやってきた。芸能界を垣間見たことも。10年前からすると想像もつかない今があるのでは。
「まさか、まさかでいろんなことをしてきましたね。今後バスケットがどうなるのか、まだわからないことはたくさんあります。2020年の東京オリンピックに日本が出られるかどうかもわからないし、3×3が五輪の正式種目に入るかもわからない。でもバスケットを通して面白いことって何だろうと考えたら、ふと思い出してもらえる存在になりたいですね。そういえばあの人、こんなことをやっていたなと」
[Profile]
いしだ たかき
1982年生まれ 茨城県出身
日立一高→慶應義塾大
トヨタ自動車アルバルク(2005-2009)→千葉ジェッツ(2011-2012)→東京エクセレンス(2013-)
05' U-24 ユニバーシアード日本代表
06' スタンコビッチカップ日本代表(開催は中止)
慶應義塾大にてリーグ、インカレを制覇。プロ選手としてプレーする傍ら、クリニックなどバスケット普及のための活動も行う。2014年より東京エクセレンスの選手と並行して3×3PREMIERE、SUNS.EXEのオーナー兼選手として活動を開始。
SUNS.EXEフェイスブック
SUNS.EXEクラウドファウンディングのページ
3×3公式サイト
BOJはこれまで日本の大学のバスケット界をメインに取材を行ってきました。情報の少ないカレッジバスケの世界について、もっと多くの人に知ってもらいたいと思ってきたからです。それとは別に10年以上の活動を通し、大学を経て活躍を続ける選手等、バスケットに関わる多様な人についてのことも伝えたいと考えるようになりました。今回始めるシリーズは、そうしたバスケットに関わる人についてその思い、活動を追っていきます。
第1回は、昨年NBDL東京エクセレンスの主将としてリーグ優勝に貢献し、このほどリーグが開幕した3×3のチームオーナーとして新たなチャレンジを始めた石田剛規選手にご登場いただきます。

2014年7月12日に開幕を迎えた日本最高峰の3×3リーグ「3×3.PREMIERE」。その中のひとつ、SUNS.EXE(さんず どっと えぐぜ)のオーナーを務めるのは、NBDL東京エクセレンスでプレーする現役プロバスケットボール選手の石田剛規だ。大学でその才能を開花させ、卒業からちょうど10年。どのような考えがあって3×3へと参戦をしたのか、湘南ひらつかビーチパークにおける開幕戦を終えたところでその思いを語ってもらった。
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これまでのキャリアを通して生まれた考えを実現するための第一歩が3×3チームのオーナー
2014年、3人制バスケットボールのリーグ、「3×3.PREMIERE」が誕生した。3×3(スリー バイ スリー)は従来の3on3を元に、FIBAが正式な統一ルールを定めた新しいバスケットボールの種目だ。「PREMIERE」は日本における最高峰と位置づけられたプロリーグである。
このたび誕生した7チームの中で、神奈川の湘南地域をホームとするのがSUNS.EXE。プレイヤーでありながらチームを持つという新しい石田のチャレンジは、どこから生まれたものだったのだろうか。

「自分はプロとしてここまでバスケットをやってきました。まずはトヨタに入ってこれまで千葉ジェッツ、東京エクセレンスとチームを渡ってきましたが、そこで見えたこと、感じたことがいろいろあります。それぞれのチームごとにやろうとしていることがあって、盛り上がったりそうでなかったりしている部分があると思います。そういうのを見ているうちに、もっとこうした方がいいのになというアイデアが出てきたんです。でも自分は契約してもらっている立場。現役の選手だし、それを実行するには自分の立場では動きにくい。それぞれが理念を持って頑張っているチームに自分のやりたいことをプラスするというのは、なかなか難しいことだったんです。昨シーズンから東京エクセレンスでプレーしていますが、新しくできたチームだったので、これまでの経験から何かいろいろとお手伝いすることができたらと思っていました。でもこのチームは『スポーツは文化』だという確固とした理念を推し進めているチーム。それはとても素晴らしいことなんですが、僕が考えたのは理念のようなこととは別に、もっと簡単なところ、むしろバスケットボールから離れたところでも何かできないかということでした。それができるのがこの3×3のオーナーということなのかな、と考えたのが参加のきっかけです」
—選手としてだけではなく、バスケットボールに対して何かがしたいと思ったことがチームオーナーにつながったということですね。リーグができるという話はいつ頃あったのでしょう。オーナーについて具体的に考え始めたのは?
