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2012.11.25 (Sun)
【2012インカレ】大東文化大vs日本大(7位決定戦)
【大東大が日本大を下しシーズンを7位で締める】
別会場で開催となった順位決定戦も最終日を迎えた。國學院大学でまず最初に行われた7位決定戦は、大東文化大と日本大の対戦となった。
リーグ戦同様に、大東大が終始リードを得た試合だった。#19藤井(4年・SG)が得意のスクープショットを決め、#43鎌田(4年・C)のゴール下でスタートダッシュに成功。#14岸本(4年・PG)も3Pやレイアップを沈めて引き離す。日本大は#11飛田(4年・SG)が小気味良く得点を重ねるが、他の選手はなかなかスコアを伸ばすことが出来ない。2m級の選手が代わる代わる出場するが、鎌田を相手にしては苦しい。#30鈴木(3年・SG)や#86大久保(4年・SG)も交代で出場しシュートを決めた大東大が、前半だけで二桁得点差をつけた。
後半も大東大ペース。#41小山(4年・F)の2連続の3Pで勢いを更に加速させる。日本大は飛田以外でも得点が伸びずに苦しいが、3Q終盤には#6佐藤(2年・G)が果敢に攻めて気持ちを見せる。しかし、大量得点差を埋めるまでには至らず。最後は#7渡部(1年・F・正智深谷)や#99山崎(1年・G・弘前実業)といった下級生もコートに送り込んだ大東大が、83−64で勝利した。
7位という結果に終わった大東大だが、今季は東海大にリーグ戦で1勝し、青山学院大相手にはリーグ、インカレとも善戦。インカレは準々決勝で敗れたが、その試合でファウルアウトした主将の岸本に送られた喝采は、彼自身はもちろん、チームの存在感の大きさを物語る。決して満足の出来る結果ではないかもしれない。しかしながら、充実したシーズンを過ごしたと言えるだろう。
苦しいシーズンだった日本大は、リーグ戦直前の主将・石川の戦線離脱が惜しまれる。しかし、若い布陣ながら最後に迎えたインカレで拓殖大に勝利し、最後の最後で結果を残した。オールジャパンでも経験を重ねていき、リーグは2部で戦うことになる来季に繋げたいところだ。
写真上:大東大・鎌田と日本大・舘のマッチアップ。鎌田は貫禄の27点。しかし舘もインカレで多くのビッグマンと対戦し、今後のモチベーションを得たようだ。
写真下:日本大・佐藤も大東大・岸本からボールを奪う場面を見せた。
※大東文化大・岸本選手、鎌田選手、和田選手、有村選手のインタビュー、藤井選手、小山選手、張選手、大久保選手のコメント、日本大・石川選手のインタビューは「続きを読む」へ。
「みんなで支えあったチームだった」
多くの仲間の中で核として活躍した1年
◆#14岸本隆一(大東文化大・4年・主将・PG)
試合後、境学生コーチからMIP(Most Impressive Player)の候補に入っているから帰らずに待機して欲しいと告げられた。最も印象に残った選手に与えられるMIP賞は、上位進出したチームの選手が得ることの多い賞。下位の順位決定戦に回った自分がなぜ?と首をひねる岸本だったが、この日は青山学院大との対戦をテレビで見た恩師が沖縄から飛んで駆けつけた。テレビを通しても伝わったものがあるのだという証明であり、結果的にMIPは東海大の田中が受賞したが、岸本が鮮やかな印象を残したことは間違いない。
本気で倒すつもりだったという青山学院大戦。そこから2日経っても、まだ納得などできていない。大学の締めくくりやこれまでの思いを語りながらも、本気で勝利を懸けて挑んだあの試合の悔しさがまだ体中に充満して、もやもやとしている様子も伺えた。結果に納得しないのはアスリートにとって不可欠な要素だ。しかし本人が望むような結果でなかったとしても、岸本が今年多くの名場面を彩ってきたことは確かであり、ため息をつくようなプレーで観客を魅了してくれたことに大きな拍手を送りたい。
ー7位でインカレを終えましたね。昨日は惜しかったですが。
「昨日は技術的なことではなくて、やはりチームとしてモチベーション的にも上がりきりませんでした。そこが自分たちの悪いところでもあるんですけど、言い訳かもしれないけれど準々決勝で青学にいい試合をできただけに反動も大きくて、切り替えられなかったところがあると思います」
ー専修大の方が逆に持ち味を出せた試合でしたね。そういう中で今日の最終戦になりましたが。
「最後はさすがに切り替えなければというのはあるし、今日勝って終われるチームは4チームしかないし、気持よく大会を終えようと。今日はいい内容というより勝ちを意識したと思います。みんなで出ようと話もしていたし、4年生もだいたい出場できたので良かったです」
ー7位という結果についてはどう感じていますか?
「満足はしていません。正直なところ本当にこのブロックに入ってなかったらということも考えたし。でもあの試合、青山とやれたというのは多分一生忘れない試合だと思います」
ー中には青学と対戦できないチームもあるんだと考えると、あれだけ会場を沸かせる試合をしたというのは見事でした。
「そうですね。戦えないチームもある訳なので。でも沸かせた意識は特にないです。本気だったんです。あっちは比江島(#56)以外は下級生主体なので、ちょっとでも隙を見せたらこっちの気迫で押してやろうと思っていました。ファウルも体をガツガツ当てていってそれでも吹かれなかったシーンもあったし、本当に勝ちに行っていたんです」
ーそれはこちらも感じました。多分見ている人にも伝わったと思います。
「そうですかね。…だから勝って終わった今日は良かったですけど、7位ということにはぜんぜん満足はできていませんね」
ー本気だったからこそ、今はうまく言い表せない感情なんですね。
「そうですね(苦笑)。変な感じです。まだショックはありますよ、実のところ」
ー今年はキャプテンとなりましたが、どんな1年でしたか? リーダーシップも素晴らしくて、いろんな面で表現してくれた選手だったと思います。
「代々の先輩の背中を見てきて、僕がそういう人たちから感じたのはみんな根っから真面目な選手だということでした。小さなことでも深く考えるような。でもどっちかというと自分はキャラが違うというか、お調子者みたいなキャラなのでキャプテンだからといっていきなり縛るようなことをするつもりはなかったし、練習から何から、僕は何かをどうにかしたということはないんです。4年生が多くてそれがプラスに働いて、声だったり雰囲気づくりだったりも自然に出来上がりました。周りの4年生と協力したのが大きいです。そこにプレーは佑亮(#19藤井)や裕也(#43鎌田)のサポートもあったし、試合ぐらいですかね。自分がまとめなきゃ、と思っていたのは。出ているメンバーはわりと控えめで、にぎやかな大久保(#85)もコートでは大人しいので(笑)、そういう分も実際に試合に出ている自分がやるしかないという気持ちで締めなきゃと思ってたし、声をかけたりしなきゃって気持ちでやっていました」
ー確かに試合で目立つのは岸本選手だったり、鎌田選手だったりするかもしれないんですが、チームとしてそれだけじゃないな、ふとした瞬間にひとつだな、というのを感じられるのが今年の大東でした。
「確かにそう言ってもらったように、逆に僕から言うことが多い訳じゃなくて、周りの4年生が気づかせてくれたり、言ってくれることも多くて。こう言うと何か自分らしくないけど(笑)、みんなで支えあってきたかなと思います」
ー3年前に岸本選手が主将になるとはちょっと想像していませんでした。
「ここまでこられたのは芯がぶれなかったのが良かったかなと思います」
ー大学でバスケをするにあたって、通用するかどうかというのは考えたことはありましたか?
「入る前はガンガンやってやるというか、やれる自信も多少はありました。でも入ってみたらフィジカルは負けるしボールは運べないし、そんな中で寒いというか、地元を離れて右も左もわからない中で心身ともに寒さを感じて自信をなくしましたよ。なんというか、逃げてやろうかなと思うような。でも2年生で試合に絡むようになって、3年生で将道さん(昨年度主将の田中)の人のケガもあって出番は増えて、そうするうちに知らず知らずにチームの核となっていって。やれたというよりは成長したなという感じでしたね。あのまま何も気づかずにいたら、これだけプレータイムをもらってチームの中心としてやっていなかったと思います」
ー気づいたのはどういう部分?
