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2010.11.11 (Thu)
【2010リーグ】11/11入れ替え戦 法政大VS大東文化大 第3戦
【熱戦を制した大東文化大が2008年以来の1部へ】
入れ替え戦最終日、2試合目となった法政大対大東文化大の試合は、会場の都合により順天堂大対江戸川大との2面使用となった。選手のプレーの妨げになることを考慮し、会場はこの2試合目のみ入場規制が敷かれ限られた者のみが試合を見守ることになった。それでも緊迫した試合は熱気をはらみ、会場のボルテージを上げる接戦を展開した。
立ち上がりの大東大は#13小原(3年・F)、#15遠藤(3年・G)の両エースが得点。法政大は大東大のディフェンスに苦しみながらも、#41谷口(3年・C)、#11長谷川(3年・SG)がファウルからフリースローを得て行く。ロースコアな立ち上がりながら、法政大はフリースローで得点を重ね、大東大はファウルに苦しみつつも序盤のアウトサイドが生きて、1Qは15-17とリードした。
2Qも互角となった。法政大は#10山越(4年・G)のシュートで活気づき、#11長谷川が大東大スローインをカットして#21加藤(2年・CF)の速攻につなげ逆転。大東大も#15遠藤の3Pで返すが、#21加藤がバスケットカウントで再び押し戻すなど、どちらも譲らない展開が続いた。しかし残り4分を切ってから法政大は得点が止まりがちとなり、大東大も残り3分で#13小原のシュートを最後に決定打を出せない。2Qは29-30と1点差の拮抗した勝負となった。
3Qの序盤で大東大が#13小原の活躍で一気にリードを広げた。開始4分で#13小原が8点を稼ぎ、そこに#12小山(4年・F)のバスケットカウント、#11田中(3年・G)のシュートも続き、一気に12点の加点。10点差をつけられた法政大だが、主将#10山越が3Pで意地を見せ、#11長谷川の3Pがここでようやく決まると追い上げの姿勢を切らさず、今度は法政大の逆襲が始まる。#10山越のバスケットカウントに#11長谷川のシュートが続き、4点差に追い上げると、ライン際で粘って何度も法政大ボールを勝ちとり、スローインから#21加藤のバスケットカウントを奪うなど、気迫のプレーで43-44の1点差。そこに#10山越の3Pが生まれて残り50秒で46-44と逆転に成功する。大東大は開始3分の44点目を最後に、なんと残りの7分間ノーゴール。法政大の気持ちに押されて46-44で3Qを終えた。
最後の4Q、最後の競り合いが続くが、法政大は#11長谷川へきれいにボールが渡らず、インサイドでは大東大の高さに阻まれ、苦しいオフェンスが続く。大東大は#15遠藤の3P、#13小原のミドルシュートで持ち直し、逆転。法政大はタイムアウトで立て直しをはかるが、ミスが続いて得点につなげられない。勝負はじわじわ大東大に傾いていく。残り3分を切って、法政大がオフェンスチャンスを得点につなげられないのに対し、大東大はここで両ウイングに加えインサイドの#43鎌田(2年・C)が力強いゴール下で得点し、50-56と差を開く。時間がない法政大はここでようやく#11長谷川がクラッチの3Pを決め始めるが、大東大もすかさず返して譲らない。1分を切り、ファウルゲームに突入した法政大は#11長谷川が立て続けに3Pを沈めていくが、優位の大東大はフリースローを落ち着いて決め、64-68とリード。そして残り時間を消化しブザーが鳴り響いた瞬間、うなだれる法政大の選手をよそに、ベンチからなだれ込んだ大東大の面々が選手を取り囲み、笑顔に包まれた。息詰まる攻防を大東大が制し、1部復帰を決めた。
