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2013.12.30 (Mon)
【2013インカレ】12/1決勝 東海大VS明治大
ディフェンスを修正した東海大が
明治大の勢いを抑え込んでインカレ2連覇を達成!
大学バスケットの頂点を決めるインカレ決勝戦。全国の選手たちが思い焦がれた夢の舞台であり、選ばれたものだけが立つことを許される特別な場所だ。初戦からタフなゲームを乗り越えここまで勝ち上がってきたのは東海大と明治大。2010年や2011年のインカレでオーバータイムにもつれる激闘を繰り広げたことが記憶に新しい因縁のカードが、ついに全国最高の舞台で実現した。
リーグ戦全勝の偉業を達成した第1シードの東海大が、絶対王者の貫禄を見せつけ2連覇を成し遂げるのか。それとも育成のシーズンを経てチームとして成熟の時を迎えた挑戦者・明治大が、35年ぶり決勝進出の勢いそのままに栄冠を勝ちとるのか。運命の戦いを見守ろうと、会場は久しぶりに入場規制のかかる大入り満員。その中で試合を制したのは、揺るぎないチームディフェンスと悪い流れを立て直す修正力をもってして、明治大の勢いを封じ込んだ東海大だった。“これぞ東海大”といえるゲームは、聖地・代々木代二体育館に熱戦の余韻を残す、今季の大学バスケットシーンの総決算となった。
写真:タイムアップの瞬間、コートの4年生5人にベンチから仲間たちが駆け寄った。
※詳しいゲームレポートと、明治大・目選手、西川選手、田中成也選手のインタビューは「続きを読む」へ。
※東海大のインタビューは別途掲載します。
「東海はすごく強い。そこに向かっていけるだけの勇気をこれから明日の決勝に向け作っていきたい」。前日の記者会見で明治大・塚本HCはこう話したが、決勝の大一番、明治大は1Qでその“勇気”を存分に発揮した。特に出だしのオフェンスを引っ張ったのは#22西川(4年・F)。ディフェンスを振り切って先制点を奪うと、左コーナーから2本の3Pを決めて開始4分4−10と明治大がまずは先手を打った。東海大は#7晴山(3年・SG)や#0ベンドラメ(2年・PG)のシュートで食らいつくが、#24田中成也(4年・SG)の力強いドライブや#12中東(3年・SG)の3Pが決まり明治大の勢いは止まらない。残り3分45秒、中東のシュートで9−17と明治大が8点リードを奪ったところで東海大はたまらずタイムアウトを取った。ここから東海大も#7晴山の3P、#24田中大貴(4年・SF)のドライブに#51須田(4年・SG)が合わせるなどオフェンスのリズムが良くなるが、明治大はすぐさまゾーンを仕掛けて応戦。その後もチェンジングディフェンスでエアーボールやダブルドリブルなどミスを誘い、リードを保った。東海大は#7晴山の1対1で2点差まで詰め寄ったが、1Q残り6秒で#12中東がコーナーから3Pを射抜き19−24と5点リードに押し戻す。明治大が終始リードを奪った最初の10分間となった。
2Q、先制点はこれですでに12得点目となる#12中東。だがここから状況が一転した。ディフェンスのプレッシャーを強めた東海大が自分たちのペースに持ち込み、攻めては#10バランスキー(3年・PF)が2連続得点。パスカットから速攻に走って#18和田(4年・PG)から#24田中大貴へのアリウープもきれいに決まり、開始2分で1点差に詰め寄った。明治大も#12中東が#21橋本(2年・C)をブロックするなど簡単には逆転させないが、#12中東のシュートを最後に5分以上にわたって無得点の時間帯が続く。その間に東海大が#10バランスキーの1対1、#21橋本のフリースローでこの試合初めてのリードを奪った。明治大もディフェンスで粘って大きくは離されず、守り合いの様相を呈したこのQは14−6のロースコア。結局33−30で前半を折り返すこととなった。
3Qに試合は動いた。東海大は#7晴山の3Pで先制。明治大も#16安藤がすぐさま得点し返すが、その後アウトサイドに当たりがなく、ドライブも東海大の堅い守りに阻まれる。逆に東海大は#24田中大貴や#0ベンドラメが激しいディフェンスから速攻に走って主導権を握り、点差を徐々に広げていった。明治大#16安藤の1on1にもすぐさま#24田中大貴がバスケットカウントでやり返し、#24田中大貴から#10バランスキーへのバックドアプレーも完璧に決まって勝負所を譲らない。さらに追い打ちをかけたのは、ディフェンスの一瞬の隙を突いた#51須田のゴール下シュート。「あそこがきっかけとなって、ディフェンスの約束事に対して少し不安になり始めてしまった」(#24田中成也)という明治大は、攻守の面で後手にまわる形となった。東海大はこの好機を逃さず、開始5分で16得点を畳み掛けるように奪って13点リードと優位に立つ。中盤になり、明治大も#50伊澤(2年・PF)のバスケットカウントを皮切りに思いきりの良いプレーが出始める。#5森山(4年・G)が#21橋本を抜き去ってレイアップを決め一桁差に縮めると、明治大サイドからはひと際大きな歓声が上がった。しかし「あそこで流れを変えられたら良かったが…」と#5森山が悔しがるよう、すぐさまこの大歓声を黙らせたのは#24田中大貴。トップから冷静に3Pを射抜いて、今度は東海大サイドからワッと歓声が爆発した。この1本のダメージは大きく、その後も明治大はなかなか追い上げムードに乗りきれない。二桁点差のまま試合は進み、54−43で4Qを迎える。