「リーグの話を聞いたのは昨年、2013年の夏頃ですね。自分はアディダスと契約しているのでそこから入ってくる情報があるんですね。アディダスは3×3のスポンサーですが、この競技が盛り上がってきているぞというのはもともと聞いていました。そのうちにリーグができるという話になって、それが本決まりになったときにすぐに参加しようと決意しました」
—現役選手では石田選手と同じようにつくばロボッツの岡田優介選手が共同オーナーを務めるチームもありますが、選手でもチームを持てるというのが面白いところですね。
「オーナーの立場や職業に特に制限はないと思います。僕は個人でやっていますが、千葉ジェッツのように元のチームがあって、というところもあるし、現状は誰でも参加できる状態だと思います。例えば商店街単位であったり、企業であったりも可能だし、申請者の中からリーグが基準を満たしたチームを選ぶということですね。

「自分でチームを作れたらいいなという考えはありました。どのリーグでもこだわりなく。でもそうすると1億2億というお金を動かさなければいけなくて、それはプレイヤーとしてはやってきたけど、チーム運営をするといった活動実績のない自分にはなかなか難しいなと。一方で、今ある既存のチームの中で運営側に回るという方法もあるかなとは思いました。しかし現役選手のうちは運営の活動できません。両方の面でどうしよう、と考えていたところに3×3の話が出てきて、これだったら自分の立場でもチームを持てる規模だし、プレイヤーとしてもシーズンに影響しない。いろんな条件が合致したし、ちょうどいいタイミングでもありました」
—チームを持ちたいという気持ちは何が根幹にあるのですか?
「僕はトヨタを2009年に退団したあと、バスケットから一時離れていた時期があります。そのときの経験から自分のチームが欲しいというよりは、別の足の踏み場というか、場所があるといいなと思っていたんです。それが今回作ったSUNSという3×3のチームです」
クラウドファウンディングは
“人を巻き込む”きっかけ
SUNS.EXEは設立時にクラウドファウンディングで資金を募った。単なる資金集めというだけではなく、「居場所作り」を謳ったその趣旨には、バスケットという世界に誰もが集いやすい環境を作っていこうという意志が読み取れた。

「だいたいが雑用みたいなものです(笑)。広報担当者はいますが、ホテルやチケット、ドリンクの手配といったチームのマネージャーみたいなこともすべてやっています。そのほかは営業してお金を集めることも重要な仕事ですね」
—そうした資金集めはホームである湘南の地域をメインにしているんですか?
「資金集めといったことは、リーグが開幕した今日から具体的にできるのではないかと思います。結局これまではこんな団体があるんです、こんなことをしようと思っています、と言いつつ実体は何もなかった。でもリーグが開幕してこんな形で人が集まって、盛り上がっているんですよ、と形や結果が見えてこそ、売り込みにいけるものです。形がない期間は知り合いやバスケットが好きな人にしか応援してもらえませんが、ここからまた広げていけると思います」
—資金集めはクラウドファウンディングなどを活用していますね。NBDLなどに比べたら規模は小さいですが、それなりの資金が必要かと思いますが、ほかには?