大東大は得点が止まる時間帯もあったが、遠藤・小原の両エースが20点越えの活躍。インサイドでも法政大相手に粘った。これまで勢いのみだった若さが落ち着き、試合中でも声を出してチームを盛り上げた3年生の充実ぶりが見えた。一方の法政大は勝負どころのミスと、エースの長谷川にきれいにシュートを打たせる形がなかなか作れなかった。決めた3P5本のうち、4本は4Q最後、不利な状況を挽回しようとして無理やり打っていったものだ。倒されながらも決めていった集中力はさすがだが、最初から打つ形を作れなかったのは苦しい展開だった。勝負は僅差だった。しかし、勝負際の攻防で崩れなかった大東大が上回った。
歓喜と絶望。入れ替え戦という1年で最も過酷な試合の結末にそれが交錯する。笑顔の大東大をよそに、法政大の選手たちはしばらく下を向き、コートに膝をついて立ち上がることができなかった。彼らが号泣する姿など、誰も見たことがない光景だっただろう。しかし、それはまた2年前の大東大の面々と同じ姿でもある。2008年、1年生だった遠藤や小原、田中たちは期待を受けつつも、1部で1勝もできず2部へ落ちた。昨年はまとまりを欠き、2部最下位に甘んじた。だが、そうした主力たちの成熟と、主将・小山の誠実な奮闘、下級生たちの成長で、今年ようやく大東大はチームとしての形を手にした。入れ替え戦はこうした選手たちの永久運動だ。未成熟なものは蹴落され、力を得て再び浮上する。その繰り返しが涙と笑顔となってこの場で現れる。大東大の主力は3年生たち。来年は1部でその真価を発揮できる。そして、敗れた法政大の面々もまた、主力は3年以下だ。2部で切れず、入れ替え戦のような集中力でやり続けることができれば、再び復帰のチャンスはある。対照的な幕切れを見せた両者だが、ともに前途あるチーム。その力を、それぞれの場所で発揮して欲しい。
写真上:田中は安定してリードし、アウトサイドも決めていった。彼の成長も大きい。
写真下:勝負強いシュートは決まったが、少し遅かった長谷川。
※大東文化大・小山選手、遠藤選手、法政大・山越選手のインタビュー、試合の写真は「続きを読む」へ。
「全てに感謝の気持ちがこみ上げてきた」
主将として昇格の入れ替え戦に感無量
◆#12小山 純(大東文化大・F・4年・主将)
インサイドの地道な活躍でチームを助ける主将は、若いチームにはなくてはならない存在だ。体を張って守り、3Pのアウトサイドまで幅広くプレーで対応する。
入れ替え戦の苦しさは、よく知っている。1年で阿部(JBLレラカムイ)や竹野(bj福岡)らのいた時代に1部に昇格し、翌年すぐ2部へ落ちた。そこから2年を経て再びの入れ替え戦だ。上がった喜びも、落ちる苦しみも両方知っている選手は強い。平坦な4年間ではなかったが、その波瀾万丈な経験を残された時間でチームのために生かして欲しい。
―1部昇格おめでとうございます。終わった瞬間はいかがでしたか?
「いやーもう、やったなというか…。試合に出てくれていた3年生・2年生と、ベンチ、応援席、スタッフ、ほんと全てに感謝の気持ちが込み上げてきて、1部に上がれて良かったなと思いました。ここまで長かったです(苦笑)」
―かなり競った展開になりましたが、試合中はどう思っていましたか?
「いや、負ける気がしなかったです。最後向こうは長谷川くん(#11)とかが意地で3Pを沈めてきて、やっぱり1部でやってきたプライドを感じましたけど、こっちも凄く集中して声も出せていたので、それを上回れたのではないかなと思います」
―入れ替え戦までの1週間、リーグ戦の終盤に下位チームとの戦いが続いたこともあってモチベーションを保つのが難しかったという話を聞いたのですが。
「そうですね…練習中に集中出来ていない時間帯が多くて、ゲーム形式をやってもぐだぐだだったりして。声を出して引っ張ろうとするんですけど、少し余裕が生まれてしまっていて、チームとしてモチベーションがあまり上がりませんでした。法政が1部で全敗しているという事で甘い気持ちがあったんだと思います。でもコートに入ってやることはやってくれたので良かったです」
―法政大相手に、インサイドを攻めようという指示はありましたか?