4Qも東海大は手を緩めない。開始早々に明治大からターンオーバーを奪い、#24田中大貴らのファーストブレイクでさらに点差を引き離した。明治大は早めのタイムアウトで修正を図るが、反撃の糸口としたい3Pがなかなか決まらない。逆に東海大は#0ベンドラメが3Pを決めてガッツポーズを見せると、インサイド陣もリバウンドをきっちり抑えてチャンスを与えなかった。明治大のゾーンプレスにも冷静なパス回しと飛び込みリバウンドで#10バランスキーが得点。残り3分半には#0ベンドラメが鋭いスティールからあっという間に速攻を決め、19点差をつけて勝利を大きく引き寄せた。残り2分、東海大は4年生をコートに送り出して4年生5人の布陣に。#12梅林(4年・C)や#23佐藤(4年・PF)のシュートに応援席から大きな歓声が沸くなか、73−54でタイムアップとなり、2年連続4度目のインカレ優勝を成し遂げた。
今季の東海大は昨年インカレを制覇したメンバーの多くが残り、リーグ戦を全勝優勝。今大会も優勝候補の筆頭に挙げられたが、決勝までの道のりは決して平坦なものではなかった。向かってくる相手に対して受け身になる場面も多く、決して昨年のような会心の展開で勝ち上がったという印象ではない。だがそうした連覇の難しさをはね除けたのは、「新チームが始まって体作りから相当トレーニングを積んでベースを作ってきた。加えて変則のリーグを戦い抜けるだけの底上げを目指し、夏の練習も例年よりハードな練習をこなしてきた」(陸川監督)という、おごりの無さと準備の周到さ。そうした積み重ねがあるからこそ、選手たちも自分たちのやるべきことをやれば勝利はついてくると信じ、揺らがなかった。特にこの決勝で監督も選手たちも口を揃えて勝因に挙げたのは、2Q以降の文句なしのディフェンス。そして「4年生が何も言わなくてもみんな意識が高かった。チーム全員が強い気持ちを持っていた」(#24田中大貴)というチーム力が、連覇への扉を開いた。
明治大は2Q以降攻守で思うような展開を出せなかった。それでもインカレ決勝までのぼり詰めた底力は、2年越しで作られてきたチームの集大成だったと言えるだろう。2回戦では国士館大の猛攻に耐え、準々決勝では筑波大相手に最大22点ビハインドを巻き返して逆転勝利、さらに準決勝では青学大を3点差で破って昨年のリベンジを果たすなど、試合を重ねるにつれ進化を遂げてきた。「負けはしたけど悔いはない。優勝候補のチームに決勝の舞台でチャレンジできるなんて、僕が入学した頃には考えられなかったことだから」と主将の#5森山。下級生主体だったシーズンは下との入れ替え戦にまわることもあり、昨年のインカレは準決勝で青山学院大に49点差の大敗という屈辱も味わった。
それでも「あの時に時間が止まったと塚さんに言われて、その時間を動かそうとインカレが終わってからすぐ休みなく1年後のこの舞台を目指して練習してきた」(森山)というチームは、過酷な練習を耐え抜き、たくさんの敗戦から多くを学んで確実に一歩一歩前に進んでいった。今年の4年生たちは監督から特に厳しいことも言われてきた代だというが、そうした期待に応えてチームをファイナルの舞台まで連れてきたことには大きな称賛を送りたい。来季はタレントが揃う3年生が最上級生になる。今年の経験を受け継ぎたいところだ。
写真上:前半攻め気を見せて得点を量産した明治大#12中東。
写真中上:東海大は#10バランスキーの攻守での安定感が巻き返しにつながった。
写真中下:東海大の好守に苦しみながらも要所で得点した明治大・安藤。
写真下:ベンドラメは見事なディフェンスを披露。「礼生は“ここでスティールするの!? ”とみんなを驚かせてくれる存在。教えられるものではない」と陸川監督も舌を巻いた。
写真下下:試合終了後、下を向くチームメイトたちを主将の森山がねぎらっていった。
【INTERVIEW】
「人間的にはメンタル面が一番成長できた」
雌伏の時を経てクラッチシューターに成長
◆#2目 健人(明治大・4年・F)
決勝では得意のアウトサイドシュートが決まらず、迷惑をかけたと反省の弁だったが、チームメイトの誰からもそれを責める声はなかった。昨季途中から本来のシュート能力を試合で発揮しはじめ、昨年のインカレと今年のトーナメントでは3P王に。リーグ戦では授賞はならなかったが、独特のフォームから放たれる高い確率の3Pは、ディフェンス志向でロースコアの展開になることの多いチームを常に救ってきた。4年間の大学生活の中では思い悩んだ時期もあったというが、だからこそ「メンタル面が成長できた」と胸を張る。ここまで成し遂げられていない日本一の座を、学生以後のステージでつかみ取ることを目指す。
―全国の決勝は初めてですよね。
「初めてです。小中高は優勝候補と言われていて、中学校はベスト4決めで福岡の木屋瀬中と当たって、鹿屋の占部とかがいて、そこに8点差くらいで負けているんですよね。高校の時は、自分たちの代はインターハイにシードで行ったんですけど、初戦が藤枝明誠で、負けて、ウインターカップは北陸に負けたので、こういった大舞台は初めてです。去年のインカレの3決や準決勝が、自分では一番の大舞台だったので、今回決勝となったら、自分の中で集中しているんですけれど、なんだか全然上手くいかないという感じで。力も上手く入らないし。だから今日はチーム全体にものすごく迷惑をかけたなという感じですね」