「自分が直さなければいけないところですね。若くて自分以外の人のところのプレーのせいにしてしまったり、環境の面に不満を持ったり。その中で恩師に電話をしたりして励ましてもらったりしましたね」
ー今日も恩師の方がいらっしゃいましたよね?沖縄から?
「そうです。沖縄からバーニー先生(北中城高校の恩師)が。Jスポーツでやっていた青学との試合を見て、感動したと言って、今日急遽沖縄から来てくれたんです。すごく行動力のある方で」
ーすごいですね!でもあの試合を見れば来たくなるのはわかりますよ。
「そう言ってもらえるとうれしいです(笑)。試合後に挨拶に行ったらおちょくられましたけど、変わってないなと思いました(笑)。嬉しかったです」
ー大学生としての大会は終わりましたが、大学バスケはどういうものでしたか?
「気づきの連続じゃないですか? 叱ってくれる人がいない中でやらなければいけない。高校みたいにその都度怒ってくれる人はいない。特に大東なんてバスケも学校もちゃんとやらなければ落ちていくだけなので、自分で何が足りないか気づいて練習して、どこをコーチにアピールするか考えてやっていかなければいけない。気づくことの連続でしたね、自分は。これがダメだからこれをしなきゃいけない、だったら練習をもっとしなければいけない、だったら学校にも行かなければいけない、そういうのの繰り返しです。だからだいぶ経験値は上がりましたね。人として」
ー成長した4年間だったんですね。来年の大東は4年生がたくさん抜けてしまいますが。
「でも鈴木友貴(#30)と小野寺翔輔(#86)と、永井と平得(#88)もいるし、みんなノリだけは受け継いでくれると思うので(笑)、あとはコーチの言うことをしっかり聞いて、自分たちで気づいて行動を起こせればいいと思います。ぜんぜんやってくれると思います。大丈夫です」
ー最後に余談になりますが、試合が終わった後にMIPになるかもしれないと聞かされましたね? 候補という段階ですが。
「…おいしいかなと(苦笑)。いやほんとに、嘘だろう?というのはありましたね。ベスト8とはいっても下の戦いしかやっていないので。そこまで意識してないし、もらえたらいいなという気持ちですね。とにかくびっくりしました」
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「やるしかないと、意識が変化した」
経験を重ねて芽生えた大黒柱としての自覚
◆#43鎌田裕也(大東文化大・4年・C)
今季の大東大は昨年からメンバーが変わり、これまで試合に出ていたのが鎌田と岸本の二人のみとなった。経験の浅いチームの中で両名に求められるものも大きく、特に鎌田は、試合の中で悪い流れを打開する際に「結局いきついたのは裕也のところ」(#14岸本)と言うほどのキーマンに。その使命に応えるべく、自身でも4年目の今年は意識が変わったと言い、頼もしさも増していた。押し負けない体の強さを生かしたリバウンドに加えて、今年はゴールに向かう積極性も強まった。また明るくにぎやかな4年生の中で、真面目な性格や堅実さもチームのバランスを取る上で一役を担っていたと言えるだろう。名実ともにチームの大黒柱へと成長を遂げた選手だった。
―インカレを終えて今どんな心境ですか?
「最後に勝って終われたのは嬉しいですけど、目標としていたベスト4以上に届かなかったのは悔しいです。そこは後輩に託すので、頑張ってもらいたいです」
―ベスト4を掛けて青山学院大と戦いましたが、負けはしても雰囲気は良かった印象を受けます。
「リーグ戦でも青学には戦えていたので、そこはやってやろうという気持ちで。でもやっぱり3Qで離されてしまって、その差を追いつくのに力を使ってしまった感じでしたね」
―そこから順位決定戦にまわりましたが、鎌田選手自身、昨日は26得点、今日は27得点と積極性が見られました。
「最後なので。最後くらい思い切りやってやろうと思ったら、うまくいきました」
―4年間チームの大黒柱としての役割を担ってきましたが、これまでを振り返っていかがでしたか?
「自分は、入学してきたときは全くの無名というか、そんなバスケットもやってきてない中でこの大学に来て。それでも西尾さん(ヘッドコーチ)が1年の頃から使い続けてくれたこともあって、だんだんと試合にも慣れてきたし、そういう柱にならなきゃいけないという自覚も出てきました。特に4年目は、やる気も今までとは違いましたね」
―やる気というのは?
「1年の時から3年までは、自分にできることをやればいい、みたいに思っていたんですけど、4年目の今年は、それ以上にやるしかないと。意識がちょっと変化しました」
―3年生の時に日本代表に召集されたことも大きかったのでは?
「代表に入ったのも、本当に驚きでした。いきなりだったのでビックリしたし、無我夢中でみんなについていこうという感じで。でもその中でもたくさん得られるものがあったので、それを大学に帰ってきてから生かしていこうという気持ちでやっていました」
―同じ4年生は鎌田選手にとってどんな存在でしたか?
「4年生は騒ぐやつもいれば、自分みたいに大人しいやつもいて。一緒にいてみんな楽しいですし、負けていても盛り上げて絶対下を向かないんですよね。そういうにぎやかさにすごく元気づけられました」
―まだオールジャパンはありますが、学生としての大会は終えました。これまでを振り返っていかがでしたか?
「すごくあっという間に過ぎてしまいましたね。その中でも、自分的には3・4年が一番濃かったかなと思います。3年の時に日本代表に選ばれて、そこからやってやろうという意識が高まりました」
―では最後に、後輩たちに向けて。
「1部に残っているので、上位を目指して頑張ってもらいたいです。特に同じセンターの、小野寺(#86)に頑張って欲しいですね。まだ試合慣れとかしてないと思うんですけど、今後色々経験して頼もしくなってもらいたいです」
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「感謝という気持ちが一番最初に出てくる」
まわりの存在に助けられ、貴重な学びを得た4年間
◆#75和田保彦(大東文化大・4年・G)
春はスターターに名を連ねることもあったが、多くの選手が活躍していくようになったチームの中でなかなか自分自身のプレータイムを伸ばすことは叶わなかった。それでもインカレを終えた和田の表情は、すっきりとしたもの。それは、自分のことよりもチームのことを考えられるようになったという、4年生ならではの気持ちからだろう。もちろんそこに至るまでに葛藤もあっただろうが、コートの外から声をかける存在も必要だと、チームを土台から支える姿は立派だった。そして4年間を振り返って出てくるその言葉には、みんなへの感謝の気持ちがたくさん込められていた。人としての成長など、得られたものは数字では測れない大きなものとなっただろう。
―今はどんなお気持ちですか?
「ほっとした部分もあるんですけど、やっぱりちょっと寂しいかなというのが心境ですね」
―『ほっとした』というのは、4年間の今までの苦労を思って?
「そうですね。でもまぁ去年までは先輩たちにおんぶにだっこの状態だったんですが、今年から最上級生になって、チームを引っ張ったり下級生の面倒をみたり、色々やらなきゃいけないことがあって。でもそういうところで少しは次の世代に何か残して託せたかなと思います」
―4年目の今年は心境として今までの3年間とは違いましたか?
「そうですね。3年生まではただがむしゃらにバスケやるだけという感じだったんですけど、4年生になってからは、声を出したりとか盛り上げたりとか、そういう風にチームのことを考えられるようになりましたね」
―4年生が明るい雰囲気を作って、チームをうまく引っ張っていたと思います。
「4年生が結構多くて今のメンバーの半分以上が4年生なので、盛り上げるとなってもだいたいが4年生。そこに後輩たちが乗っかってくるという感じでしたね。自分もやっていて楽しかったし、後輩たちもそういう風について来てくれて、すごく楽しいチームでした」
―今シーズン、和田選手は春先スタメンでしたが、そこからなかなか試合に出られない時期もありましたね。そこで悔しい気持ちや苦労もあったのでは?