「個人的な出資と、あとはスポンサーによって成り立っています。ワンシーズンの運営のために、最低でも数百万という規模でまとまるのではないかと思っていますが、なんとか目処が見える金額でもあります」
—クラウドファウンディングで出資を募る際、「居場所作り」についての考えを語っていましたね。日本でバスケットボールが今ひとつ盛り上がりきれない中、まずは「人々が自然と足を運べる居場所を作りたい」と。
「そうですね。まず、こういう試合のようなイベントがあることが基本です。バスケットボールをこれまでずっとやってきましたが、『僕たちバスケットボールのチームです』と言っても見に来るほどの関心を持ってくれる人はそこまで多くないと感じてきました。でもみんなバスケットボールって一度見てくれたら面白いと言ってくれるスポーツだと思います」
—それはバスケットを知る人がみんな抱えている思いですよね。「見れば面白いのに」と。
「そうです。でもその見るきっかけを作るのに、バスケットボールだけを押し出しても人が集まらない現状がある。だから僕はそれ以外の部分を広げていって、ファンになってもらって、見に行くきっかけにしてもらえたらと思っています」
—人に足を運ばせる「きっかけ」とは例えばどんなものでしょう。
「実はチームを作ったときに、SUNS.EXEはバスケットボールのチームだけどバスケ以外のこともしたいなと思ったんです。例えば、クラウドファウンドもそのひとつです。個人がスポーツチームのスポンサーになるというのは、なかなかないことだと思います。出資自体もしたことがない人が多いでしょう。それを少額からすることができる。それによってそのチームへの思いはもっと強くなるはずです。そして出資した分、見返りが大きければまた来年も出資しようと考えるはず。それが“きっかけ”のひとつで、僕らは何がその出資のリターンとなるかを考えていきます」

「今年はチームができたばかりなので、チームグッズやチームとのふれあいの場をリターンとして提供しています。でもそうするとバスケットに関係したことばかりになってしまいます。そうではなくて、僕らは湘南にあるチームだから、このチームに出資していると湘南のいいものが届くとか、湘南で行われるバスケット以外のイベントに選手と参加できるとか、バスケットボールに関係なくても得した気分になれる、尚且つスポーツチームも支援できている、そんな形にしていきたいんです。それでチームが成り立って地域も盛り上がるという風になれば、より関心を持ってもらえるんじゃないかなと思います」
—今日も大会後に選手や観客も一緒にビーチクリーンを行うそうですが、バスケットをきっかけに、さまざまなことを行い、リンクしていく形ですね。湘南のいいものというと例えば?
「今は湘南の地域をいろいろ回って、探している途中でもあります。この平塚の近くに、海に似合うデオドランドスプレーを作っているところがあるんですが、それが本当にいいものなんです。例えば出資者へのリターンの中にチームグッズと一緒にそれを入れることも一案です。そうすればこの地域にこんなものがあるんだと知ってもらえて、ブランドにもメリットがある。それを認知してもらえたら次は何が届くんだろうという次の楽しみにもつながるし、僕らもチームのもの以外を届けられるのが面白くもある。次は地域の農園のジャム、次はまた地元の何かといったような、そういう展開を考えていきたいなと思っています」

「バスケット的にはこうした3×3の試合が軸です。あとはクリニックやスクールも今後開いていければと思っています。とにかくこの地域と関係を深めていくことですね。今日の開幕戦はサッカーの湘南ベルマーレが主催なんですが、一緒に何かできないかなとも思っています。チームを軸に何ができるかがチーム存続のポイントだし、そのために何ができるかを考え続けていきたいですね」
写真中:大会終了後、選手観客を問わず使った場所をきれいにということで、ビーチクリーンを行った。
弁護士に整備士などバラエティ豊か
神奈川の選手を中心にしたSUNS.EXE
SUNS.EXEは主に神奈川在住のメンバーで構成されている。その地域に暮らす選手やチームだからこその特色を大いに活かすつもりだ。メンバーそれぞれ、これまでやってきたバスケットの環境は全く異なるが、どういったチームケミストリーを生み出し、この地に根付いていくのか。また、3人制バスケットという石田にとって新しい挑戦も楽しみでもある。

「小宮、阿刀のふたりは福岡在住で、残りは自分も含め神奈川に住んでいます。本当にこの辺りですね。飯島は弁護士、濱田は米海軍の整備士をしていたりみんな仕事を持っています。僕以外のメンバーは全員これまでストリート等で活躍してきました。福岡のふたりは遠いので今回は来ていませんが、次の福岡の大会に出てもらおうと思っています」
—6人のうち、大会によって登録する4人のメンバーが変わる形になるんですね。3×3はドラフト形式でチームを決めましたが、なかなか個性豊かなメンバーです。チームメイトのことは元々知っていたのでしょうか?
