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2012.11.25 (Sun)
【2012インカレ】決勝 青山学院大VS東海大
相手エースを抑えた東海大が6年ぶりの頂点に立つ
青学大は終始劣勢を強いられ3年連続三冠を逃す
2012年のインカレ決勝戦は、準決勝でともに快勝した青山学院大と東海大の、2年続けて同じ顔合わせとなった。両チーム合わせて今年の日本代表経験者が5人も揃う華やかな両チームの対戦を見ようと多くの人が訪れ、代々木の舞台は大学バスケットのシーズンを締めくくる戦いに沸いた。
学生界最強という形容をほしいままにしている青学大は、この大会に3年連続の三冠がかかる。一方の東海大の現メンバーは大学三冠タイトルに手が届くところに至ることはあったが未だ無縁。加えて今季はここまで青学大に公式戦3戦全敗を喫し、青学大優位と見る向きもあった。
だが、試合はティップオフからほとんどの時間でリードし続けた東海大に軍配が上がった。今季はいずれも青学大の前に準優勝に終わってきたが、ハイレベルなディフェンスで青学大を凌駕。相手に見せ場をほとんど作らせず、悲願の学生日本一の称号を戴冠するに至った。
写真:優勝の瞬間、田中、狩野らが顔を歪ませた。
※詳しいゲームレポートと、青山学院大の記者会見、比江島選手のインタビューは「続きを読む」へ。
※東海大のインタビューは別途掲載します。
東海大#0ベンドラメ(1年・SG・延岡学園)のインターセプトからの速攻を青学大#8張本(3年・F)が豪快にブロックして幕が上がった決勝戦。開始直後は両者ともミスが出たが、抜け出したのは東海大。#24田中(3年・SF)がミドルシュートを決めて先制し、3Pも沈めてリードを得る。青学大は#8張本のシュートがこぼれ、#25永吉のタップも落ちるなど、序盤からちぐはぐしたプレーを見せる。数多の大舞台を経験してきた#56比江島(4年・SF)のシュートも決まらず、逆に東海大は#0ベンドラメもミドルシュートを沈める。青学大は4分過ぎに#13鵤(1年・PG・福岡第一)のジャンパーでようやくこの試合初のフィールドゴールが決まるが、東海大は#7晴山(2年・PF)が決め返して好リズムを維持。厳しいディフェンスで青学大にシュートミスやターンオーバーを誘う。業を煮やした青学大は残り1分で#32畠山(3年・PG)を投入。すると#8張本が豪快なドライブを決め、ディフェンスで畠山のカットから#56比江島のレイアップに繋げ、14−15とほぼイーブンで1Qを終えた。
しかし、2Qも東海大優勢の試合展開は変わらない。#10バランスキーがフックシュートに続いて3P。青学大はマッチアップする#25永吉がジャンパーを続けて決めて追い上げ、#56比江島の得点で同点に追いつく。だが集中を保つ東海大は#33狩野(4年・SG)が3Pを決めて再度リード。狩野は続けてミドルシュートを決めると、#24田中も#56比江島からスティールしてレイアップを決め、7点差となったところで青学大がタイムアウト。すると青学大はエースの#56比江島がジャンプシュート、3Pも決めて詰め寄り、ディフェンスではゾーンを敷いて対抗する。東海大は#0ベンドラメと#7晴山がミドル、#24田中は3Pを決めるが、青学大がバックコートで奪ったボールを#56比江島が運び、緩急をつけたドリブルで#0ベンドラメのマークを剥がして絶妙のスクープショットを決めると様相が変化。#25永吉が交代出場した#21橋本(1年・C・宇都宮工)から連続バスケットカウントを獲得し、いずれもワンスローを決めてこの試合初めてリードを奪う。東海大#7晴山にシュートを返されるも、前半は35—36と、波に乗り切れないながらも青学大がビハインドを1点で抑える形で終えた。