「そうですね。試合に出ていた時は出ていた時で色々悩みがあったんですけど、出られなくなった時に、やっぱり出られない側の選手の気持ちを味わって。でも気持ちの持って行き方やモチベーションの保ち方というのは今回だけしか学べなかったことだと思うので、そういうことを考えたらこれからに生きる良い勉強だったかなと思います」
―試合に出られない中でも、自分にできることをやっていたのかなと思いましたが。
「そうですね。盛り上げる選手はもちろんコートの中にも必要なんですけど、やっぱり外にも必要だとあらためて思って。外から声をかけることによって、中の選手も落ち着けたり楽しくバスケットできたりすることもあると思って、そうやって外から盛り上げることを意識していました。そういうことができるようになったので、それはそれで良かったかなと思います」
―主力が抜けて今年は経験の浅い未知数なチームとなりましたが、上位チームとも戦える実力を発揮しましたね。
「去年のチームは、3年生以下の下級生も数は多かったんですけど、やっぱり4年生が引っ張ってくれていました。そういう4年生を見てきて、じゃあ自分たちの代はどうなんだと。今年は4年生が多くて下級生が少ないという去年とは全く逆の感じだったんですけど、それでもちゃんと4年生一人ひとりが自覚を持って、チームを引っ張って行こうみたいに考えられたので、上手くいったのかなと思います」
―ずっと4年間一緒にやってきた同期はどんな存在ですか?
「それはもう、これだけで終わったらもったいない関係ですね。やっぱり私生活でも仲が良くて、4年間本当に誰ひとり喧嘩がなかったんです。みんなで誰かの部屋に集まったり、みんなで飲みに行ったり。そのくらい仲が良かったので、ここで終わらない関係だと思います」
―これで学生としての大会は終わりましたが、ここまで振り返っていかがでしたか?
「辛い時期もあったんですけど、やっぱりそれを乗り越えられたのは、同期の仲間たちがいてくれたからだし、先輩後輩にも恵まれてここまでやってこれました。やっぱり、感謝という気持ちが一番最初に出てきて。親にも、まわりの応援してくれる方にも、本当にこの4年間は感謝ですね。そういうことが学べて良かったと思います」
―後輩たちに向けてメッセージを。
「後輩たちには、俺らの代の成績を越えなかったらタダじゃおかないと(笑)。以上です!」
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「上のレベルでやるのは本当に楽しかった」
4年目にして初の大舞台で仕事を果たした司令塔
◆#0有村優志(大東文化大・4年・PG)
3年間Bチームを経験し、今季のリーグ戦からAチームへと上がることとなった有村。それを感じさせない堂々としたゲームメイクと強気な姿勢が光り、シックスマンでチームを勢いづける選手として活躍を見せた。腐らずに技術を磨き続けて最後の年でようやくチャンスを掴み、かつそのチャンスを活かして結果を残したことは見事なことだ。「後輩たちが何か感じてくれたらいい」というが、Bチーム上がりの有村の活躍は、今出番を得られていない選手たちにとっても大きな励みとなったはず。チームに大きな軌跡を残したと言えるだろう。
―インカレを7位で終えました。今はどんな思いですか?
「リーグ戦からここまでずっと休みなくやってきて、やりきった感というか、どこか解放された感じはありますね。今大会は結果としては悔しくても、結構良い戦いもできたと思うし、後輩たちがその姿を見てどう思うかだと思います。何か感じてくれていたらいいですね」
―準々決勝で青学大に敗れましたが、良い戦いをしましたね。
「あの試合、隆一(#14岸本)が退場になって会場から拍手が巻き起こったとき、自分と交代だったんですよ。あんな出づらい場面はないですよね(笑)。もうあれは自分への拍手だと思うしかないと思って、開き直りました」
―今年からAチームに上がって、今シーズンを振り返っていかがでしたか?
「上のレベルでやるのは本当に楽しかったです。最近は隆一と交代になることが多かったんですけど、一緒に出るときもパスをすれば点を決めてくれるし、楽しかったですね。隆一が結構攻めるガードなので、自分は作るガードとして、そういう役割の違いを意識してコートに出たらやろうと思っていました」
―上のレベルでもやれるんだなという手応えもあったのでは?
「はい、ぼちぼち(笑)」
―以前他の4年生から、有村選手がこれほど活躍をするのは予想外だったという声も聞こえました。
「あー、それはみんなが自分の実力を分かっていなかったんですね(笑)。Bチームの時からやれるとは思っていました。やっぱり自信は持たないといけないですし」
―コートでも楽しそうでしたが、ベンチにいても大久保選手(#85)や和田選手(#75)と一緒にすごく楽しそうでしたね。
「そうですね。静かだったら楽しくないですし、やるなら楽しくやりたいなと思って騒いでいました。楽しかったですね」
―同じ同期はどんな代でしたか?
「4年生はみんな、おちゃらけていますね(笑)。真面目なやつが鎌田(#43)くらいで。小山(#41)も真面目そうに見えて、カラオケになると“きゃりーぱみゅぱみゅ”とか歌いだしますからね(笑)。全然喧嘩もなくて楽しかったし、仲間に恵まれました。バカばっかりですけど、そこが良かったですね。普段ふざけていても、チーム練習は真面目に頑張っていましたし。やっぱり隆一がキャプテンとしてしっかりしていますから。それにみんなもついていく感じでしたね」
―これで学生の大会を終えて、4年間はいかがでしたか?
「あっという間でした。3年間ずっとBチームで、試合数とかも全然なくて、やっと4年生になってこうして出る機会をもらえて。これが本場なんだなぁと感じることができました。この経験を活かして、これからも頑張りたいですね」
―後輩たちに向けて。
「後輩たちは4年生が抜けたら結構やばいと思うので、頑張ってもらわないと。残りの期間で鍛えていきたいですね。ガードは、兒玉(#28)って同じ福岡出身のやつがやると思うので、そいつに期待したいです。あいつはまだメンタルが弱いので、自分がこれから鍛えようかなと思います」
―まだオールジャパンがありますしね。
「そうですね。プロを倒しにいきます!」
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【COMMENT】
「最後はチームがまとまって大東らしくできた」
◆#19藤井佑亮(大東文化大・4年・SG)
「自分たちは去年の順位を超えようとやってきたんですけど、それが春と同じく出来ませんでした。けれど、最後はチームまとまって、大東らしく出来たと思うので、良かったです。
青学には負けましたけど、まだ試合が残っていましたし、4年生は学生の大会が最後になるので楽しくやろうと。勝ちにはこだわっていましたけど、大東らしく元気良くやろうと心がけて、最後の2試合を戦いました。最後まで楽しく出来たんじゃないかなと思います。
最初は試合には使えてもらえなかったですけど、段々出られるようになって、本当に監督にも感謝したいですし、仲間にもすごく恵まれたので、感謝したいと思います。
最後のオールジャパンはJBLとやって良い思い出を作ろうと思っています。最低限そこまで行きたいですね」
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「いろいろ勉強した4年間だった」
◆#24張方(大東文化大・4年・C)
「去年はケガをしてしまって今年まで試合にあまり出ていなくて、悔しかったです。今年はケガが治って、最後のシーズンにしっかりやっていいところが出せたので良かったです。リーグ戦ではスタメンになって最初は緊張しました。初めてなので。でもその次から緊張もなくなって、リバウンドとか自分の仕事をしっかりやりました。
4年間一緒に試合を戦って同学年はいい仲間でした。4年間バスケットをいろいろ勉強できた時間でした。パワーや身長、センタープレーは高校とはぜんぜん違っていました。インカレは最近ちょっと調子が悪くて試合にはあまり出られなかったけど、応援を頑張りました(笑)。青学戦は相手が強くて勝てなくて残念でしたけど、7位は頑張ったと思います」
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「大東が上に上がってくるのを感じられた4年間」
◆#41小山 哲(大東文化大・4年・F)