「小宮と阿刀はドラフトで知りましたが、それ以外の選手はまったく知りませんでした。選手のリストを見て、神奈川に住んでいるということでコンタクトを取って、会って決めました。お互いのプレーもわからない状態でしたが、地元に何ができるかというのを考えていきたかったので、ポジションのバランスは見つつも、この地域の選手でやっていこうと」
—全く知らないというのは思い切った決断のようにも思えますが、そこは神奈川のチームだからというのが大きな理由なんですね。ところで、石田選手は3人制バスケットの経験は?
「まったくないですね。遊びでもやったことがないし、わからない世界です(笑)。だから今回メンバーを選びながら、みんなに分からないから教えてねという感じでしたね」
—実際やってみてどう感じていますか?
「やっぱりフィジカルが大事な戦いだと思うし、コートが狭いから展開が速いところが面白いなと思いますね。高さとかフィジカルの強い方が有利だと思いますが、うちはそれを優先して集めたメンバーでもないので、今のメンバーでどう戦っていくかを試行錯誤していく必要があります。でもお客さんとの距離も近いし、僕はこんな環境でやった経験がないので面白い。屋内でやるバスケットとは違う楽しみ方をどんどん売りだしていきたいですね」

「体力的にはキツいですね。今日は暑さのせいもありましたが。あと、シュートは難しい。ゴールが見づらいのと、風が少し吹いただけでボールが流れて入らなくなってしまいます。それが自分のせいなのか風のせいなのかわからなくて、どう修正するのか判断がつかないんですよね。でもそれもまたしょうがないというか、面白さのひとつだと思います」
—そういう部分は選手の技術も必要だし、観客にとってはひとつの観戦ポイントかもしれませんね。ラウンド6まで戦いが続きますが、SUNS.EXEをどのようなチームにしたいですか?
「びっくり優勝するようなチームですね。安定して強いというよりは、何か起こしてくれるような。今日はダメだね、っていう日は申し訳ないですけど(苦笑)。でも試合をやるからには真剣に熱くやり続けたいし、あとは楽しんでやっているところ、負けて悔しがっている姿もすべて見てもらえればいいと思います。観客が見たくなるようなチームを目指します」
—オーナーとして動いている訳ですが、石田選手は現役のプロバスケットボールプレイヤーでもありますよね。もちろんSUNS.EXEにもオーナー兼選手として出場している。そのバランスや切り分けはどう考えていますか?
「プロの選手って意外と自由な時間が多いんですよ。チームの練習をしても2、3時間だし、そこから個人練習をしてもプラス2時間ぐらいですよね。残りの時間で何かできないかなという気持ちはずっとあったし、エクセレンスにもわりと自由にさせてもらっているのでちょうどよく切り替えはできていると思います。プレーだけしているときと比べれば確かに負担もあるといえばあるんですが、それも楽しんでやっていますね」
写真下:蒲谷(右)、西塔(左)といった学生時代からの同期たちもこの3×3に参加している。
現役から離れていた時期に気づいた
バスケットの世界を広げるという考え
高校時代は無名の選手だった。世界が開けた第一歩は、慶應義塾大への進学。そこで1部昇格を成し遂げ、リーグ、インカレを制覇した。プロのプレイヤーとなるが、2009年にはヒザのケガもあって一時引退。その間に全国を回ってクリニック活動を行ったほか、フジテレビの月9ドラマ『ブザー・ビート』にも端役で出演を果たすなど活動の幅を広げた。2011年に再び現役復帰した後は、インタビューにもあるように、プレイヤーである一方でバスケット界全体のための貢献を考えた活動を行っている。一プレイヤーであった状態から、さまざまな変遷を経て、今もなおバスケットに関わり続けている訳とは。

「こんなにずっとバスケットをしているとは考えていませんでしたね。転機はトヨタを辞めて1、2年間、全国を回ってクリニックなどの指導をしている期間にあったと思います。そのままバスケットをやめて別のことをやることも考えましたが、指導をしていてやっぱりバスケットは楽しいなと感じることができました。そのあと千葉ジェッツに縁ができたときに、これはもうどっぷりバスケットの世界に浸るべきじゃないかと」
—むしろ第一線を離れていた時期がきっかけだったんですね。その2年間の間にドラマに出演したりもしましたが、違う世界を覗いて見えたものはありますか?