3Qに入っても青学大はゾーンを続ける。しかし東海大はこれを意に介さず#33狩野が3Pを決める。直後に足を痛めた#7晴山が一時ベンチに退くものの、代わって入った#23佐藤(3年・PF)がチームディフェンスで貢献を見せる。青学大は#8張本のゴール下を最後に、オフェンスリバウンドを何度も拾ってもシュートが決まらず、トラベリングも犯して5分間フィールドゴールが決まらない展開に。この間に東海大は#24田中が魅せた。3Pを決め、3ショットのフリースローも全て決めて差を8点にまで拡大。流れを掴めない青学大は#8張本がアグレッシブに攻めて得点を重ね、停滞を打破する。だが、東海大は#0ベンドラメの3P、最後のオフェンスでは#24田中がレイアップを沈め、54−45として試合は最後の10分間を迎えることとなった。
泣いても笑ってもこれが最後となる4Q、#24田中のミドルシュートで東海大は点差を二桁に乗せる。青学大も#25永吉がフリースローを2つ揃え、#32畠山がパスカットから走りレイアップを決めてこのQ開始1分も経過しないうちに東海大がタイムアウト。青学大の流れになったかに見えたが、またもや#24田中のシュートでこれが断ち切られる。更に#10バランスキーが#25永吉からスティール。そのまま持ち込むと、インサイドアウトでボールはフリーの#33狩野へ。狩野はこの3Pを決めて、リードは12点に。青学大は2回目のタイムアウトを使うが、#0ベンドラメにフリースローを2本とも決められ、トラベリングも出る。更に#25永吉が#7晴山に豪快にブロックされ、またも得点の入らない状態に。だが、#13鵤がスティールから得点、厳しいディフェンスにさらされている#56比江島もゴール下をねじ込み追撃を図る。東海大タイムアウトを挟んでプレスを仕掛け、#25永吉がスティールから決めるが、ファウルも込んで時間だけが経過していく。青学大はこの局面で膝に手をつく選手が目立ち始める。やや詰め寄られた東海大だったが、#33狩野の3Pのこぼれ球を#24田中がねじ込み、#0ベンドラメは自ら落としたフリースローを相手から奪い取るビッグプレーで観衆をどよめかせる。また、青学大が#15山崎(4年・SG)を投入すると「シューターが入ったぞ!」と、積極的に声をかけ合って味方同士を鼓舞する姿勢を見せ続けた。
青学大はほぼ勝負が決した最終局面でベンチ入りした4年生を全員コートに送り込む。しかしシュートはいずれも決まらない。逆に東海大は#14山田(4年・C)とともにコートに立った#31高山(4年・PF)が決めて、応援席を沸かせる。そして残り時間僅か、マイボールとした東海大は狩野が受け取ったボールを高々と放り、ここで試合終了を告げるブザーが鳴った。狩野を始め、東海大のメンバーは一斉にベンチへ走り歓喜の輪を作った。そしてそこに、ベンチ後ろから声援を送ってきた応援団が次々と加わり、一個の巨大な塊となってコートに膨らんでいった。その塊が解けると、コート中央で狩野が突っ伏し号泣する姿を見せていた。この一戦に賭ける思いに共鳴するように、客席からは喝采が送られた。最終スコアは71−57。三冠タイトルに見放され続けてきた東海大が、竹内譲次(現JBL日立)らを擁して連覇を果たした06年以来の王座に遂に返り咲いた。
優勝の東海大がほぼ一貫してペースを掌握し続けた試合だった。バランスキーと晴山が体を張って青学大のツインタワーに相対し、相手の強みであるペイント内を封じた。また、相手のゾーンを前にしても、陸川監督曰く「徹底的にやり込んだゾーンオフェンス」がぴたりとはまり、今大会一貫して好調だったミドルシュート、3Pが良い場面で決まった。そして、去年の決勝ではファウルトラブルに苦しんだ田中が、青学大のキーマンである比江島に簡単な形でボールを持たせなかった。3番ポジションのマッチアップは比江島の13得点に対し、「自分(のマッチアップ)で負けたらチームが負けるという気持ち」だったという田中が27得点。ここでの14点差が、そのまま両チームの得点差となった。