「結果的には去年超えは出来なかったんですけど、個人的には去年出られなかった反面、結構プレータイムを貰えて、満足している感じです。ただ、インカレは結構ミスも多くて、今日の日大戦も飛田君にシュートを決められたので、やるべきことは出来なかったかな、と。でも自分のシュートは決まって良かったです。隆一が『空いたら打て』と言ってくれるんで、ちょっとスペースが空いたら打つと決めていました。
入学から最初はBチームで、そこからAに上がるのはすごく大変でした。自分は兄が二個上にいてキャプテンをやっていて(小山 純・2010年度主将)、兄ちゃんのお陰で1部に上がって、去年将道さん(田中将道・2011年度主将)の代でリーグ4位と良い記録を出して、それで今年を迎えて。本当に大東が上がってくるのを同時に実感した代なので、隆一・裕也という二枚看板がいてくれたお陰で自分たち他の4年生もやりたいように出来たのかなと思います。
キャプテンの隆一は、普段の顔と試合の顔が全然違いますね。普段はおちゃらけて子どもっぽいところがあるんですけど、試合になったらリーダーシップがあって頼りになります。
オールジャパンはJBLとやりたい気持ちがあるので、そこまでに今までやってきたリーグ戦やインカレの反省点を活かして練習していきたいですね」
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「出られなくなっても応援では一番を目指した」
◆#86大久保 亮(大東文化大・4年・SG)
「今年は全然出られなくて、最初は出たい気持ちもあったんですけど、リーグに入ったら隆一(#14岸本)とか佑亮(#19藤井)に頑張って欲しい気持ちが強くなりました。だから、もうこれはベンチでふざけるしかないな、と(笑)。盛り上げ役に回りました。盛り上がるという意味では大東は一番だと思います。応援では一番というのを目指したかったので、ベンチで和田(#75)と一緒に盛り上げました。
でも、バスケでは苦労しましたね、去年は出ていたので(苦笑)。出られなかったのは完全に実力不足です。ただ、インカレ前の練習だと調子が上がっていたので、インカレでは出して貰えて良かったです。7位でしたけど、青学戦はみんな気持ちが入っていて勝ちたかったので、納得はしてないですね。去年もベスト4掛けで負けているので、勝ちたかったです。このチームは隆一が言うとそれに乗っかっていく感じなので、とにかく勝ちたかったですね。
みんなキャプテン、副キャプテンのことは信頼していました。だからみんなそれについていきました。最後のオールジャパンはJBLとやりたいです!」
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最後に4年生が集まって集合写真を「月バス風」に撮影。最後まで大東大らしいにぎやかさだった。
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「自分が活躍することで小さな選手の見本になりたい」
挑む気持ちと気づきを経て見出した自分の道
◆#3石川海斗(日本大・4年・主将・G)
春は結果を出せず、秋はリーグ直前、8月後半の練習試合で膝を傷めてその後の試合をベンチで過ごすことになった。そこまで「調子は良かった」と言うだけに今年1年ほぼプレーを見られなかったのが惜しまれる。幸い、痛めた靭帯は脅威の回復力を示し、手術無しで予想以上の早期復帰が可能になった。現在はオールジャパンに向けてリハビリを頑張っているところだ。
常に高いところにハードルを置く石川の言葉は、下級生に対し一見厳しいが、さまざまな示唆に満ちている。インカレこそベスト8に入ったが今年の日大の成績は決して芳しいものではなかった。あるものでどうにかするしかなかった部分もあるが、どんな状況でも、どんな選手であっても常にできることを精一杯やらなければ先はないと言う。束縛の少ない大学バスケでは「気づき」がない限りはそこで終わってしまう。サイズが優先される世界でその評価を覆しながら道を拓いてきた石川の言葉を下級生はどう受け止めるか。そして残りの時間でチームにどのような影響を与えられるかに注目したい。
ー8位ということになりましたが、インカレを終えてチームについてはどう思いますか?
「チームとしてはオールジャパンに出られるというのがひとつの収穫ではあるし、入れ替え戦に負けてからそこまで上げられたというのはいいことではあります。でもベスト8に入るのがこのチームの目標ではないので。正直に言えばガードとセンターがまだまだバスケットを知らない。今年の大学のチームを見てきてどこが強いかといえば特別に抜けだしたというところはないと思います。個人で上手いと思う人はいるけれど、チームとしてすごいと言えるチームはなかったので、それに勝てないうちの弱さ、バスケットを知らなかったり、状況を打開できないという部分だったり、そういうのをインカレで痛感させられた感じがします」
ー今年はチームとしては2部に落ちてしまったり、チームメンバーも安定せず、悪い状況をなかなか変えられなかったのかなという状態でしたが。
「悪く言えば、自分ひとりがいなくなっただけでチームが変わるようであれば優勝は最初から狙えていません。だからそれまでのチームだったのかなとも思います。どんなチームでも練習内容がどうであれ、自分たちでその中でどれだけ濃い練習にするかで変わってくると思います。今年は今まで試合に関わることがなかった人たちが出ているというのはあるけれど、試合に出ていない人が意味のある練習をしていなかったのが、リーグ戦や入れ替え戦で勝てなかった理由として大きいと思います。どこのチームの選手も練習を試合に向けてやっていると思います。うちは練習をただしているだけ、という状態になっていたのがダメでしたね」
ー下級生が多いのも不安定の一つの要因だったかと思いますが。
「でもそれでも下級生からできる人はやっているし、上を目指す、優勝を目指すのであれば自分で何が必要だか気づかないようだと狙えません。李相伯杯のメンバーなんかもそうやって気づいた人が選ばれているし、向上心を持ってひとつの練習に取り組んでいる人たちが代表にも関係してきている。自分はそういう場に選ばれた経験から、チームに戻って何が必要なのか体感することが多かったですね。後輩は来年すぐ強くなって1部に上がれる訳でもないので、本人たちがそこを変えていかないと強くはならないと思います。4年の飛田(#11)も抜けますし、ここで上級生の20点がなくなった時にその分をどう埋めていくかが問題です。今のチームは個人でやっていて、5対5というより、自分は何点取ったかとか、自分のところでやられていないとか、そういう意識でいる。そこを変えていかないといけません」
ー石川選手自身は1年生の時から試合に絡んで、李相伯杯代表にもなって、インカレでも優勝に貢献する働きをしました。そこは気づきの結果ということでしょうか。
「自分は1年の時に竜青さん(篠山竜青10年度主将・現JBL東芝)を引きずりおろさないと試合に出られないから、個人であっても5対5の中でも相手を負かすつもりでやっていたし、それで試合に絡んで結果を出していけたと思います。でも竜青さんがいなくなって自分がスタートになってから、他から向かってくるという選手はいませんでした。負けず嫌いの選手は下級生にもいます。でも上が抜けて自分が出られるようになってから向かってくるというのでは遅いので、負けず嫌いだというならそこを常に出していってもらいたいですね」
ー後輩にはそこも気づいて欲しいところなんですね。
「いくら周りで気づいている人が言っても、本人たちが気づかないと結局大きくは変われません。昨日、1年生の舘(#20)とマネージャーの高橋と3人で話している時に、東海の橋本(#21)の話になったんです。実際橋本はこれからの選手ですよね。舘は橋本がA代表になれるなら、自分も頑張ったらもっとできるんじゃないかと言えるぐらいの気持ちにはなってきているんです。あいつはバスケを始めたのは遅いですが、少しずつやりたいことも出来るようになってきて自信もついてきています。そういう風に気づける人が増えないとダメですね。今日も完太(#6佐藤)は岸本(#14)を止めるプレーがありました。そういうのを続けて自信になっていけば、来年エースキラーになれる働きもできると思います。そういうことを本人に気づいて欲しいですね」
ーそれを祈りたいですね。石川選手はリハビリも進んでオールジャパンへの出場の可能性もありますね。間に合うかどうかというのは考えていましたか?