「ドラマの件だけではなくて、バスケットボールを選手でどっぷりやっていた状態から退くことで、一歩引いて考えられたのは良かったと思いますね。自分のキャリアを振り返る意味でも。そこからバスケットで生きていくことはどういうことだろうと考えていきました。プロ選手には寿命があるし、今はWOWOWでNBAの解説もさせてもらっていますが、それで1年間ずっと仕事になる訳ではない。コーチといっても枠があって数が制限されてくる。そうすると自分で何かを生み出さなければならなくなります。自分でスクールを運営する人もいれば、ストリートのイベントを立ち上げる人もいる。すると今度はバスケットという枠の中の狭い場所の奪い合いになっていってしまうんです。だから僕はバスケットボールを軸にしながらも、別の角度から攻めたいなと思うようになりました」
—バスケットの世界の中に生きる場所を見つけるのではなく、その世界を外に拓いていくというのは新しい感覚かもしれません。競技者としてだけの視点ではなくなっていますね。それが今回の3×3への挑戦でもある訳ですね。
「ここまでくると、自分のプレーを向上させるためだけにプレーするのは現実的ではありません。エクセレンスは昨年NBDLで優勝したし、プレーで貢献できた充実感もありますが、それ以上にチームを育てるとか何を残すかといった気持ちの方が強いかもしれません。エクセレンスはできたばかりのチームなので運営にも『もっとこうした方がいいんじゃない』とアドバイスもしています。そんな風にこの数年はずっとプレー以外のことも考えながらやっています。自分のやりたいことが直接何か大きいことにつながるかどうかわからないけれど、バスケット界のポジティブな盛り上がりにつながって欲しいんです。今回もクラウドファウンディングでいろんな人を巻き込んでスポンサーとなってもらっていますが、何か新しいものが形になればいいなと思っています」

「プロになったときはバスケットは仕事だから、というシビアな感じでやっていました。今もプレイヤー、解説、クリニック、オーナーとバスケットばかりやっていますが、これほどバスケットを仕事にするとは想像していなかったし、不思議な感じです。バスケットボールが自分にとって何なのかといったら今も分からないというのが正直なところですが、頭の中では頑張ってバスケットボールから離れようとしています」
—離れる?それはなぜ?