青学大は、会見で張本や鵤が「試合の入りから受け身になってしまった」と悔やんだようにスタートで出遅れ、試合開始から噛み合わないままタイムアップのブザーを聞くこととなった。春先からシューター不在が懸案だったが、この試合ではチームでの3Pは1/10に終わり、その課題を克服し切れなかった。更に、ツインタワーを擁する布陣ながら、東海大に飛び込みでのリバウンドを拾われ、チームリバウンドは東海大40本に対して38本とこの点でも劣った。これでは「アップテンポなトランジションをしたかった」という長谷川監督の思惑通りには行かず、後半は僅か22得点と、青学大にしては信じ難いロースコアとなってしまった。アウトサイドの手数の少なさ、セットプレーでの機動性の乏しさというこの一年で克服し切れなかった課題が露見した一戦だった。悪い内容でも勝ててしまう状況が続いてきた青学大は、フルメンバーでは今季この試合まで27試合で無敗。そのことが逆に「本当の負けを知らなかった。ビハインドのゲームを経験しないと、そういうことは解決出来ない」と長谷川監督に言わしめる結果となってしまった。
明暗がくっきり別れた両チームだが、学生バスケットの牽引役としてどちらも年明けのオールジャパンでの活躍が期待される。若いチームながら、東海大の陸川監督はそこでの戦いを既に見据えている様子。記者会見では柔和な表情ながら「今の段階からでもまだ伸びる。学生だからといって負ける気はさらさら無い。このインカレが終わってオフの後に今度はもっときつい練習が待っている」と、オールジャパンに向けて更なるレベルアップを宣言した。一方の青学大、「オールジャパンに向けて切り替えてやっていきたい」とは比江島のコメント。インカレ決勝戦という学生界最大の舞台で喫した今季の公式戦初黒星の悔しさを、学生として迎える最後の大会で晴らすことが出来るか。両チームへの注目はまだまだ続く。
【記者会見】
【記者会見】
◆長谷川健志監督
「まず東海さんに劣っていた部分は、どうしても優勝したいという気持ち。東海さんは2006年に竹内讓次くんや石崎くんが優勝して、そこから2007、8、9、10、11、12と優勝していない。1年に3大会だから、17回優勝していないんですね。うちはその間、12回優勝していますし、特にここ2、3年の間は負けていない。だからか、彼らの方が思いも強かったのかなというのがプレーの一つひとつに出ていた気がします。我々ももちろん勝ちたいという気持ちはあったんですが、その思いが少し東海さんよりうちの方が無かったのかもしれない。それは選手だけじゃなくて、僕自身も含めてのことだと思います。ゲームの中では、少しリバウンドを取られ過ぎたというところが大きいです。我がチームは今日もアウトサイドのシュートがちょっと入ってなかったんですけど、それは現時点でやむを得ないところもありますので、やっぱりリバウンドを取ってアップテンポなトランジションにしたい。でもそれがなかなかできなくて、苦しいゲームになってしまいました。それにインサイドのアドバンテージはうちの方があるのに、それを活かしきれなかった。あとは、今日天傑(#8張本)なんかが少し疲れていて上手くいかない時、あるいは比江島(#56)が田中大貴(東海大#24)にやられたり疲れたりしている時に、メンバーチェンジで野本(#7)とか他の選手を使う、僕自身の積極性とか勇気が少し足りなかったのかなという反省はあります。それと、ディフェンスも、フルコートの練習をリーグが終わってからやったんですけど、劣勢になってからやってしまった。そういう積極的なディフェンスの展開だとか、インサイドのアドバンテージだとか、メンバーチェンジだとかいうところは、本当に私の責任だと思っています。選手たちはよく頑張ってくれました」