「むしろチームがオールジャパンに出られるかというのはありましたね。出られるとなってからリハビリにも一層力が入っています。来週から走り始めますが、あまり無理せず間に合えば。間に合わなければ最後にシュート1本でも打てればいいかなと考えています。拓殖大に勝ってオールジャパンを決めた時、坂田(#1)が一番泣いて、『最後にオールジャパンは海斗さんからパスを受けたいです』と言いながらずっと泣いていたので、最後にそれを叶えてやりたいなというのもあります。飛田も『絶対にオールジャパンに出るからリハビリを頑張れ』と言ってくれたので、そういう気持ちを感じたので頑張りたいです」
ー学生の大会としてはこれが最後ですが、大学はどういう場所でしたか。
「大学で学ばせてもらったものは大きいし、特にインカレの優勝(2009年)を経験させてもらったのは一番大きなことでした。そういう意味では高校から通してもあれは大きな経験でした。あとは高校との違いで体の強さも感じたし、李相伯代表にも選ばれて韓国と戦えたのも大きいです。そういう部分は良かったと思います」
ー小柄な選手で活躍しているガードも多いですが、カテゴリが上にいくほどどうしても不利と言われます。大学でどれくらいやれるかと考えたりしましたか?
「自分の目的として、小さな人の見本になろうというのがありました。小さな選手って途中で辞めていってしまうんですよ。小学校でも中学校でも。自分は東京のエンデバーは大きな人に負けて入れなくて、高校の時に入れました。それが自信になっていったし、自分が活躍することで小さい人の手本になって、そういう人たちを勇気づけられればいいなと思っていたんです。だから大学に来てもやってやろうという気持ちは強かったですね」
ー確かに、競技的に小さいというだけで評価が下がってしまうのは残念なところです。でも石川選手が1年生の時、すごい選手が入ってきたなと感じましたよ。
「でも1年生なんか気持ちで負けたらやれないですよね。それで学ぶべきことも大きいし、1年生からやってきたからいろんなところの監督も話しかけてくれたり、面倒を見てくれました。青学の吉本さん(トレーナー)もケガをした時に一番心配してくれていたので、そういう意味でいろんな人に気にかけてもらって、頑張っていてよかったなと感じる部分ですね」
ーご両親も熱心に毎試合応援に来てくれましたね。
「楽しみにしてくれているので、親に恩返しをするというか、楽しい試合を見せていけたらいいなというのもありました。だから最後の年はあれでしたが、楽しんでくれていて感謝しています。そうして考えると大学は楽しい時間でした」

リーグ戦同様に、大東大が終始リードを得た試合だった。#19藤井(4年・SG)が得意のスクープショットを決め、#43鎌田(4年・C)のゴール下でスタートダッシュに成功。#14岸本(4年・PG)も3Pやレイアップを沈めて引き離す。日本大は#11飛田(4年・SG)が小気味良く得点を重ねるが、他の選手はなかなかスコアを伸ばすことが出来ない。2m級の選手が代わる代わる出場するが、鎌田を相手にしては苦しい。#30鈴木(3年・SG)や#86大久保(4年・SG)も交代で出場しシュートを決めた大東大が、前半だけで二桁得点差をつけた。
後半も大東大ペース。#41小山(4年・F)の2連続の3Pで勢いを更に加速させる。日本大は飛田以外でも得点が伸びずに苦しいが、3Q終盤には#6佐藤(2年・G)が果敢に攻めて気持ちを見せる。しかし、大量得点差を埋めるまでには至らず。最後は#7渡部(1年・F・正智深谷)や#99山崎(1年・G・弘前実業)といった下級生もコートに送り込んだ大東大が、83−64で勝利した。

苦しいシーズンだった日本大は、リーグ戦直前の主将・石川の戦線離脱が惜しまれる。しかし、若い布陣ながら最後に迎えたインカレで拓殖大に勝利し、最後の最後で結果を残した。オールジャパンでも経験を重ねていき、リーグは2部で戦うことになる来季に繋げたいところだ。
写真上:大東大・鎌田と日本大・舘のマッチアップ。鎌田は貫禄の27点。しかし舘もインカレで多くのビッグマンと対戦し、今後のモチベーションを得たようだ。
写真下:日本大・佐藤も大東大・岸本からボールを奪う場面を見せた。
※大東文化大・岸本選手、鎌田選手、和田選手、有村選手のインタビュー、藤井選手、小山選手、張選手、大久保選手のコメント、日本大・石川選手のインタビューは「続きを読む」へ。
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【INTERVIEW】「みんなで支えあったチームだった」
多くの仲間の中で核として活躍した1年
◆#14岸本隆一(大東文化大・4年・主将・PG)

本気で倒すつもりだったという青山学院大戦。そこから2日経っても、まだ納得などできていない。大学の締めくくりやこれまでの思いを語りながらも、本気で勝利を懸けて挑んだあの試合の悔しさがまだ体中に充満して、もやもやとしている様子も伺えた。結果に納得しないのはアスリートにとって不可欠な要素だ。しかし本人が望むような結果でなかったとしても、岸本が今年多くの名場面を彩ってきたことは確かであり、ため息をつくようなプレーで観客を魅了してくれたことに大きな拍手を送りたい。
ー7位でインカレを終えましたね。昨日は惜しかったですが。
「昨日は技術的なことではなくて、やはりチームとしてモチベーション的にも上がりきりませんでした。そこが自分たちの悪いところでもあるんですけど、言い訳かもしれないけれど準々決勝で青学にいい試合をできただけに反動も大きくて、切り替えられなかったところがあると思います」
ー専修大の方が逆に持ち味を出せた試合でしたね。そういう中で今日の最終戦になりましたが。
「最後はさすがに切り替えなければというのはあるし、今日勝って終われるチームは4チームしかないし、気持よく大会を終えようと。今日はいい内容というより勝ちを意識したと思います。みんなで出ようと話もしていたし、4年生もだいたい出場できたので良かったです」
ー7位という結果についてはどう感じていますか?
「満足はしていません。正直なところ本当にこのブロックに入ってなかったらということも考えたし。でもあの試合、青山とやれたというのは多分一生忘れない試合だと思います」
ー中には青学と対戦できないチームもあるんだと考えると、あれだけ会場を沸かせる試合をしたというのは見事でした。
「そうですね。戦えないチームもある訳なので。でも沸かせた意識は特にないです。本気だったんです。あっちは比江島(#56)以外は下級生主体なので、ちょっとでも隙を見せたらこっちの気迫で押してやろうと思っていました。ファウルも体をガツガツ当てていってそれでも吹かれなかったシーンもあったし、本当に勝ちに行っていたんです」
ーそれはこちらも感じました。多分見ている人にも伝わったと思います。
「そうですかね。…だから勝って終わった今日は良かったですけど、7位ということにはぜんぜん満足はできていませんね」
ー本気だったからこそ、今はうまく言い表せない感情なんですね。
「そうですね(苦笑)。変な感じです。まだショックはありますよ、実のところ」
ー今年はキャプテンとなりましたが、どんな1年でしたか? リーダーシップも素晴らしくて、いろんな面で表現してくれた選手だったと思います。
「代々の先輩の背中を見てきて、僕がそういう人たちから感じたのはみんな根っから真面目な選手だということでした。小さなことでも深く考えるような。でもどっちかというと自分はキャラが違うというか、お調子者みたいなキャラなのでキャプテンだからといっていきなり縛るようなことをするつもりはなかったし、練習から何から、僕は何かをどうにかしたということはないんです。4年生が多くてそれがプラスに働いて、声だったり雰囲気づくりだったりも自然に出来上がりました。周りの4年生と協力したのが大きいです。そこにプレーは佑亮(#19藤井)や裕也(#43鎌田)のサポートもあったし、試合ぐらいですかね。自分がまとめなきゃ、と思っていたのは。出ているメンバーはわりと控えめで、にぎやかな大久保(#85)もコートでは大人しいので(笑)、そういう分も実際に試合に出ている自分がやるしかないという気持ちで締めなきゃと思ってたし、声をかけたりしなきゃって気持ちでやっていました」
ー確かに試合で目立つのは岸本選手だったり、鎌田選手だったりするかもしれないんですが、チームとしてそれだけじゃないな、ふとした瞬間にひとつだな、というのを感じられるのが今年の大東でした。
「確かにそう言ってもらったように、逆に僕から言うことが多い訳じゃなくて、周りの4年生が気づかせてくれたり、言ってくれることも多くて。こう言うと何か自分らしくないけど(笑)、みんなで支えあってきたかなと思います」
ー3年前に岸本選手が主将になるとはちょっと想像していませんでした。
「ここまでこられたのは芯がぶれなかったのが良かったかなと思います」
ー大学でバスケをするにあたって、通用するかどうかというのは考えたことはありましたか?