「裕也(#43鎌田)と龍野(#7今井)のところを起点に、という話はしていましたね。日大と青学のビデオを見ても、日大だったら熊吉(#24)が結構攻めていたので、だったら“ガツガツいけよ”という風に言っていました。でも向こうのインサイドもチャージングの取り方とかが上手くて、空回りしてしまって結果的に外からの点数が多くなったと思います。でも攻めようという気持ちがあって良かったです」
―今シーズンはずっと去年の4年生のことを仰っていましたが、先輩たちのためにも1部昇格を成し遂げましたね。
「そうですね、秀生さん(石井)と研太郎さん(小島)に嬉しい報告ができると思って本当に良かったです」
―先ほど遠藤選手(#15)にもお話を伺ったんですが、去年お話を聞いた時よりもだいぶ変わったというか、自覚が芽生えてきたように思いました。
「3年の3人は本当に成長したと思います。来年も安心して任せられますね。まだ終わってませんけど(笑)」
―今までの4年間で、入れ替え戦の厳しさを知っていると思いますが、その厳しさを乗り越えられたのはなぜだと思いますか?
「僕もずっと入れ替え戦を経験してきていますからね(苦笑)。最後に上がれて良かったです。昨日とか負けた時に自分は結構落ちてしまったんですけど、周りが結構カバーしてくれて、声も出してくれました。1回負けても次勝てばいいわけで、連敗しないようにしようとチームで話していましたね。モチベーションの維持が出来たというか、連敗しないチームになったことが良かったんだと思います」
―勝利の陰には応援の力もあったと思います。
「本当にあの応援には助けられていますね。応援がなかったら今日の勝利もなかったと思いますし、リーグ優勝も出来なかったと思います。そういう意味で、チームで勝ち取った1部昇格ですね」
―次は休む暇もなくインカレですね。
「とりあえず、1戦目から油断せずにしっかり関西のチームを倒して慶應に臨めたらいいなと思うので、また厳しく練習していこうと思います。少しでも今のチームと長くやるためにも頑張りたいです」
―今後の課題はいかがですか?遠藤選手は、試合中重くなってしまう時間帯があると仰っていましたが。
「そうですね。やっぱり受け身になる姿勢が多いというか、少し点差が離れると油断してしまう部分がありますね。それで今日とかも追いつかれてしまったので、強い気持ちを持つように一人ひとりがもう少し意識すればオフェンスも上手く回るのではないかなと思います。あと今日はブレイクがあまりなくて流れに乗れなかったということもありました」
―残すはインカレ、そしてその先のオールジャパンだと思いますが、どのようなバスケットで終えたいと思いますか?
「4年生は少ないので少しでも4年生と、そして他のチームメイトと、少しでも長くバスケットが出来れば。ただそれだけですね。練習から一日一日を大事にして、一試合一試合頑張っていきたいです」
「素直にうれしい」
自覚が芽生えたエースのここからに期待
◆#15遠藤祐亮(大東文化大・3年・G)
大東大の躍進にはこの遠藤と、同じく3年生の小原、田中の成長が欠かせない。もともと能力は高いが、安定を欠き、若さがつきまとった。しかし、入れ替え戦でのチームを鼓舞する姿勢、これまでのインタビューとは異なりしっかりとしゃべる態度、全てが一段階成長したと思わせる。学生バスケットにはプレーのみならず、こうした人としての成長も欠かせないものだ。この自覚をもっと多くの勝利につなげられる芯のある選手へ、さらなる変貌を望む。
―1部昇格おめでとうございます。今の気持ちを聞かせてください。
「ありがとうございます。素直にうれしいです。2年間、ずっと勝てない試合が多くて、下の方にばかりいたので…。リーグ戦を含めて、多く勝つことができてよかったです」
―3戦目は大接戦となりましたね。チームで意識していたことはありましたか?
「相手は長谷川選手(#11)が乗ってくると、みんなも乗っかってくるので、そこを潰そうという話をしてしました。あとは、“気持ちでやろう”と言っていました。特に気持ちは始めから入っていて、いい感じだったと思います」
―入れ替え戦までのチームの雰囲気はいかがでしたか?