「バスケットボールをやり続けてはいますが、そうすると考え方がバスケ、バスケとバスケ中心になってしまうんですよね。エクセレンスにいたらやっぱり選手としてプレーの向上を求めます。もちろんそれはいいことだけど、それだけをずっとやっているとただ勝ちたいという考えばかりになってしまう。そうすると逆に思考が止まってしまうんですよ。バスケットが大好きで盛り上げたいから、いろんなことを仕掛けてはいくんですが、バスケットから少し離れた頭も持っていないとダメだなという気もするんです。でも自分にとってバスケットってなんだろう、よく分からないな(笑)」
—それでも自分の進む道がバスケットである、ということは確かなようですね。
「それはそうですね。ただ、バスケットは現状そんなにお金にならないビジネスなんですよね。だからもっとバスケットを外に向けて広げていかなければいけないと思うんです。いろんな人を巻き込んで、いろんな仕事が増えればバスケットの業界全体が大きくなっていくのかなという思いがありますね」
—バスケットで自分の道を切り開いて、さまざまな体験をしてきましたね。大学で日本一になって、プロ選手になって、人にバスケットを教えるという活動も積極的にやってきた。芸能界を垣間見たことも。10年前からすると想像もつかない今があるのでは。
「まさか、まさかでいろんなことをしてきましたね。今後バスケットがどうなるのか、まだわからないことはたくさんあります。2020年の東京オリンピックに日本が出られるかどうかもわからないし、3×3が五輪の正式種目に入るかもわからない。でもバスケットを通して面白いことって何だろうと考えたら、ふと思い出してもらえる存在になりたいですね。そういえばあの人、こんなことをやっていたなと」

いしだ たかき
1982年生まれ 茨城県出身
日立一高→慶應義塾大
トヨタ自動車アルバルク(2005-2009)→千葉ジェッツ(2011-2012)→東京エクセレンス(2013-)
05' U-24 ユニバーシアード日本代表
06' スタンコビッチカップ日本代表(開催は中止)
慶應義塾大にてリーグ、インカレを制覇。プロ選手としてプレーする傍ら、クリニックなどバスケット普及のための活動も行う。2014年より東京エクセレンスの選手と並行して3×3PREMIERE、SUNS.EXEのオーナー兼選手として活動を開始。
SUNS.EXEフェイスブック
SUNS.EXEクラウドファウンディングのページ
3×3公式サイト
3×3PREMIERE.EXEが
湘南ひらつかビーチパークで開幕
3×3の公式リーグ、「PREMIERE.EXE」が7月12日に快晴の湘南ベルマーレ湘南ひらつかビーチパークで開幕した。心配された台風も通り過ぎ、海沿いのコートは強い日差しが照りつける開幕日和。この日は海開きということもあり、海水浴に訪れた行楽客も興味深そうに覗きこんでいく。開幕のセレモニーではリーグに参加する7チームとワイルドカードの合計8チームがコールされてコートに勢揃いすると、リーグ代表による開幕宣言の下、記念すべきファーストラウンドがスタートした。
PREMIERE.EXEは1日で終わるトーナメント形式で戦い、ラウンドごとの優勝者とは別に、ポイントを積み上げていき最終的に総合優勝を決める。基本の7チームに加え、開催地ごとにワイルドカードが1チーム参加し、合計8チームで戦われる。開幕戦は埼玉のオープン大会「3×3 TOURNAMENT.EXE 2014 City4 SAITAMA」を制した、SUNDAY CREWを加えた8チームが灼熱の太陽の下、熱い戦いを繰り広げた。
石田がオーナーを務めるSUNS.EXEは1回戦で千葉ジェッツ.EXEと対戦。NBLに所属する千葉ジェッツと連携して誕生したこのチームには、関東大学界で活躍した星野拓海(2012年度筑波大主将)、森山翔太(2013年度明治大主将)といった選手が所属しているチームだ。SUNS.EXEは開幕戦の第一試合とあって固さも見え、序盤からリードを許す展開に。終盤に追い上げるもののわずかに及ばず1回戦敗退。5位以下はフリースローで順位を決めるルールだが、最終的に6位で開幕戦を終えた。
優勝はGC大阪.EXE。2013-2014シーズンにNBL熊本ヴォルターズで活躍した比留木謙司や、bjリーグのドラフト会議2014にてピックされた坂東玲央といった能力豊かな選手がアグレッシブなプレーで東京オーシャンズ.EXEを下し、ラウンド1の頂点に輝いた。