―満員の代々木というのはこれまでとは違いましたか。
「びっくりしましたね。アップまではなんとか意識しないようにやっていたんですけれど、なんだかんだで気にしちゃう部分がありました。成長してはいますが、まだまだメンタル的に全然弱いです。でも、今日のこういった経験は、自分の中の経験のひとつとしてやっていければ。これから先にこうした舞台に立つことになれば、もうちょっとはやれるようになるのかな、と思います」
―東海大のディフェンスは、リーグ戦で対戦した時と違いがありましたか。
「前半は外のシュートが入っていなかったのであまり意識はしていなかったんですけれど、2Qの途中から、ボールをもらわせないために接触することも多くなって、自分たちがそれに向かっていくのではなく引いてしまいました。フィジカルの差はそんなにないですけれど、気持ちの面で負けてしまったのかなと思いますね」
―去年優勝している東海大との経験の差などはあったと思いますか。
「いや、どうなんですかね。東海はいつも注目されているわけだし、去年インカレで優勝していますけど、その前もトーナメントの決勝やリーグでも常に上位での成績を残しているので、そういうプレッシャーには普段から慣れているのかな、という感じはしますけど。今日は、自分たちが前半の途中や3Qに引いてしまうのではなくて、チャレンジャー精神でやっていたら、勝ち負けは別にしてももう少し良いゲームができたんじゃないかな、という感じはありますね」
―後輩たちには、そういった課題を乗り越えていって欲しいですね。
「そうですね。自分が途中にやっている時に、去年の準決勝と同じような感覚でした。これ以上後輩にはこんな思いはしてもらいたくないですし、今年の自分たちは去年よりもひとつ上の舞台に行くことを目標にやっていたので、そこでどこかしら安心感はあったかもしれないですし、また来年同じ舞台にこられるのなら、安藤(#16)、中東(#12)、伊澤(#50)というのはそういう焦りはなくなると思います。あの3人が今日得たものをどうチームに還元していくかだと思っています」
―ご自身にはどのような大学での4年間だったでしょうか。
「いろいろありましたね(笑)。1年目は塚さん(塚本HC)には『好きにやってこい』と言われて、オフェンスではシュートを好きに打たせてもらって、ディフェンスはやろうとしても全くできなかったので。それで2年目からチームでディフェンスというものをどんどん追求されるようになって、そこで自分はその時期に何をやっても上手くいかないような感じになって。リーグ戦も全く勝てていなかったですし、練習でも上手くいかないこともがありました。自分でも追い込まれてしまっていました。あの時には戻りたくないですね(苦笑)。あの時が小学校1年から始めてきたバスケ人生で一番苦しかったです。でも、そこで塚さんが我慢してくれて、見捨てずに自分を怒ってくれて、使い続けてもらったというのがあったので、去年はそれが少しは表現できたのかな、という感じです」
―苦しい時期があったからこそ、今があるのではないでしょうか。
「そうですね。あの時に追い込まれていたのは自分だけじゃなく、自分たちの代の西川(#22)や森山(#5)もどんどん追い込まれていました。それに比べたら、今でも塚さんには怒られますけれど、追い込まれ方を考えると全然問題ないと思っています。怒られても途中に諦めずに、必死に最後まで粘れるというのは身につきましたね」
—明治大に来て成長を実感できるのは、そういったメンタル面ですか。
「そうですね。一番はメンタル面ですね。バスケ的にはディフェンスですけれど、人間的にはメンタル面が一番成長できたのかなと思います」
—同級生はいかがでしたか。
「同期は本当に良いやつらでした。練習中とかでも、もし自分がミスをしたらそれを言ってくれますし、逆に誰かが上手くいかないと、そいつひとりのために4年生が集まって話すこともあって、去年は自分がひとりしか出ていないこともありましたが、そういう時でも同期が支えてくれました。だから4年生には感謝ですね。『ありがとう』っていう感じです」
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「自分の代で決勝でプレーできてすごく楽しかった」
代えの利かない存在に飛躍した明治大のオールラウンダー
◆#22西川貴之(明治大・4年・F)
前半は拮抗した展開となった決勝戦。明治大にとって大きかったのは、西川の連続3Pだった。センターの皆川の負傷というアクシデントによりリーグ途中から本職ではない5番ポジションを担うこともあったが、インカレでは3番を担う難しい立場だった。しかしインカレでは高確率の3Pを次々沈め、チームの屋台骨を支えた。日本一には手が届かなかったが「すごく楽しかった」とさっぱりした清々しさを見せた。
—満員の代々木でした。いかがでしたか。
「いや、すごい気持ちよかったですね」
—緊張はしませんでしたか。
「去年の3位決定戦も同じくらい人が入っていたので、去年は緊張したんですけれど、今年は楽しもうと思っていて、緊張とかは全然しなかったです」
—それでも、3位決定戦と決勝では違いがあったのではないでしょうか。
「緊張して自分のプレーができなかったということはないと思うんですけれど、でも決勝独特の雰囲気はあったと思います。このチームで決勝を戦ったことがあるというのが誓哉(#16安藤)くらいしかいないんですね。そういう意味では良い経験になったと思います」