「リーグ戦の最後のほうは、強いところと試合ができていなかったので、モチベーションを保つのが大変でした。今週1週間も、少しグダグダになりそうになっていたんですが、やっぱり1部に上がりたいという気持ちがあったことが大きかったです。直前の練習はかなり気持ちが入った練習ができたと思います」
―今年の大東大の選手からは、“去年の先輩たちのために”という言葉を多く聞きますが、それは遠藤選手も一緒ですか?
「そうですね。去年、ずっと出させてもらっていましたし。去年の経験があったから、1部に上がれる権利を手に入れられたと思うし、こういう結果に繋がったと思います。去年の先輩たちにはすごく感謝しています」
―小山選手が、3年生の自覚が出てきたことが大きいとおっしゃっていますよ。
「そうですね。一人ひとりが、試合に出たら、自分の仕事をきちんとやろうということを常に意識できていると思います。3年生だけではなくて、藤井(#19)とか、隆一(#14岸本)とかも、強い気持ちを持っています。こういう気持ちを持つようになったのは、合宿とかで、今の4年生がミーティングをたくさんやってくれたからです」
―敢えて課題をあげるとするならば、どのようなところになりますか?
「2戦目もこの試合もあったんですが、大東は試合の中でプレーが重くなってしまう時があります。そういうところを勢いで持っていけるようにしたいですね」
―インカレへ向けて。
「当たるところは関西大と、勝てば慶應大と、既に決まっています。このいい流れを切らないように、みんなで関西大も慶應大も倒すための練習をしていきたいです」
「キャプテンである自分の責任」
全てを負う覚悟を結果で果たせなかった悔恨
◆#10山越健司(法政大学・4年・GF・主将)
「去年の法政とは違う」
リーグ戦の最初に語った山越の言葉は、今度こそ法政大を変えるのだという決意に満ちていた。試合にこれまでほとんど絡んでこなかった自分がキャプテンという重責を担う意味はそこにある、という意志の現れだった。ここまで、法政大はいい選手もいたがその反面、どこかだらしない印象で悪い印象を残してきたこともまた事実だ。それをどの代の選手たちも「変えなければ」と言い、実現できずに終わった。それを、彼は本当に変えるつもりだった。
試合では、これまでにないパフォーマンスでチームをもり立てた。だが、結果を伴わなかった事は、やはり彼にとっては「自分の責任」でしかない。だが、この入れ替え戦での法政大は、これまでと違う粘りもあった。それを危機に立って初めて出せる力にするのではなく、常に実力として発揮していけるようになれば、変われる。この敗戦をさらなるチームの成長につなげられるよう、残された時間で努めて欲しい。
―今のお気持ちを聞かせて下さい。
「いやもう…僕の責任です。後輩たちにも申し訳ないとしか言いようがないです」
―でも今日の試合、山越選手をはじめ法政大の選手の気持ちはすごく感じられました。
「もちろん、全員勝ちたいという気持ちで戦いました。コートに出る人間が、出ない人間の想いも持って行かなければならないのは当たり前のことです。試合に出るからにはしっかり気持ちを込めてプレーしようと話していました。でも結局1部残留という結果は得られなくて…本当に申し訳ないです」
―1戦目は受け身に回ってしまったような印象を受けたのですが、やはり入れ替え戦の入りという事で特別な意識があったのでしょうか。
「入れ替え戦は自分自身4年間やってきて初めての経験でした。でも先輩たちから、入れ替え戦は大学で一番厳しい世界の戦いで、空気も全く違うというお話はいただいていたので、リーグが終わって1週間は本当にみんな目の色を変えて練習してきたと思います。それでも1戦目は、“残留”という形からか受け身に回ってしまった部分もありました」
―2戦目は一転して良い内容でしたね。
「1日目が終わって、負けという結果をしっかり受け入れて切り替えなければならないという話をして、2戦目上手くいったことは大きく評価できると思います。負けて崖っぷちに立たされて、もう一度初心に戻ろうとチームで話しました。それで法政の良さってなんだろうとみんなで考えた時に、それはやっぱり“バスケットを楽しむ”という事だったんです。だからアップから笑顔でバスケットを楽しもうと意識していました。そうやって原点に戻ったことがあの2戦目に繋がったと思います。でもやっぱり、今日勝たないと意味がないという話はしていたんですが…こういう結果になってしまいました。それは4年生、というか自分の責任です。それだけですね」
―“自分の責任”と言いますが、具体的にどうしてですか?