ストリートでの経験豊かな選手もいるが、気温30度以上、屋外コートという環境は競技バスケメインだった選手にはプレーにも少なからず影響したようだ。石田が「シュートが風で流れてしまう難しさがある」と言ったが、「ボードが競技バスケ用よりも小さくて、当てどころの感覚が違う」と言うのは千葉ジェッツ.EXEの森山。リーグ開幕を機に参加した選手がどうやって3×3に馴染んでいくかは興味深いところ。ほかにもコートの感触の違いや攻撃時間12秒以内というトランジションの早い戦いに、10分でも想像以上にハードな戦いである様子が見て取れた。
しかし1on1の華麗なプレーや素早い攻守のチェンジ、ゴール下の力強い攻防は3×3ならでは。選手の派手なパフォーマンスや雄叫びもオーディエンスを魅了し、勝負を熱くする。周囲を大きな渦へと巻き込んでゆく一体感こそ、3×3の魅力であり、それぞれのチームのパフォーマンスが今後リーグを発展させていく大きな鍵になっていきそうだ。リーグは9月20日までの約2か月間。この季節にふさわしい、熱気あふれるプレーをぜひ多くの人に体感して欲しい。
その他の写真はこちら
【3×3(スリー・バイ・スリー)とは】
ストリート発祥の3on3にFIBA(国際バスケットボール連盟)が正式な統一ルールを定めた、新種目。JBAが正式競技として推進し、FIBAでもオリンピックの正式競技入りを目指している。
【3×3のルール】
3on3と同じハーフコートでの戦い。10分1本勝負、または21点先取で勝利が決まる。マイボールとなってから12秒以内にシュートを打たなければならない。
【3×3 PREMIERE.EXEとは】
JBAが公認する公式3×3リーグが「PREMIERE.EXE」。開催初年度なる今年は7チームが全国各地で6ラウンドを戦い、優勝を決める。また、開催地枠として地元の1チームが各ラウンドのワイルドカードで参加できる。
【観戦スタイル】
開催場所の多くは屋外の人が集まる場所。無料で観戦でき、コート間近の臨場感は格別。試合以外の音楽やダンスのパフォーマンスも盛り込まれ、エンタテインメント性も重視されている。
【3×3 PREMIERE開催スケジュール】
■2014年7月12日(土)
3×3 PREMIER.EXE 2014 Round.1 HIRATSUKA in SHONAN BELLMARE HIRATSUKA BEACH PARK
優勝:GC大阪.EXE
準優勝:東京オーシャンズ.EXE
3位:ZETHREE.EXE
4位:千葉ジェッツ.EXE
5位:GREEDYDOG.EXE
6位:SUNS.EXE
7位:SUNDAY CREW(3×3 TOURNAMENT.EXE 2014 City4 SAITAMA優勝チーム)
8位:DIME.EXE
■2014年8月3日(日)
3×3 PREMIER.EXE 2014 Round.2 HAKATA powered by TOKYO OCEANS ENTERTAINMENT
優勝:GC OSAKA.EXE
準優勝:CHIBA JETS.EXE
3位:SUNS.EXE
4位:DIME.EXE
5位:ZETHREE.EXE
6位:TOKYO OCEANS.EXE
7位:KagoshimaBLAX Team-X(WILD CARD)
8位:GREEDYDOG.EXE(FIBA国際大会出場のため不戦敗)
■2014年8月17日(日)
3×3 PREMIER.EXE 2014 Round.3 KOBE powered by HOS
神戸ハーバーランド センタービルB1 スペースシアター
■2014年8月31日(日)
3×3 PREMIER.EXE 2014 Round.4 YOKOHAMA
横浜赤レンガ倉庫前特設会場
■2014年9月6日(土)
3×3 PREMIER.EXE 2014 Round.5 NABARI powered by HOS
名張市総合体育館
■2014年9月20日(土)
3×3 PREMIER.EXE 2014 Round.6 TOKYO FINAL
東京ソラマチスカイアリーナ(予定)
湘南ひらつかビーチパークで開幕

PREMIERE.EXEは1日で終わるトーナメント形式で戦い、ラウンドごとの優勝者とは別に、ポイントを積み上げていき最終的に総合優勝を決める。基本の7チームに加え、開催地ごとにワイルドカードが1チーム参加し、合計8チームで戦われる。開幕戦は埼玉のオープン大会「3×3 TOURNAMENT.EXE 2014 City4 SAITAMA」を制した、SUNDAY CREWを加えた8チームが灼熱の太陽の下、熱い戦いを繰り広げた。