「入る前はガンガンやってやるというか、やれる自信も多少はありました。でも入ってみたらフィジカルは負けるしボールは運べないし、そんな中で寒いというか、地元を離れて右も左もわからない中で心身ともに寒さを感じて自信をなくしましたよ。なんというか、逃げてやろうかなと思うような。でも2年生で試合に絡むようになって、3年生で将道さん(昨年度主将の田中)の人のケガもあって出番は増えて、そうするうちに知らず知らずにチームの核となっていって。やれたというよりは成長したなという感じでしたね。あのまま何も気づかずにいたら、これだけプレータイムをもらってチームの中心としてやっていなかったと思います」
ー気づいたのはどういう部分?
「自分が直さなければいけないところですね。若くて自分以外の人のところのプレーのせいにしてしまったり、環境の面に不満を持ったり。その中で恩師に電話をしたりして励ましてもらったりしましたね」
ー今日も恩師の方がいらっしゃいましたよね?沖縄から?
「そうです。沖縄からバーニー先生(北中城高校の恩師)が。Jスポーツでやっていた青学との試合を見て、感動したと言って、今日急遽沖縄から来てくれたんです。すごく行動力のある方で」
ーすごいですね!でもあの試合を見れば来たくなるのはわかりますよ。
「そう言ってもらえるとうれしいです(笑)。試合後に挨拶に行ったらおちょくられましたけど、変わってないなと思いました(笑)。嬉しかったです」
ー大学生としての大会は終わりましたが、大学バスケはどういうものでしたか?
「気づきの連続じゃないですか? 叱ってくれる人がいない中でやらなければいけない。高校みたいにその都度怒ってくれる人はいない。特に大東なんてバスケも学校もちゃんとやらなければ落ちていくだけなので、自分で何が足りないか気づいて練習して、どこをコーチにアピールするか考えてやっていかなければいけない。気づくことの連続でしたね、自分は。これがダメだからこれをしなきゃいけない、だったら練習をもっとしなければいけない、だったら学校にも行かなければいけない、そういうのの繰り返しです。だからだいぶ経験値は上がりましたね。人として」
ー成長した4年間だったんですね。来年の大東は4年生がたくさん抜けてしまいますが。
「でも鈴木友貴(#30)と小野寺翔輔(#86)と、永井と平得(#88)もいるし、みんなノリだけは受け継いでくれると思うので(笑)、あとはコーチの言うことをしっかり聞いて、自分たちで気づいて行動を起こせればいいと思います。ぜんぜんやってくれると思います。大丈夫です」
ー最後に余談になりますが、試合が終わった後にMIPになるかもしれないと聞かされましたね? 候補という段階ですが。
「…おいしいかなと(苦笑)。いやほんとに、嘘だろう?というのはありましたね。ベスト8とはいっても下の戦いしかやっていないので。そこまで意識してないし、もらえたらいいなという気持ちですね。とにかくびっくりしました」
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「やるしかないと、意識が変化した」
経験を重ねて芽生えた大黒柱としての自覚
◆#43鎌田裕也(大東文化大・4年・C)

―インカレを終えて今どんな心境ですか?
「最後に勝って終われたのは嬉しいですけど、目標としていたベスト4以上に届かなかったのは悔しいです。そこは後輩に託すので、頑張ってもらいたいです」
―ベスト4を掛けて青山学院大と戦いましたが、負けはしても雰囲気は良かった印象を受けます。
「リーグ戦でも青学には戦えていたので、そこはやってやろうという気持ちで。でもやっぱり3Qで離されてしまって、その差を追いつくのに力を使ってしまった感じでしたね」
―そこから順位決定戦にまわりましたが、鎌田選手自身、昨日は26得点、今日は27得点と積極性が見られました。
「最後なので。最後くらい思い切りやってやろうと思ったら、うまくいきました」
―4年間チームの大黒柱としての役割を担ってきましたが、これまでを振り返っていかがでしたか?
「自分は、入学してきたときは全くの無名というか、そんなバスケットもやってきてない中でこの大学に来て。それでも西尾さん(ヘッドコーチ)が1年の頃から使い続けてくれたこともあって、だんだんと試合にも慣れてきたし、そういう柱にならなきゃいけないという自覚も出てきました。特に4年目は、やる気も今までとは違いましたね」
―やる気というのは?
「1年の時から3年までは、自分にできることをやればいい、みたいに思っていたんですけど、4年目の今年は、それ以上にやるしかないと。意識がちょっと変化しました」
―3年生の時に日本代表に召集されたことも大きかったのでは?
「代表に入ったのも、本当に驚きでした。いきなりだったのでビックリしたし、無我夢中でみんなについていこうという感じで。でもその中でもたくさん得られるものがあったので、それを大学に帰ってきてから生かしていこうという気持ちでやっていました」
―同じ4年生は鎌田選手にとってどんな存在でしたか?
「4年生は騒ぐやつもいれば、自分みたいに大人しいやつもいて。一緒にいてみんな楽しいですし、負けていても盛り上げて絶対下を向かないんですよね。そういうにぎやかさにすごく元気づけられました」
―まだオールジャパンはありますが、学生としての大会は終えました。これまでを振り返っていかがでしたか?
「すごくあっという間に過ぎてしまいましたね。その中でも、自分的には3・4年が一番濃かったかなと思います。3年の時に日本代表に選ばれて、そこからやってやろうという意識が高まりました」
―では最後に、後輩たちに向けて。
「1部に残っているので、上位を目指して頑張ってもらいたいです。特に同じセンターの、小野寺(#86)に頑張って欲しいですね。まだ試合慣れとかしてないと思うんですけど、今後色々経験して頼もしくなってもらいたいです」
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「感謝という気持ちが一番最初に出てくる」
まわりの存在に助けられ、貴重な学びを得た4年間
◆#75和田保彦(大東文化大・4年・G)

―今はどんなお気持ちですか?
「ほっとした部分もあるんですけど、やっぱりちょっと寂しいかなというのが心境ですね」
―『ほっとした』というのは、4年間の今までの苦労を思って?
「そうですね。でもまぁ去年までは先輩たちにおんぶにだっこの状態だったんですが、今年から最上級生になって、チームを引っ張ったり下級生の面倒をみたり、色々やらなきゃいけないことがあって。でもそういうところで少しは次の世代に何か残して託せたかなと思います」
―4年目の今年は心境として今までの3年間とは違いましたか?
「そうですね。3年生まではただがむしゃらにバスケやるだけという感じだったんですけど、4年生になってからは、声を出したりとか盛り上げたりとか、そういう風にチームのことを考えられるようになりましたね」
―4年生が明るい雰囲気を作って、チームをうまく引っ張っていたと思います。
「4年生が結構多くて今のメンバーの半分以上が4年生なので、盛り上げるとなってもだいたいが4年生。そこに後輩たちが乗っかってくるという感じでしたね。自分もやっていて楽しかったし、後輩たちもそういう風について来てくれて、すごく楽しいチームでした」
―今シーズン、和田選手は春先スタメンでしたが、そこからなかなか試合に出られない時期もありましたね。そこで悔しい気持ちや苦労もあったのでは?