◆#25永吉佑也(青山学院大・3年・C)
「4年生を最後、勝たせてあげられなかったことが一番悔しいです。僕らが入学した当初から、一番近くで青学というものを教えてくれた先輩たちなので。本当に、ただただ悔しいだけです」
◆#3小林遥太(青山学院大・3年・PG)
「永吉も言った通り、4年生に優勝をプレゼントできなかったことが本当に悔しいです。試合としては、流れが悪い時間帯にガードとして声を出せなかったことが情けないですし、もっとディフェンスも積極的にやればよかったなって今さらながら後悔しています。本当に悔しいです」
◆#56比江島 慎(青山学院大・4年・SG)
「後輩たち、試合に出ている他のメンバーはよくやってくれたし、やっぱり自分と田中大貴の差がそのまま出たかなと思います。悪い流れの時に、自分も攻めて青学の流れにしようとしたんですけど、やろうとする前に田中大貴とかにやられたので、なかなか自分の流れに持っていけなくて。自分は点を決めて乗っていくタイプなんですけど、それができずに試合が進んでいってしまいました。田中大貴にはディフェンスもオフェンスも、どっちに関しても今日は完敗だし、全てにおいて今日は負けていたと思います。中心選手というか、4年生として何もできなかったことが敗因だと思うので、本当に悔しいです」
◆#8張本天傑(青山学院大・3年・F)
「3年生二人が言ったように、本当に4年生を勝たせてあげたかったので、それができなくてすごく悔しいです。試合の入りからこっちが受け身に回る感じになってしまったし、気持ちの部分も向こうの方が上というのは感じて、リバウンドとかルーズボールとか、気持ちの面であっちの方が上でした。悪い流れの時も我慢できなくて、こういう結果になってしまって。来年リベンジしたいです」
◆#13鵤 誠司(青山学院大・1年・福岡第一・PG)
「やっぱり4年生最後の試合を勝たせられなかったというのが、とても悔しいです。一番悔しいのは、気持ちの面で相手に負けたということで。天傑さんも言ったように、受け身になっていたことが一番良くなかったと思います。色々考えると後悔ばかり出てきます。悔しいです」
【INTERVIEW】
「全てにおいて東海が上だった」
学生最後に直面した悔しさを、次に繋げられるか
◆#56比江島 慎(青山学院大・4年・SF)
決勝戦、田中大貴の徹底マークを前にスコアを伸ばすことは出来ず、表彰式でその胸にかけられたメダルの色は銀色だった。中学、高校、そして大学進学後も何度もチームに「日本一」をもたらしてきた男にとって、学生だけで戦う最後の大会は歯がゆい幕切れとなった。涙は見せなかったが、「他の4年生のためにも勝ちたかった」と言った時には声が詰まり、目に滲むものがあった。逆に、常に期待をかけられ続けてきた選手だが、少しすっきりした面持ちでそういった期待が自分の思いとは離れたところにあったことも吐露した。
今年はA代表でもアジアカップに出場し、充実した一年だった。それだけに最後の最後に待っていた敗戦が悔やまれる。「もっと成長しろってことですね」。大学バスケットからの巣立ちも間もなくだ。この結果を経験し、今後どのような成長をしていくのか。本人の意思とは関係無しに、今後も否が応でも期待は増していくだろう。それを、この先も乗り越え続けていかなればならない。
—こういう結果は、想像していなかったですか。
「そうですね。想像はしていなかったです」
—昨日の会見で『自分と田中選手とのマッチアップで負けたら、チームも負ける』とおっしゃっていましたが。
「(チームの)得点は、(自分と)あいつとのところの差が出たかな、と思います」