石田がオーナーを務めるSUNS.EXEは1回戦で千葉ジェッツ.EXEと対戦。NBLに所属する千葉ジェッツと連携して誕生したこのチームには、関東大学界で活躍した星野拓海(2012年度筑波大主将)、森山翔太(2013年度明治大主将)といった選手が所属しているチームだ。SUNS.EXEは開幕戦の第一試合とあって固さも見え、序盤からリードを許す展開に。終盤に追い上げるもののわずかに及ばず1回戦敗退。5位以下はフリースローで順位を決めるルールだが、最終的に6位で開幕戦を終えた。

ストリートでの経験豊かな選手もいるが、気温30度以上、屋外コートという環境は競技バスケメインだった選手にはプレーにも少なからず影響したようだ。石田が「シュートが風で流れてしまう難しさがある」と言ったが、「ボードが競技バスケ用よりも小さくて、当てどころの感覚が違う」と言うのは千葉ジェッツ.EXEの森山。リーグ開幕を機に参加した選手がどうやって3×3に馴染んでいくかは興味深いところ。ほかにもコートの感触の違いや攻撃時間12秒以内というトランジションの早い戦いに、10分でも想像以上にハードな戦いである様子が見て取れた。

その他の写真はこちら
【3×3(スリー・バイ・スリー)とは】
ストリート発祥の3on3にFIBA(国際バスケットボール連盟)が正式な統一ルールを定めた、新種目。JBAが正式競技として推進し、FIBAでもオリンピックの正式競技入りを目指している。
【3×3のルール】
3on3と同じハーフコートでの戦い。10分1本勝負、または21点先取で勝利が決まる。マイボールとなってから12秒以内にシュートを打たなければならない。
【3×3 PREMIERE.EXEとは】
JBAが公認する公式3×3リーグが「PREMIERE.EXE」。開催初年度なる今年は7チームが全国各地で6ラウンドを戦い、優勝を決める。また、開催地枠として地元の1チームが各ラウンドのワイルドカードで参加できる。
【観戦スタイル】
開催場所の多くは屋外の人が集まる場所。無料で観戦でき、コート間近の臨場感は格別。試合以外の音楽やダンスのパフォーマンスも盛り込まれ、エンタテインメント性も重視されている。
【3×3 PREMIERE開催スケジュール】
■2014年7月12日(土)
3×3 PREMIER.EXE 2014 Round.1 HIRATSUKA in SHONAN BELLMARE HIRATSUKA BEACH PARK
優勝:GC大阪.EXE
準優勝:東京オーシャンズ.EXE
3位:ZETHREE.EXE
4位:千葉ジェッツ.EXE
5位:GREEDYDOG.EXE
6位:SUNS.EXE
7位:SUNDAY CREW(3×3 TOURNAMENT.EXE 2014 City4 SAITAMA優勝チーム)
8位:DIME.EXE
■2014年8月3日(日)
3×3 PREMIER.EXE 2014 Round.2 HAKATA powered by TOKYO OCEANS ENTERTAINMENT
優勝:GC OSAKA.EXE
準優勝:CHIBA JETS.EXE
3位:SUNS.EXE
4位:DIME.EXE
5位:ZETHREE.EXE
6位:TOKYO OCEANS.EXE
7位:KagoshimaBLAX Team-X(WILD CARD)
8位:GREEDYDOG.EXE(FIBA国際大会出場のため不戦敗)
■2014年8月17日(日)
3×3 PREMIER.EXE 2014 Round.3 KOBE powered by HOS
神戸ハーバーランド センタービルB1 スペースシアター
■2014年8月31日(日)
3×3 PREMIER.EXE 2014 Round.4 YOKOHAMA
横浜赤レンガ倉庫前特設会場
■2014年9月6日(土)
3×3 PREMIER.EXE 2014 Round.5 NABARI powered by HOS
名張市総合体育館
■2014年9月20日(土)
3×3 PREMIER.EXE 2014 Round.6 TOKYO FINAL
東京ソラマチスカイアリーナ(予定)
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