—連続3Pが決まって、西川選手自身は良い入り方でしたね。
「積極的にどんどん先手を取るしかないと思っていたので、積極的に打っていきました」
—ただ、最終的には73点を許して、ディフェンスがうまくいかなかった部分があったように思いますが。
「そうですね。僕らの持ち味はディフェンスだと思っているので、確かに73点取られたのはちょっと残念だったなと思います」
—やはり東海大は強いと感じましたか。
「そうですね。僕らよりも一枚も二枚も上の相手で、すごく力のある相手だとは思いました」
—どうしてこの差になってしまったのか、どのように考えていますか。
「東海は去年も決勝の舞台も経験していますし、どうしたら優勝できるかを知っていると思います。40分間向こうのリズムでプレーされていたので、やっぱり経験の差はすごくあったと思います」
—リードする時間帯もありましたが、それでも東海大のペースだったんでしょうか。
「良い形で攻めているというよりも、たまたまシュートが入ってリードできていたのかなと思います。あのまま普通に勝ちきれるという雰囲気ではなかったかなと。どこかでひっくり返されることになるかと思っていたら、案の定すぐに追いつかれて。(明治が)孤立したプレーが多かったです。チームプレー、パスをまわしていって1対1をするとかをしていれば、もう少し違ったゲームになったかと思います」
—このインカレにかけて練習も重ねてきたと思います。今大会全体での出来はどのように感じていますか。
「去年の順位よりも上にいくことが今回の目標でした。その目標は達成できたので、満足というか、割と良い結果になったと思うんですけれど、優勝という最大の目標は達成できませんでした。後輩たちにはチャンスがあるので、彼らにその目標を託したいと思います」
—明治大の選手たちは皆さん清々しい表情ですね。「やるべきことはやった」という感じなのでしょうか。
「いや、でも負けたあとは僕とか健人(#2目)は泣いていたので……。やりきったという気持ちはないんですけれど、塚さん(塚本HC)にもロッカールームで『去年よりも上の順位なんだから下を向くな』と言われて、みんな今は満足というか、達成感はあると思います。過去の3年間では、インカレの決勝はいつも観客席から眺めているというのが続いていたので、いつか決勝でプレーしたいとは思っていました。最後に自分の代で、お客さんも入っている中で決勝の舞台でプレーできたというのは、すごく楽しかったし、良い思い出になりました」
—少し歯がゆさ、切なさもありますか。
「自分たちは優勝が目前で東海に取られてしまったので、負けた瞬間は悔しい思いでした」
—ともあれ、今後も今回の経験、4年間の経験も活きてくるのではないでしょうか。
「高校の時に比べて、基礎というのをすごく固められたと思います。今後のバスケット人生でも基礎というのはすごく大事になってくるので、この4年間、特にディフェンスという部分では本当に練習して叩き込まれました。今後困ったときも、大学での原点に帰って、いつでも立て直せるような、すごく良い経験ができたと思います」
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「下を知って、上を向いてやるしかないと思った」
苦しさをバネにして4年目に開花
◆#24田中成也(明治大・4年・SG)
爆発力あるシュートもさることながら、リバウンドなどにも必死に飛び込むガッツあふれる選手。大舞台でこそ勝負強さを発揮する姿は実に頼もしく、明治大の決勝進出に欠かせない存在だった。そんな田中も、下級生の頃はBチーム。Aチームに上がった昨年も決して多く出番を得たわけではなかった。それでも4年目にして花開き、堂々と味方を引っ張ることができたのは、確かな目標を胸に自分を信じ続け、辛いことを乗り越えてきたからだという。1年生だった2010年、インカレの華々しい舞台で上級生が活躍する姿を見て「試合に出たい」という思いを明確にしたという田中は、それから3年後の同じインカレで、その頃の3位という成績を超えてみせた。諦めずに上を向き続ければ結果は残せるということを、教えてくれた選手だった。
―東海大相手に、なかなか気持ちよくは打たせてもらえませんでしたね。
「そうですね。自分も無理やり攻めてしまって、それでエアーボールとかになって。それで下げられたときに塚さんにも『もっとリラックスしてやれ。今までやってきたことを信じろ』みたいに言われていたんですけど、なかなかうまくいかなかったですね」
―前半は3点差、3Q終わって11点差と、そこまで離されていたわけではありませんでしたよね。まだ行ける、という感じはあったと思いますが。
「はい。それはやっぱり塚さんからも言われていました。このくらいの点差ならと。筑波戦でも大差を逆転したし、リーグの2戦目の東海戦も同じくらいの点差だったので、一つひとつやっていけば追いつけるという話でした。でも、そこでも自分たちにとって一番大事なディフェンスが立て直せなくて、リバウンドのセカンドショットとかもやられて…。そこはもう取り返せないですけどすごく反省点ですね。ディフェンスで自分たちのやりたいことが、全然できなかったです」
―ゾーンディフェンスが効いている印象はなかったですか?