「去年の神津さんたちの代が終わって自分がキャプテンになった時から、チームの問題点ははっきり分かっていました。それは、モチベーションの差が出てきているということです。うちの大学はスポーツ推薦の枠も少ないですし、バスケットが好きで入部してくる人も多いんですが、その中には1部のレベルに自信を無くす選手もいます。試合に出る、出ないもあって、みんなモチベーションがバラバラだというのは感じていました。例えばトレーニングにしても、やっている選手、やってない選手がいて。でもやっぱり“勝ちたい”という想いはみんなあるわけですから、そこに向かって一つにまとめたいとずっと思っていました。問題点を直して新しい法政にしたい、というのは今井さん(監督)にも伝えましたし、だから恵二(#3鈴木)ではなく自分がキャプテンをやりたいと言ったんです。チームの問題点が分かっている中で、自分一人ではなく4年生全員で変えていこう、もともとあった良さに加えて新しい法政の良いところを作っていこう、と話していました。でもこんな風に負けて、勝利に向けてチームを一つにまとめられなかったのは、キャプテンである自分の責任だなと思います」
―4年生が少ない分そういった面は難しいですね。
「でもそれは言い訳に過ぎないと思うので。それにまず4年生の中でもモチベーションの差があるというのが、今一番の問題だと思っています。その4年生をまとめられなかったのは自分ですし。4年の大槻(#11)なんかは、特に今年からすごく奮起してくれましたが、不運な怪我をしてしまって。だからあいつの分も頑張りたかったですけどね…」
―でもまだ終わりではないですし、次はインカレです。
「そうですね。後輩にこれ以上負の遺産は残せないです。負けてから気づいたのでは遅いと何度も話してきたんですが、それでもまだ入れ替え戦でも一つにはなれませんでした。問題点が分かっている分、インカレこそ修正して臨みたいです。自分としても最後の大会ですし、僕はもうバスケットは将来やらないので、楽しみたいです。後輩に良い想いをさせてあげたいと思います」

喜ぶ大東大のメンバーたち。

5人の充実が、大東大の勝利に欠かせなかった。

試合後、崩れる法政大の面々。

うつむく選手たちを、4年生の鈴木がベンチへと促していた。

立ち上がりの大東大は#13小原(3年・F)、#15遠藤(3年・G)の両エースが得点。法政大は大東大のディフェンスに苦しみながらも、#41谷口(3年・C)、#11長谷川(3年・SG)がファウルからフリースローを得て行く。ロースコアな立ち上がりながら、法政大はフリースローで得点を重ね、大東大はファウルに苦しみつつも序盤のアウトサイドが生きて、1Qは15-17とリードした。
2Qも互角となった。法政大は#10山越(4年・G)のシュートで活気づき、#11長谷川が大東大スローインをカットして#21加藤(2年・CF)の速攻につなげ逆転。大東大も#15遠藤の3Pで返すが、#21加藤がバスケットカウントで再び押し戻すなど、どちらも譲らない展開が続いた。しかし残り4分を切ってから法政大は得点が止まりがちとなり、大東大も残り3分で#13小原のシュートを最後に決定打を出せない。2Qは29-30と1点差の拮抗した勝負となった。
3Qの序盤で大東大が#13小原の活躍で一気にリードを広げた。開始4分で#13小原が8点を稼ぎ、そこに#12小山(4年・F)のバスケットカウント、#11田中(3年・G)のシュートも続き、一気に12点の加点。10点差をつけられた法政大だが、主将#10山越が3Pで意地を見せ、#11長谷川の3Pがここでようやく決まると追い上げの姿勢を切らさず、今度は法政大の逆襲が始まる。#10山越のバスケットカウントに#11長谷川のシュートが続き、4点差に追い上げると、ライン際で粘って何度も法政大ボールを勝ちとり、スローインから#21加藤のバスケットカウントを奪うなど、気迫のプレーで43-44の1点差。そこに#10山越の3Pが生まれて残り50秒で46-44と逆転に成功する。大東大は開始3分の44点目を最後に、なんと残りの7分間ノーゴール。法政大の気持ちに押されて46-44で3Qを終えた。