「そうですね。試合に出ていた時は出ていた時で色々悩みがあったんですけど、出られなくなった時に、やっぱり出られない側の選手の気持ちを味わって。でも気持ちの持って行き方やモチベーションの保ち方というのは今回だけしか学べなかったことだと思うので、そういうことを考えたらこれからに生きる良い勉強だったかなと思います」
―試合に出られない中でも、自分にできることをやっていたのかなと思いましたが。
「そうですね。盛り上げる選手はもちろんコートの中にも必要なんですけど、やっぱり外にも必要だとあらためて思って。外から声をかけることによって、中の選手も落ち着けたり楽しくバスケットできたりすることもあると思って、そうやって外から盛り上げることを意識していました。そういうことができるようになったので、それはそれで良かったかなと思います」
―主力が抜けて今年は経験の浅い未知数なチームとなりましたが、上位チームとも戦える実力を発揮しましたね。
「去年のチームは、3年生以下の下級生も数は多かったんですけど、やっぱり4年生が引っ張ってくれていました。そういう4年生を見てきて、じゃあ自分たちの代はどうなんだと。今年は4年生が多くて下級生が少ないという去年とは全く逆の感じだったんですけど、それでもちゃんと4年生一人ひとりが自覚を持って、チームを引っ張って行こうみたいに考えられたので、上手くいったのかなと思います」
―ずっと4年間一緒にやってきた同期はどんな存在ですか?
「それはもう、これだけで終わったらもったいない関係ですね。やっぱり私生活でも仲が良くて、4年間本当に誰ひとり喧嘩がなかったんです。みんなで誰かの部屋に集まったり、みんなで飲みに行ったり。そのくらい仲が良かったので、ここで終わらない関係だと思います」
―これで学生としての大会は終わりましたが、ここまで振り返っていかがでしたか?
「辛い時期もあったんですけど、やっぱりそれを乗り越えられたのは、同期の仲間たちがいてくれたからだし、先輩後輩にも恵まれてここまでやってこれました。やっぱり、感謝という気持ちが一番最初に出てきて。親にも、まわりの応援してくれる方にも、本当にこの4年間は感謝ですね。そういうことが学べて良かったと思います」
―後輩たちに向けてメッセージを。
「後輩たちには、俺らの代の成績を越えなかったらタダじゃおかないと(笑)。以上です!」
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「上のレベルでやるのは本当に楽しかった」
4年目にして初の大舞台で仕事を果たした司令塔
◆#0有村優志(大東文化大・4年・PG)

―インカレを7位で終えました。今はどんな思いですか?
「リーグ戦からここまでずっと休みなくやってきて、やりきった感というか、どこか解放された感じはありますね。今大会は結果としては悔しくても、結構良い戦いもできたと思うし、後輩たちがその姿を見てどう思うかだと思います。何か感じてくれていたらいいですね」
―準々決勝で青学大に敗れましたが、良い戦いをしましたね。
「あの試合、隆一(#14岸本)が退場になって会場から拍手が巻き起こったとき、自分と交代だったんですよ。あんな出づらい場面はないですよね(笑)。もうあれは自分への拍手だと思うしかないと思って、開き直りました」
―今年からAチームに上がって、今シーズンを振り返っていかがでしたか?
「上のレベルでやるのは本当に楽しかったです。最近は隆一と交代になることが多かったんですけど、一緒に出るときもパスをすれば点を決めてくれるし、楽しかったですね。隆一が結構攻めるガードなので、自分は作るガードとして、そういう役割の違いを意識してコートに出たらやろうと思っていました」
―上のレベルでもやれるんだなという手応えもあったのでは?
「はい、ぼちぼち(笑)」
―以前他の4年生から、有村選手がこれほど活躍をするのは予想外だったという声も聞こえました。
「あー、それはみんなが自分の実力を分かっていなかったんですね(笑)。Bチームの時からやれるとは思っていました。やっぱり自信は持たないといけないですし」
―コートでも楽しそうでしたが、ベンチにいても大久保選手(#85)や和田選手(#75)と一緒にすごく楽しそうでしたね。
「そうですね。静かだったら楽しくないですし、やるなら楽しくやりたいなと思って騒いでいました。楽しかったですね」
―同じ同期はどんな代でしたか?
「4年生はみんな、おちゃらけていますね(笑)。真面目なやつが鎌田(#43)くらいで。小山(#41)も真面目そうに見えて、カラオケになると“きゃりーぱみゅぱみゅ”とか歌いだしますからね(笑)。全然喧嘩もなくて楽しかったし、仲間に恵まれました。バカばっかりですけど、そこが良かったですね。普段ふざけていても、チーム練習は真面目に頑張っていましたし。やっぱり隆一がキャプテンとしてしっかりしていますから。それにみんなもついていく感じでしたね」
―これで学生の大会を終えて、4年間はいかがでしたか?
「あっという間でした。3年間ずっとBチームで、試合数とかも全然なくて、やっと4年生になってこうして出る機会をもらえて。これが本場なんだなぁと感じることができました。この経験を活かして、これからも頑張りたいですね」
―後輩たちに向けて。
「後輩たちは4年生が抜けたら結構やばいと思うので、頑張ってもらわないと。残りの期間で鍛えていきたいですね。ガードは、兒玉(#28)って同じ福岡出身のやつがやると思うので、そいつに期待したいです。あいつはまだメンタルが弱いので、自分がこれから鍛えようかなと思います」
―まだオールジャパンがありますしね。
「そうですね。プロを倒しにいきます!」
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【COMMENT】
「最後はチームがまとまって大東らしくできた」
◆#19藤井佑亮(大東文化大・4年・SG)

青学には負けましたけど、まだ試合が残っていましたし、4年生は学生の大会が最後になるので楽しくやろうと。勝ちにはこだわっていましたけど、大東らしく元気良くやろうと心がけて、最後の2試合を戦いました。最後まで楽しく出来たんじゃないかなと思います。
最初は試合には使えてもらえなかったですけど、段々出られるようになって、本当に監督にも感謝したいですし、仲間にもすごく恵まれたので、感謝したいと思います。
最後のオールジャパンはJBLとやって良い思い出を作ろうと思っています。最低限そこまで行きたいですね」
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「いろいろ勉強した4年間だった」
◆#24張方(大東文化大・4年・C)

4年間一緒に試合を戦って同学年はいい仲間でした。4年間バスケットをいろいろ勉強できた時間でした。パワーや身長、センタープレーは高校とはぜんぜん違っていました。インカレは最近ちょっと調子が悪くて試合にはあまり出られなかったけど、応援を頑張りました(笑)。青学戦は相手が強くて勝てなくて残念でしたけど、7位は頑張ったと思います」
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「大東が上に上がってくるのを感じられた4年間」
◆#41小山 哲(大東文化大・4年・F)

入学から最初はBチームで、そこからAに上がるのはすごく大変でした。自分は兄が二個上にいてキャプテンをやっていて(小山 純・2010年度主将)、兄ちゃんのお陰で1部に上がって、去年将道さん(田中将道・2011年度主将)の代でリーグ4位と良い記録を出して、それで今年を迎えて。本当に大東が上がってくるのを同時に実感した代なので、隆一・裕也という二枚看板がいてくれたお陰で自分たち他の4年生もやりたいように出来たのかなと思います。
キャプテンの隆一は、普段の顔と試合の顔が全然違いますね。普段はおちゃらけて子どもっぽいところがあるんですけど、試合になったらリーダーシップがあって頼りになります。
オールジャパンはJBLとやりたい気持ちがあるので、そこまでに今までやってきたリーグ戦やインカレの反省点を活かして練習していきたいですね」
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「出られなくなっても応援では一番を目指した」
◆#86大久保 亮(大東文化大・4年・SG)

でも、バスケでは苦労しましたね、去年は出ていたので(苦笑)。出られなかったのは完全に実力不足です。ただ、インカレ前の練習だと調子が上がっていたので、インカレでは出して貰えて良かったです。7位でしたけど、青学戦はみんな気持ちが入っていて勝ちたかったので、納得はしてないですね。去年もベスト4掛けで負けているので、勝ちたかったです。このチームは隆一が言うとそれに乗っかっていく感じなので、とにかく勝ちたかったですね。
みんなキャプテン、副キャプテンのことは信頼していました。だからみんなそれについていきました。最後のオールジャパンはJBLとやりたいです!」
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最後に4年生が集まって集合写真を「月バス風」に撮影。最後まで大東大らしいにぎやかさだった。
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「自分が活躍することで小さな選手の見本になりたい」
挑む気持ちと気づきを経て見出した自分の道
◆#3石川海斗(日本大・4年・主将・G)

常に高いところにハードルを置く石川の言葉は、下級生に対し一見厳しいが、さまざまな示唆に満ちている。インカレこそベスト8に入ったが今年の日大の成績は決して芳しいものではなかった。あるものでどうにかするしかなかった部分もあるが、どんな状況でも、どんな選手であっても常にできることを精一杯やらなければ先はないと言う。束縛の少ない大学バスケでは「気づき」がない限りはそこで終わってしまう。サイズが優先される世界でその評価を覆しながら道を拓いてきた石川の言葉を下級生はどう受け止めるか。そして残りの時間でチームにどのような影響を与えられるかに注目したい。
ー8位ということになりましたが、インカレを終えてチームについてはどう思いますか?