「いや、前半は結構効いていたと思います。でも、途中チェンジングをやった時に一回自分たちでミスがあって、ゴール下で須田(東海大#51)がノーマークになってやられたんですよ。それがきっかけになって、チームの中で少しズレができてしまったというか…。ディフェンスの約束事に対して少し不安になり始めて、信じきってやれなかったのがああいう点差になったのかなと思います」
―相手の攻撃も、良いところでポイントを突いてくるな、という感じでしたね。
「そうですね。向こうは去年もファイナルで優勝していて、そういう経験の面もあると思うんですけど。本当に1枚も2枚もうわ手で、明治がどういうディフェンスをしてくるかもよく分かられていたし、こっちが攻める時も、こういうディフェンスをすれば明治は孤立して1対1のタフショットになるから、みたいな感じで守られてしまいましたね」
―それでも最後の大会でこの決勝の舞台に立てたことは大きいですよね。田中選手自身、今年から本格的に出番を得るようになった形でしたが。
「そうですね。やっぱり自分はもともとBチームで、今年から試合に出るようになって、それでこのインカレでこういう結果が出せたというのは本当に嬉しいです。練習でやってきたことは嘘をつかないというか。自分は春のトーナメントが全然ダメで自信もなくなったんですけど、それでも夏にめちゃくちゃ頑張って秋のリーグ戦でも活躍できて、それがこのインカレにもつながりました。だから自分を信じて、しっかりとした目標があれば誰でも試合に出られると思うので。あとはその人がそこでチャンスを掴むかどうか。本当に後輩には頑張ってもらいたいです」
―『しっかりとした目標』というのは、田中選手の場合どういうものだったんですか?
「1年生の時に、金丸晃輔さん(10年度卒・NBLアイシン三河)とか若林さん(10年度卒・NBDL豊田合成)がこのインカレの舞台で3位になって、見ていて自分も試合に出たいという思いは本当に強くなりました。それで2年生の時に、BチームだったんですけどBの中では結構活躍できた方だったので、Aチームでも試合に出られるだろうという自信がついて。だからこそ頑張れたのかなと思います」
―田中選手は今年の夏の練習で開花した形ですよね。そこからずっと好調を維持して結果を出し続けたのがすごいと思いますが、何かきっかけはあったんでしょうか。
「なんでなんですかね?自分でも本当にそれは分からなくて…。でも夏に誓哉(#16安藤)とアメリカに行ったんです。それは結構自分の中で大きかったですね。そこからなので。たぶん、そういう良い経験が良かったのかな?いや、本当になんでか分からないです(笑)」
―試合に長く出られなくても、腐ってしまうようなことはなかったんですね。
「そうですね。なかなかチャンスは来なかったんですけど、3年生でトップチームに上がれて。そこでも『お前は全然ダメだ』みたいなことをかなり言われて、一回落ちた時期もあったんですけど、でも自分は下を知って、そこからあとは上がるしかないと思ったんです。どん底を知っているからこそ頑張れたというか。たぶん4年生はみんなそうですよ。後輩たちも、みんな一回下を知った方がいいです(笑)」
―4年生は特に怒られてきた代だそうですね。1つ下の代には能力の高い後輩たちが多いし、1つ上の代は昨シーズンから抜けてしまったし、苦労も多かったと思いますが。
「ほんとそうですね。全部、責任とか負わなきゃいけなくなったし。そういう経験があったからこそ、あとは上を向いてやるしかないという気持ちになりました。辛い思い出があったら、なんでもやっていけますね!」
―いろいろ厳しいことを言われてきたからこそ、このインカレで輝けたんですね。
「本当にそれしかないですね。塚さんも、4年生のこの時期になると言わなくなるんです。『あとはお前ら、のびのびやってこい』みたいな。塚さんも、僕らが下を知っていることを分かっているので。だから思い切りよくやれましたね」
―4年間を乗り越えてきた同期には、どんな思いがありますか?
「よくここまで来たな、って。やっぱり辞めようとした人もたくさんいるし、僕らの代って1年生の頃に期待されて入学して、でも実力がともなってなくて(苦笑)。本当に、試合に出るたびに自分は何もできていないというのを思い知らされました。でもそういうのをずっと4年間続けてきて、最後にこうしてみんな自分たちの役割を分かって試合で活躍できるようになったのは、練習の賜物だと思います。本当に、4年間続けることがどれだけ大事か、身をもって知りました」
明治大の勢いを抑え込んでインカレ2連覇を達成!

リーグ戦全勝の偉業を達成した第1シードの東海大が、絶対王者の貫禄を見せつけ2連覇を成し遂げるのか。それとも育成のシーズンを経てチームとして成熟の時を迎えた挑戦者・明治大が、35年ぶり決勝進出の勢いそのままに栄冠を勝ちとるのか。運命の戦いを見守ろうと、会場は久しぶりに入場規制のかかる大入り満員。その中で試合を制したのは、揺るぎないチームディフェンスと悪い流れを立て直す修正力をもってして、明治大の勢いを封じ込んだ東海大だった。“これぞ東海大”といえるゲームは、聖地・代々木代二体育館に熱戦の余韻を残す、今季の大学バスケットシーンの総決算となった。
写真:タイムアップの瞬間、コートの4年生5人にベンチから仲間たちが駆け寄った。
※詳しいゲームレポートと、明治大・目選手、西川選手、田中成也選手のインタビューは「続きを読む」へ。
※東海大のインタビューは別途掲載します。
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【GAME REPORT】