—良い形でボールが貰えませんでした。相手のディフェンスが良かったのでしょうか。
「そうですね。多分、大貴はフェイスガード気味でついてきたと思うんですね。だからあいつとの一対一は絶対に抜けないと分かっていたし、あいつがヘルプに寄って、パスが来て、そのズレとかで抜くしかないな、とは思っていたんですけど、見事にボールを貰えずに……。貰ってもドリブルさせられて止められるだけだったし。僕が青学の起点になることが多いと思うんですけど、そこで僕にパスが入らなかったから青学の流れも良くなかったと思います」
—トランジションがほとんど出来ませんでした。
「そうですね。速い展開で大貴がつかないときに点を決めようと思っていたんですけど、その唯一の突破口も無かったし、完全に東海のペースだったかなと思います」
—ハーフタイムの長谷川監督の指示はどのようなものでしたか。
「リバウンドが取れていないから、ブレイクが出ないんだぞ、と。それでそのままゾーンは継続していくぞ、とも言われました。ゾーンからボールを取ってブレイクに持って行こうと。そういう話でした」
—リバウンドが取れず、スコアも伸ばせず、イライラ感が募っていった面はありませんでしたか。
「そうですね。前半は永吉とかが上手くやっていたんですけど、後半はそこも抑えられて。何も出来ずに終わりました。全てにおいて東海が上だったかなと思います」
—今日はどの辺りで負けを覚悟しましたか。
「自分がリバウンドを取ってベンドラメに取られた時に、覚悟というか。長谷川さんもタイムアウトで『負けは負けで良いから最後まで諦めるな』と言っていて。その時くらいですね」
—東海大が新しいセットを仕掛けてきましたが、戸惑いはありませんでしたか。
「いや、そこは無かったですね。困った時の一本は欲しかったですけど、相手が一枚上手でした」
—何か用意はしていたのでしょうか。
「僕らはしてないです。いつもはするんですけど、今回はしてないです。フォーメーションとか、全部読まれて何も出来なかったんじゃないかな。今日は中にボールを入れてもそれで終わりになって、任せっきりになっていました。前半は通用したけど、ディフェンスが上手い東海なので後半は修正してきましたね。東海を褒めるべきだと思います」
—4年生として、特に意識していた点はありましたか。
「プレーで引っ張ることが自分の仕事だと思っていたので、今日はそこに関してはゼロ点です」
—準決勝が良かっただけに、悔やまれますね。
「昨日が良かっただけに、安心したんじゃないかと思います。だから今日は、何もやれない感覚が強かったです」
—終わった瞬間、どういう思いでしたか。
「終わった瞬間は何も考えず、『終わったな』と思うくらいで、その後も泣くことはなくて。ミーティングの時は終わったという実感も沸いてきたし、他の4年生が泣いているのとか、彼らを勝たせてあげられなかったと感じた時に涙が出てきて……。悔しかったです」
—この悔しさを次にどうぶつけていきたいですか。
「オールジャパンで頑張って、また青学らしいプレーというか、お客さんに『青学は強いな』と思ってもらえるようにしたいです」
—今年、最後の年に負けたことでの悔しさは大きいかと思いますが。
「本当にそれは人生で一番の後悔だと思うし……。もっと成長しろってことですね」
—中学や高校の時に続いて、大学でもスター選手として期待され続けてきて、いかがでしたか。
「それは嫌で仕方なかったです。『比江島タイム』とか言われるのも。でも、何の言い訳にもならないです」
—この一年様々なことがありましたが、振り返ってみていかがですか。
「自分のためになる一年だったかな、と。ここまで早かったですし、A代表に行ったことも、今日負けたことも、ここで少し自分の中で(心理面が)変わると思うので、良い年になったかなと思います」
—ハングリーさが増すのでは?