「チームとしてはオールジャパンに出られるというのがひとつの収穫ではあるし、入れ替え戦に負けてからそこまで上げられたというのはいいことではあります。でもベスト8に入るのがこのチームの目標ではないので。正直に言えばガードとセンターがまだまだバスケットを知らない。今年の大学のチームを見てきてどこが強いかといえば特別に抜けだしたというところはないと思います。個人で上手いと思う人はいるけれど、チームとしてすごいと言えるチームはなかったので、それに勝てないうちの弱さ、バスケットを知らなかったり、状況を打開できないという部分だったり、そういうのをインカレで痛感させられた感じがします」
ー今年はチームとしては2部に落ちてしまったり、チームメンバーも安定せず、悪い状況をなかなか変えられなかったのかなという状態でしたが。
「悪く言えば、自分ひとりがいなくなっただけでチームが変わるようであれば優勝は最初から狙えていません。だからそれまでのチームだったのかなとも思います。どんなチームでも練習内容がどうであれ、自分たちでその中でどれだけ濃い練習にするかで変わってくると思います。今年は今まで試合に関わることがなかった人たちが出ているというのはあるけれど、試合に出ていない人が意味のある練習をしていなかったのが、リーグ戦や入れ替え戦で勝てなかった理由として大きいと思います。どこのチームの選手も練習を試合に向けてやっていると思います。うちは練習をただしているだけ、という状態になっていたのがダメでしたね」
ー下級生が多いのも不安定の一つの要因だったかと思いますが。
「でもそれでも下級生からできる人はやっているし、上を目指す、優勝を目指すのであれば自分で何が必要だか気づかないようだと狙えません。李相伯杯のメンバーなんかもそうやって気づいた人が選ばれているし、向上心を持ってひとつの練習に取り組んでいる人たちが代表にも関係してきている。自分はそういう場に選ばれた経験から、チームに戻って何が必要なのか体感することが多かったですね。後輩は来年すぐ強くなって1部に上がれる訳でもないので、本人たちがそこを変えていかないと強くはならないと思います。4年の飛田(#11)も抜けますし、ここで上級生の20点がなくなった時にその分をどう埋めていくかが問題です。今のチームは個人でやっていて、5対5というより、自分は何点取ったかとか、自分のところでやられていないとか、そういう意識でいる。そこを変えていかないといけません」
ー石川選手自身は1年生の時から試合に絡んで、李相伯杯代表にもなって、インカレでも優勝に貢献する働きをしました。そこは気づきの結果ということでしょうか。
「自分は1年の時に竜青さん(篠山竜青10年度主将・現JBL東芝)を引きずりおろさないと試合に出られないから、個人であっても5対5の中でも相手を負かすつもりでやっていたし、それで試合に絡んで結果を出していけたと思います。でも竜青さんがいなくなって自分がスタートになってから、他から向かってくるという選手はいませんでした。負けず嫌いの選手は下級生にもいます。でも上が抜けて自分が出られるようになってから向かってくるというのでは遅いので、負けず嫌いだというならそこを常に出していってもらいたいですね」
ー後輩にはそこも気づいて欲しいところなんですね。
「いくら周りで気づいている人が言っても、本人たちが気づかないと結局大きくは変われません。昨日、1年生の舘(#20)とマネージャーの高橋と3人で話している時に、東海の橋本(#21)の話になったんです。実際橋本はこれからの選手ですよね。舘は橋本がA代表になれるなら、自分も頑張ったらもっとできるんじゃないかと言えるぐらいの気持ちにはなってきているんです。あいつはバスケを始めたのは遅いですが、少しずつやりたいことも出来るようになってきて自信もついてきています。そういう風に気づける人が増えないとダメですね。今日も完太(#6佐藤)は岸本(#14)を止めるプレーがありました。そういうのを続けて自信になっていけば、来年エースキラーになれる働きもできると思います。そういうことを本人に気づいて欲しいですね」
ーそれを祈りたいですね。石川選手はリハビリも進んでオールジャパンへの出場の可能性もありますね。間に合うかどうかというのは考えていましたか?
「むしろチームがオールジャパンに出られるかというのはありましたね。出られるとなってからリハビリにも一層力が入っています。来週から走り始めますが、あまり無理せず間に合えば。間に合わなければ最後にシュート1本でも打てればいいかなと考えています。拓殖大に勝ってオールジャパンを決めた時、坂田(#1)が一番泣いて、『最後にオールジャパンは海斗さんからパスを受けたいです』と言いながらずっと泣いていたので、最後にそれを叶えてやりたいなというのもあります。飛田も『絶対にオールジャパンに出るからリハビリを頑張れ』と言ってくれたので、そういう気持ちを感じたので頑張りたいです」
ー学生の大会としてはこれが最後ですが、大学はどういう場所でしたか。
「大学で学ばせてもらったものは大きいし、特にインカレの優勝(2009年)を経験させてもらったのは一番大きなことでした。そういう意味では高校から通してもあれは大きな経験でした。あとは高校との違いで体の強さも感じたし、李相伯代表にも選ばれて韓国と戦えたのも大きいです。そういう部分は良かったと思います」
ー小柄な選手で活躍しているガードも多いですが、カテゴリが上にいくほどどうしても不利と言われます。大学でどれくらいやれるかと考えたりしましたか?
「自分の目的として、小さな人の見本になろうというのがありました。小さな選手って途中で辞めていってしまうんですよ。小学校でも中学校でも。自分は東京のエンデバーは大きな人に負けて入れなくて、高校の時に入れました。それが自信になっていったし、自分が活躍することで小さい人の手本になって、そういう人たちを勇気づけられればいいなと思っていたんです。だから大学に来てもやってやろうという気持ちは強かったですね」
ー確かに、競技的に小さいというだけで評価が下がってしまうのは残念なところです。でも石川選手が1年生の時、すごい選手が入ってきたなと感じましたよ。
「でも1年生なんか気持ちで負けたらやれないですよね。それで学ぶべきことも大きいし、1年生からやってきたからいろんなところの監督も話しかけてくれたり、面倒を見てくれました。青学の吉本さん(トレーナー)もケガをした時に一番心配してくれていたので、そういう意味でいろんな人に気にかけてもらって、頑張っていてよかったなと感じる部分ですね」
ーご両親も熱心に毎試合応援に来てくれましたね。
「楽しみにしてくれているので、親に恩返しをするというか、楽しい試合を見せていけたらいいなというのもありました。だから最後の年はあれでしたが、楽しんでくれていて感謝しています。そうして考えると大学は楽しい時間でした」
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