3Qに試合は動いた。東海大は#7晴山の3Pで先制。明治大も#16安藤がすぐさま得点し返すが、その後アウトサイドに当たりがなく、ドライブも東海大の堅い守りに阻まれる。逆に東海大は#24田中大貴や#0ベンドラメが激しいディフェンスから速攻に走って主導権を握り、点差を徐々に広げていった。明治大#16安藤の1on1にもすぐさま#24田中大貴がバスケットカウントでやり返し、#24田中大貴から#10バランスキーへのバックドアプレーも完璧に決まって勝負所を譲らない。さらに追い打ちをかけたのは、ディフェンスの一瞬の隙を突いた#51須田のゴール下シュート。「あそこがきっかけとなって、ディフェンスの約束事に対して少し不安になり始めてしまった」(#24田中成也)という明治大は、攻守の面で後手にまわる形となった。東海大はこの好機を逃さず、開始5分で16得点を畳み掛けるように奪って13点リードと優位に立つ。中盤になり、明治大も#50伊澤(2年・PF)のバスケットカウントを皮切りに思いきりの良いプレーが出始める。#5森山(4年・G)が#21橋本を抜き去ってレイアップを決め一桁差に縮めると、明治大サイドからはひと際大きな歓声が上がった。しかし「あそこで流れを変えられたら良かったが…」と#5森山が悔しがるよう、すぐさまこの大歓声を黙らせたのは#24田中大貴。トップから冷静に3Pを射抜いて、今度は東海大サイドからワッと歓声が爆発した。この1本のダメージは大きく、その後も明治大はなかなか追い上げムードに乗りきれない。二桁点差のまま試合は進み、54−43で4Qを迎える。


明治大は2Q以降攻守で思うような展開を出せなかった。それでもインカレ決勝までのぼり詰めた底力は、2年越しで作られてきたチームの集大成だったと言えるだろう。2回戦では国士館大の猛攻に耐え、準々決勝では筑波大相手に最大22点ビハインドを巻き返して逆転勝利、さらに準決勝では青学大を3点差で破って昨年のリベンジを果たすなど、試合を重ねるにつれ進化を遂げてきた。「負けはしたけど悔いはない。優勝候補のチームに決勝の舞台でチャレンジできるなんて、僕が入学した頃には考えられなかったことだから」と主将の#5森山。下級生主体だったシーズンは下との入れ替え戦にまわることもあり、昨年のインカレは準決勝で青山学院大に49点差の大敗という屈辱も味わった。

写真上:前半攻め気を見せて得点を量産した明治大#12中東。
写真中上:東海大は#10バランスキーの攻守での安定感が巻き返しにつながった。
写真中下:東海大の好守に苦しみながらも要所で得点した明治大・安藤。
写真下:ベンドラメは見事なディフェンスを披露。「礼生は“ここでスティールするの!? ”とみんなを驚かせてくれる存在。教えられるものではない」と陸川監督も舌を巻いた。
写真下下:試合終了後、下を向くチームメイトたちを主将の森山がねぎらっていった。
【INTERVIEW】
「人間的にはメンタル面が一番成長できた」
雌伏の時を経てクラッチシューターに成長
◆#2目 健人(明治大・4年・F)

―全国の決勝は初めてですよね。
「初めてです。小中高は優勝候補と言われていて、中学校はベスト4決めで福岡の木屋瀬中と当たって、鹿屋の占部とかがいて、そこに8点差くらいで負けているんですよね。高校の時は、自分たちの代はインターハイにシードで行ったんですけど、初戦が藤枝明誠で、負けて、ウインターカップは北陸に負けたので、こういった大舞台は初めてです。去年のインカレの3決や準決勝が、自分では一番の大舞台だったので、今回決勝となったら、自分の中で集中しているんですけれど、なんだか全然上手くいかないという感じで。力も上手く入らないし。だから今日はチーム全体にものすごく迷惑をかけたなという感じですね」
―満員の代々木というのはこれまでとは違いましたか。
「びっくりしましたね。アップまではなんとか意識しないようにやっていたんですけれど、なんだかんだで気にしちゃう部分がありました。成長してはいますが、まだまだメンタル的に全然弱いです。でも、今日のこういった経験は、自分の中の経験のひとつとしてやっていければ。これから先にこうした舞台に立つことになれば、もうちょっとはやれるようになるのかな、と思います」
―東海大のディフェンスは、リーグ戦で対戦した時と違いがありましたか。
「前半は外のシュートが入っていなかったのであまり意識はしていなかったんですけれど、2Qの途中から、ボールをもらわせないために接触することも多くなって、自分たちがそれに向かっていくのではなく引いてしまいました。フィジカルの差はそんなにないですけれど、気持ちの面で負けてしまったのかなと思いますね」
―去年優勝している東海大との経験の差などはあったと思いますか。
「いや、どうなんですかね。東海はいつも注目されているわけだし、去年インカレで優勝していますけど、その前もトーナメントの決勝やリーグでも常に上位での成績を残しているので、そういうプレッシャーには普段から慣れているのかな、という感じはしますけど。今日は、自分たちが前半の途中や3Qに引いてしまうのではなくて、チャレンジャー精神でやっていたら、勝ち負けは別にしてももう少し良いゲームができたんじゃないかな、という感じはありますね」
―後輩たちには、そういった課題を乗り越えていって欲しいですね。
「そうですね。自分が途中にやっている時に、去年の準決勝と同じような感覚でした。これ以上後輩にはこんな思いはしてもらいたくないですし、今年の自分たちは去年よりもひとつ上の舞台に行くことを目標にやっていたので、そこでどこかしら安心感はあったかもしれないですし、また来年同じ舞台にこられるのなら、安藤(#16)、中東(#12)、伊澤(#50)というのはそういう焦りはなくなると思います。あの3人が今日得たものをどうチームに還元していくかだと思っています」
―ご自身にはどのような大学での4年間だったでしょうか。
「いろいろありましたね(笑)。1年目は塚さん(塚本HC)には『好きにやってこい』と言われて、オフェンスではシュートを好きに打たせてもらって、ディフェンスはやろうとしても全くできなかったので。それで2年目からチームでディフェンスというものをどんどん追求されるようになって、そこで自分はその時期に何をやっても上手くいかないような感じになって。リーグ戦も全く勝てていなかったですし、練習でも上手くいかないこともがありました。自分でも追い込まれてしまっていました。あの時には戻りたくないですね(苦笑)。あの時が小学校1年から始めてきたバスケ人生で一番苦しかったです。でも、そこで塚さんが我慢してくれて、見捨てずに自分を怒ってくれて、使い続けてもらったというのがあったので、去年はそれが少しは表現できたのかな、という感じです」
―苦しい時期があったからこそ、今があるのではないでしょうか。