「そうですね。来年からレベルの高いところでやるつもりだし、自分より上手い人はいっぱいいるし、ハングリーさはもちろん、チャレンジする気持ちを持ってやりたいと思います」
—大学バスケットを4年間やってきて、いかがでしたか。
「みんな真面目ですね。しっかり走るし、気持ちが一番出るカテゴリかなと思います。今日は『勝ちたい』という気持ちが東海の方があったと思うし、そこの部分で負けたと思います。だから、気持ちの部分が他のプロとかに比べて影響が大きいのかなと思います」
青学大は終始劣勢を強いられ3年連続三冠を逃す

学生界最強という形容をほしいままにしている青学大は、この大会に3年連続の三冠がかかる。一方の東海大の現メンバーは大学三冠タイトルに手が届くところに至ることはあったが未だ無縁。加えて今季はここまで青学大に公式戦3戦全敗を喫し、青学大優位と見る向きもあった。
だが、試合はティップオフからほとんどの時間でリードし続けた東海大に軍配が上がった。今季はいずれも青学大の前に準優勝に終わってきたが、ハイレベルなディフェンスで青学大を凌駕。相手に見せ場をほとんど作らせず、悲願の学生日本一の称号を戴冠するに至った。
写真:優勝の瞬間、田中、狩野らが顔を歪ませた。
※詳しいゲームレポートと、青山学院大の記者会見、比江島選手のインタビューは「続きを読む」へ。
※東海大のインタビューは別途掲載します。
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【GAME REPORT】

3Qに入っても青学大はゾーンを続ける。しかし東海大はこれを意に介さず#33狩野が3Pを決める。直後に足を痛めた#7晴山が一時ベンチに退くものの、代わって入った#23佐藤(3年・PF)がチームディフェンスで貢献を見せる。青学大は#8張本のゴール下を最後に、オフェンスリバウンドを何度も拾ってもシュートが決まらず、トラベリングも犯して5分間フィールドゴールが決まらない展開に。この間に東海大は#24田中が魅せた。3Pを決め、3ショットのフリースローも全て決めて差を8点にまで拡大。流れを掴めない青学大は#8張本がアグレッシブに攻めて得点を重ね、停滞を打破する。だが、東海大は#0ベンドラメの3P、最後のオフェンスでは#24田中がレイアップを沈め、54−45として試合は最後の10分間を迎えることとなった。



青学大は、会見で張本や鵤が「試合の入りから受け身になってしまった」と悔やんだようにスタートで出遅れ、試合開始から噛み合わないままタイムアップのブザーを聞くこととなった。春先からシューター不在が懸案だったが、この試合ではチームでの3Pは1/10に終わり、その課題を克服し切れなかった。更に、ツインタワーを擁する布陣ながら、東海大に飛び込みでのリバウンドを拾われ、チームリバウンドは東海大40本に対して38本とこの点でも劣った。これでは「アップテンポなトランジションをしたかった」という長谷川監督の思惑通りには行かず、後半は僅か22得点と、青学大にしては信じ難いロースコアとなってしまった。アウトサイドの手数の少なさ、セットプレーでの機動性の乏しさというこの一年で克服し切れなかった課題が露見した一戦だった。悪い内容でも勝ててしまう状況が続いてきた青学大は、フルメンバーでは今季この試合まで27試合で無敗。そのことが逆に「本当の負けを知らなかった。ビハインドのゲームを経験しないと、そういうことは解決出来ない」と長谷川監督に言わしめる結果となってしまった。

【記者会見】
【記者会見】
◆長谷川健志監督
「まず東海さんに劣っていた部分は、どうしても優勝したいという気持ち。東海さんは2006年に竹内讓次くんや石崎くんが優勝して、そこから2007、8、9、10、11、12と優勝していない。1年に3大会だから、17回優勝していないんですね。うちはその間、12回優勝していますし、特にここ2、3年の間は負けていない。だからか、彼らの方が思いも強かったのかなというのがプレーの一つひとつに出ていた気がします。我々ももちろん勝ちたいという気持ちはあったんですが、その思いが少し東海さんよりうちの方が無かったのかもしれない。それは選手だけじゃなくて、僕自身も含めてのことだと思います。ゲームの中では、少しリバウンドを取られ過ぎたというところが大きいです。