「そうですね。あの時に追い込まれていたのは自分だけじゃなく、自分たちの代の西川(#22)や森山(#5)もどんどん追い込まれていました。それに比べたら、今でも塚さんには怒られますけれど、追い込まれ方を考えると全然問題ないと思っています。怒られても途中に諦めずに、必死に最後まで粘れるというのは身につきましたね」
—明治大に来て成長を実感できるのは、そういったメンタル面ですか。
「そうですね。一番はメンタル面ですね。バスケ的にはディフェンスですけれど、人間的にはメンタル面が一番成長できたのかなと思います」
—同級生はいかがでしたか。
「同期は本当に良いやつらでした。練習中とかでも、もし自分がミスをしたらそれを言ってくれますし、逆に誰かが上手くいかないと、そいつひとりのために4年生が集まって話すこともあって、去年は自分がひとりしか出ていないこともありましたが、そういう時でも同期が支えてくれました。だから4年生には感謝ですね。『ありがとう』っていう感じです」
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「自分の代で決勝でプレーできてすごく楽しかった」
代えの利かない存在に飛躍した明治大のオールラウンダー
◆#22西川貴之(明治大・4年・F)

—満員の代々木でした。いかがでしたか。
「いや、すごい気持ちよかったですね」
—緊張はしませんでしたか。
「去年の3位決定戦も同じくらい人が入っていたので、去年は緊張したんですけれど、今年は楽しもうと思っていて、緊張とかは全然しなかったです」
—それでも、3位決定戦と決勝では違いがあったのではないでしょうか。
「緊張して自分のプレーができなかったということはないと思うんですけれど、でも決勝独特の雰囲気はあったと思います。このチームで決勝を戦ったことがあるというのが誓哉(#16安藤)くらいしかいないんですね。そういう意味では良い経験になったと思います」
—連続3Pが決まって、西川選手自身は良い入り方でしたね。
「積極的にどんどん先手を取るしかないと思っていたので、積極的に打っていきました」
—ただ、最終的には73点を許して、ディフェンスがうまくいかなかった部分があったように思いますが。
「そうですね。僕らの持ち味はディフェンスだと思っているので、確かに73点取られたのはちょっと残念だったなと思います」
—やはり東海大は強いと感じましたか。
「そうですね。僕らよりも一枚も二枚も上の相手で、すごく力のある相手だとは思いました」
—どうしてこの差になってしまったのか、どのように考えていますか。
「東海は去年も決勝の舞台も経験していますし、どうしたら優勝できるかを知っていると思います。40分間向こうのリズムでプレーされていたので、やっぱり経験の差はすごくあったと思います」
—リードする時間帯もありましたが、それでも東海大のペースだったんでしょうか。
「良い形で攻めているというよりも、たまたまシュートが入ってリードできていたのかなと思います。あのまま普通に勝ちきれるという雰囲気ではなかったかなと。どこかでひっくり返されることになるかと思っていたら、案の定すぐに追いつかれて。(明治が)孤立したプレーが多かったです。チームプレー、パスをまわしていって1対1をするとかをしていれば、もう少し違ったゲームになったかと思います」
—このインカレにかけて練習も重ねてきたと思います。今大会全体での出来はどのように感じていますか。
「去年の順位よりも上にいくことが今回の目標でした。その目標は達成できたので、満足というか、割と良い結果になったと思うんですけれど、優勝という最大の目標は達成できませんでした。後輩たちにはチャンスがあるので、彼らにその目標を託したいと思います」
—明治大の選手たちは皆さん清々しい表情ですね。「やるべきことはやった」という感じなのでしょうか。
「いや、でも負けたあとは僕とか健人(#2目)は泣いていたので……。やりきったという気持ちはないんですけれど、塚さん(塚本HC)にもロッカールームで『去年よりも上の順位なんだから下を向くな』と言われて、みんな今は満足というか、達成感はあると思います。過去の3年間では、インカレの決勝はいつも観客席から眺めているというのが続いていたので、いつか決勝でプレーしたいとは思っていました。最後に自分の代で、お客さんも入っている中で決勝の舞台でプレーできたというのは、すごく楽しかったし、良い思い出になりました」
—少し歯がゆさ、切なさもありますか。
「自分たちは優勝が目前で東海に取られてしまったので、負けた瞬間は悔しい思いでした」
—ともあれ、今後も今回の経験、4年間の経験も活きてくるのではないでしょうか。
「高校の時に比べて、基礎というのをすごく固められたと思います。今後のバスケット人生でも基礎というのはすごく大事になってくるので、この4年間、特にディフェンスという部分では本当に練習して叩き込まれました。今後困ったときも、大学での原点に帰って、いつでも立て直せるような、すごく良い経験ができたと思います」
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「下を知って、上を向いてやるしかないと思った」
苦しさをバネにして4年目に開花
◆#24田中成也(明治大・4年・SG)

―東海大相手に、なかなか気持ちよくは打たせてもらえませんでしたね。
「そうですね。自分も無理やり攻めてしまって、それでエアーボールとかになって。それで下げられたときに塚さんにも『もっとリラックスしてやれ。今までやってきたことを信じろ』みたいに言われていたんですけど、なかなかうまくいかなかったですね」
―前半は3点差、3Q終わって11点差と、そこまで離されていたわけではありませんでしたよね。まだ行ける、という感じはあったと思いますが。
「はい。それはやっぱり塚さんからも言われていました。このくらいの点差ならと。筑波戦でも大差を逆転したし、リーグの2戦目の東海戦も同じくらいの点差だったので、一つひとつやっていけば追いつけるという話でした。でも、そこでも自分たちにとって一番大事なディフェンスが立て直せなくて、リバウンドのセカンドショットとかもやられて…。そこはもう取り返せないですけどすごく反省点ですね。ディフェンスで自分たちのやりたいことが、全然できなかったです」
―ゾーンディフェンスが効いている印象はなかったですか?