我がチームは今日もアウトサイドのシュートがちょっと入ってなかったんですけど、それは現時点でやむを得ないところもありますので、やっぱりリバウンドを取ってアップテンポなトランジションにしたい。でもそれがなかなかできなくて、苦しいゲームになってしまいました。それにインサイドのアドバンテージはうちの方があるのに、それを活かしきれなかった。あとは、今日天傑(#8張本)なんかが少し疲れていて上手くいかない時、あるいは比江島(#56)が田中大貴(東海大#24)にやられたり疲れたりしている時に、メンバーチェンジで野本(#7)とか他の選手を使う、僕自身の積極性とか勇気が少し足りなかったのかなという反省はあります。それと、ディフェンスも、フルコートの練習をリーグが終わってからやったんですけど、劣勢になってからやってしまった。そういう積極的なディフェンスの展開だとか、インサイドのアドバンテージだとか、メンバーチェンジだとかいうところは、本当に私の責任だと思っています。選手たちはよく頑張ってくれました」
◆#25永吉佑也(青山学院大・3年・C)
「4年生を最後、勝たせてあげられなかったことが一番悔しいです。僕らが入学した当初から、一番近くで青学というものを教えてくれた先輩たちなので。本当に、ただただ悔しいだけです」
◆#3小林遥太(青山学院大・3年・PG)
「永吉も言った通り、4年生に優勝をプレゼントできなかったことが本当に悔しいです。試合としては、流れが悪い時間帯にガードとして声を出せなかったことが情けないですし、もっとディフェンスも積極的にやればよかったなって今さらながら後悔しています。本当に悔しいです」
◆#56比江島 慎(青山学院大・4年・SG)
「後輩たち、試合に出ている他のメンバーはよくやってくれたし、やっぱり自分と田中大貴の差がそのまま出たかなと思います。悪い流れの時に、自分も攻めて青学の流れにしようとしたんですけど、やろうとする前に田中大貴とかにやられたので、なかなか自分の流れに持っていけなくて。自分は点を決めて乗っていくタイプなんですけど、それができずに試合が進んでいってしまいました。田中大貴にはディフェンスもオフェンスも、どっちに関しても今日は完敗だし、全てにおいて今日は負けていたと思います。中心選手というか、4年生として何もできなかったことが敗因だと思うので、本当に悔しいです」
◆#8張本天傑(青山学院大・3年・F)
「3年生二人が言ったように、本当に4年生を勝たせてあげたかったので、それができなくてすごく悔しいです。試合の入りからこっちが受け身に回る感じになってしまったし、気持ちの部分も向こうの方が上というのは感じて、リバウンドとかルーズボールとか、気持ちの面であっちの方が上でした。悪い流れの時も我慢できなくて、こういう結果になってしまって。来年リベンジしたいです」
◆#13鵤 誠司(青山学院大・1年・福岡第一・PG)
「やっぱり4年生最後の試合を勝たせられなかったというのが、とても悔しいです。一番悔しいのは、気持ちの面で相手に負けたということで。天傑さんも言ったように、受け身になっていたことが一番良くなかったと思います。色々考えると後悔ばかり出てきます。悔しいです」
【INTERVIEW】
「全てにおいて東海が上だった」
学生最後に直面した悔しさを、次に繋げられるか
◆#56比江島 慎(青山学院大・4年・SF)

今年はA代表でもアジアカップに出場し、充実した一年だった。それだけに最後の最後に待っていた敗戦が悔やまれる。「もっと成長しろってことですね」。大学バスケットからの巣立ちも間もなくだ。この結果を経験し、今後どのような成長をしていくのか。本人の意思とは関係無しに、今後も否が応でも期待は増していくだろう。それを、この先も乗り越え続けていかなればならない。
—こういう結果は、想像していなかったですか。
「そうですね。想像はしていなかったです」
—昨日の会見で『自分と田中選手とのマッチアップで負けたら、チームも負ける』とおっしゃっていましたが。
「(チームの)得点は、(自分と)あいつとのところの差が出たかな、と思います」
—良い形でボールが貰えませんでした。相手のディフェンスが良かったのでしょうか。