「いや、前半は結構効いていたと思います。でも、途中チェンジングをやった時に一回自分たちでミスがあって、ゴール下で須田(東海大#51)がノーマークになってやられたんですよ。それがきっかけになって、チームの中で少しズレができてしまったというか…。ディフェンスの約束事に対して少し不安になり始めて、信じきってやれなかったのがああいう点差になったのかなと思います」
―相手の攻撃も、良いところでポイントを突いてくるな、という感じでしたね。
「そうですね。向こうは去年もファイナルで優勝していて、そういう経験の面もあると思うんですけど。本当に1枚も2枚もうわ手で、明治がどういうディフェンスをしてくるかもよく分かられていたし、こっちが攻める時も、こういうディフェンスをすれば明治は孤立して1対1のタフショットになるから、みたいな感じで守られてしまいましたね」
―それでも最後の大会でこの決勝の舞台に立てたことは大きいですよね。田中選手自身、今年から本格的に出番を得るようになった形でしたが。
「そうですね。やっぱり自分はもともとBチームで、今年から試合に出るようになって、それでこのインカレでこういう結果が出せたというのは本当に嬉しいです。練習でやってきたことは嘘をつかないというか。自分は春のトーナメントが全然ダメで自信もなくなったんですけど、それでも夏にめちゃくちゃ頑張って秋のリーグ戦でも活躍できて、それがこのインカレにもつながりました。だから自分を信じて、しっかりとした目標があれば誰でも試合に出られると思うので。あとはその人がそこでチャンスを掴むかどうか。本当に後輩には頑張ってもらいたいです」
―『しっかりとした目標』というのは、田中選手の場合どういうものだったんですか?
「1年生の時に、金丸晃輔さん(10年度卒・NBLアイシン三河)とか若林さん(10年度卒・NBDL豊田合成)がこのインカレの舞台で3位になって、見ていて自分も試合に出たいという思いは本当に強くなりました。それで2年生の時に、BチームだったんですけどBの中では結構活躍できた方だったので、Aチームでも試合に出られるだろうという自信がついて。だからこそ頑張れたのかなと思います」
―田中選手は今年の夏の練習で開花した形ですよね。そこからずっと好調を維持して結果を出し続けたのがすごいと思いますが、何かきっかけはあったんでしょうか。
「なんでなんですかね?自分でも本当にそれは分からなくて…。でも夏に誓哉(#16安藤)とアメリカに行ったんです。それは結構自分の中で大きかったですね。そこからなので。たぶん、そういう良い経験が良かったのかな?いや、本当になんでか分からないです(笑)」
―試合に長く出られなくても、腐ってしまうようなことはなかったんですね。
「そうですね。なかなかチャンスは来なかったんですけど、3年生でトップチームに上がれて。そこでも『お前は全然ダメだ』みたいなことをかなり言われて、一回落ちた時期もあったんですけど、でも自分は下を知って、そこからあとは上がるしかないと思ったんです。どん底を知っているからこそ頑張れたというか。たぶん4年生はみんなそうですよ。後輩たちも、みんな一回下を知った方がいいです(笑)」
―4年生は特に怒られてきた代だそうですね。1つ下の代には能力の高い後輩たちが多いし、1つ上の代は昨シーズンから抜けてしまったし、苦労も多かったと思いますが。
「ほんとそうですね。全部、責任とか負わなきゃいけなくなったし。そういう経験があったからこそ、あとは上を向いてやるしかないという気持ちになりました。辛い思い出があったら、なんでもやっていけますね!」
―いろいろ厳しいことを言われてきたからこそ、このインカレで輝けたんですね。
「本当にそれしかないですね。塚さんも、4年生のこの時期になると言わなくなるんです。『あとはお前ら、のびのびやってこい』みたいな。塚さんも、僕らが下を知っていることを分かっているので。だから思い切りよくやれましたね」
―4年間を乗り越えてきた同期には、どんな思いがありますか?
「よくここまで来たな、って。やっぱり辞めようとした人もたくさんいるし、僕らの代って1年生の頃に期待されて入学して、でも実力がともなってなくて(苦笑)。本当に、試合に出るたびに自分は何もできていないというのを思い知らされました。でもそういうのをずっと4年間続けてきて、最後にこうしてみんな自分たちの役割を分かって試合で活躍できるようになったのは、練習の賜物だと思います。本当に、4年間続けることがどれだけ大事か、身をもって知りました」
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