「そうですね。多分、大貴はフェイスガード気味でついてきたと思うんですね。だからあいつとの一対一は絶対に抜けないと分かっていたし、あいつがヘルプに寄って、パスが来て、そのズレとかで抜くしかないな、とは思っていたんですけど、見事にボールを貰えずに……。貰ってもドリブルさせられて止められるだけだったし。僕が青学の起点になることが多いと思うんですけど、そこで僕にパスが入らなかったから青学の流れも良くなかったと思います」
—トランジションがほとんど出来ませんでした。
「そうですね。速い展開で大貴がつかないときに点を決めようと思っていたんですけど、その唯一の突破口も無かったし、完全に東海のペースだったかなと思います」
—ハーフタイムの長谷川監督の指示はどのようなものでしたか。
「リバウンドが取れていないから、ブレイクが出ないんだぞ、と。それでそのままゾーンは継続していくぞ、とも言われました。ゾーンからボールを取ってブレイクに持って行こうと。そういう話でした」
—リバウンドが取れず、スコアも伸ばせず、イライラ感が募っていった面はありませんでしたか。
「そうですね。前半は永吉とかが上手くやっていたんですけど、後半はそこも抑えられて。何も出来ずに終わりました。全てにおいて東海が上だったかなと思います」
—今日はどの辺りで負けを覚悟しましたか。
「自分がリバウンドを取ってベンドラメに取られた時に、覚悟というか。長谷川さんもタイムアウトで『負けは負けで良いから最後まで諦めるな』と言っていて。その時くらいですね」
—東海大が新しいセットを仕掛けてきましたが、戸惑いはありませんでしたか。
「いや、そこは無かったですね。困った時の一本は欲しかったですけど、相手が一枚上手でした」
—何か用意はしていたのでしょうか。
「僕らはしてないです。いつもはするんですけど、今回はしてないです。フォーメーションとか、全部読まれて何も出来なかったんじゃないかな。今日は中にボールを入れてもそれで終わりになって、任せっきりになっていました。前半は通用したけど、ディフェンスが上手い東海なので後半は修正してきましたね。東海を褒めるべきだと思います」
—4年生として、特に意識していた点はありましたか。
「プレーで引っ張ることが自分の仕事だと思っていたので、今日はそこに関してはゼロ点です」
—準決勝が良かっただけに、悔やまれますね。
「昨日が良かっただけに、安心したんじゃないかと思います。だから今日は、何もやれない感覚が強かったです」
—終わった瞬間、どういう思いでしたか。
「終わった瞬間は何も考えず、『終わったな』と思うくらいで、その後も泣くことはなくて。ミーティングの時は終わったという実感も沸いてきたし、他の4年生が泣いているのとか、彼らを勝たせてあげられなかったと感じた時に涙が出てきて……。悔しかったです」
—この悔しさを次にどうぶつけていきたいですか。
「オールジャパンで頑張って、また青学らしいプレーというか、お客さんに『青学は強いな』と思ってもらえるようにしたいです」
—今年、最後の年に負けたことでの悔しさは大きいかと思いますが。
「本当にそれは人生で一番の後悔だと思うし……。もっと成長しろってことですね」
—中学や高校の時に続いて、大学でもスター選手として期待され続けてきて、いかがでしたか。
「それは嫌で仕方なかったです。『比江島タイム』とか言われるのも。でも、何の言い訳にもならないです」
—この一年様々なことがありましたが、振り返ってみていかがですか。
「自分のためになる一年だったかな、と。ここまで早かったですし、A代表に行ったことも、今日負けたことも、ここで少し自分の中で(心理面が)変わると思うので、良い年になったかなと思います」
—ハングリーさが増すのでは?
「そうですね。来年からレベルの高いところでやるつもりだし、自分より上手い人はいっぱいいるし、ハングリーさはもちろん、チャレンジする気持ちを持ってやりたいと思います」
—大学バスケットを4年間やってきて、いかがでしたか。
「みんな真面目ですね。しっかり走るし、気持ちが一番出るカテゴリかなと思います。今日は『勝ちたい』という気持ちが東海の方があったと思うし、そこの部分で負けたと思います。だから、気持ちの部分が他のプロとかに比べて影響が大きいのかなと思います」
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