大東大は得点が止まる時間帯もあったが、遠藤・小原の両エースが20点越えの活躍。インサイドでも法政大相手に粘った。これまで勢いのみだった若さが落ち着き、試合中でも声を出してチームを盛り上げた3年生の充実ぶりが見えた。一方の法政大は勝負どころのミスと、エースの長谷川にきれいにシュートを打たせる形がなかなか作れなかった。決めた3P5本のうち、4本は4Q最後、不利な状況を挽回しようとして無理やり打っていったものだ。倒されながらも決めていった集中力はさすがだが、最初から打つ形を作れなかったのは苦しい展開だった。勝負は僅差だった。しかし、勝負際の攻防で崩れなかった大東大が上回った。
歓喜と絶望。入れ替え戦という1年で最も過酷な試合の結末にそれが交錯する。笑顔の大東大をよそに、法政大の選手たちはしばらく下を向き、コートに膝をついて立ち上がることができなかった。彼らが号泣する姿など、誰も見たことがない光景だっただろう。しかし、それはまた2年前の大東大の面々と同じ姿でもある。2008年、1年生だった遠藤や小原、田中たちは期待を受けつつも、1部で1勝もできず2部へ落ちた。昨年はまとまりを欠き、2部最下位に甘んじた。だが、そうした主力たちの成熟と、主将・小山の誠実な奮闘、下級生たちの成長で、今年ようやく大東大はチームとしての形を手にした。入れ替え戦はこうした選手たちの永久運動だ。未成熟なものは蹴落され、力を得て再び浮上する。その繰り返しが涙と笑顔となってこの場で現れる。大東大の主力は3年生たち。来年は1部でその真価を発揮できる。そして、敗れた法政大の面々もまた、主力は3年以下だ。2部で切れず、入れ替え戦のような集中力でやり続けることができれば、再び復帰のチャンスはある。対照的な幕切れを見せた両者だが、ともに前途あるチーム。その力を、それぞれの場所で発揮して欲しい。
写真上:田中は安定してリードし、アウトサイドも決めていった。彼の成長も大きい。
写真下:勝負強いシュートは決まったが、少し遅かった長谷川。
※大東文化大・小山選手、遠藤選手、法政大・山越選手のインタビュー、試合の写真は「続きを読む」へ。
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【INTERVIEW】「全てに感謝の気持ちがこみ上げてきた」
主将として昇格の入れ替え戦に感無量
◆#12小山 純(大東文化大・F・4年・主将)

入れ替え戦の苦しさは、よく知っている。1年で阿部(JBLレラカムイ)や竹野(bj福岡)らのいた時代に1部に昇格し、翌年すぐ2部へ落ちた。そこから2年を経て再びの入れ替え戦だ。上がった喜びも、落ちる苦しみも両方知っている選手は強い。平坦な4年間ではなかったが、その波瀾万丈な経験を残された時間でチームのために生かして欲しい。
―1部昇格おめでとうございます。終わった瞬間はいかがでしたか?
「いやーもう、やったなというか…。試合に出てくれていた3年生・2年生と、ベンチ、応援席、スタッフ、ほんと全てに感謝の気持ちが込み上げてきて、1部に上がれて良かったなと思いました。ここまで長かったです(苦笑)」
―かなり競った展開になりましたが、試合中はどう思っていましたか?
「いや、負ける気がしなかったです。最後向こうは長谷川くん(#11)とかが意地で3Pを沈めてきて、やっぱり1部でやってきたプライドを感じましたけど、こっちも凄く集中して声も出せていたので、それを上回れたのではないかなと思います」
―入れ替え戦までの1週間、リーグ戦の終盤に下位チームとの戦いが続いたこともあってモチベーションを保つのが難しかったという話を聞いたのですが。
「そうですね…練習中に集中出来ていない時間帯が多くて、ゲーム形式をやってもぐだぐだだったりして。声を出して引っ張ろうとするんですけど、少し余裕が生まれてしまっていて、チームとしてモチベーションがあまり上がりませんでした。法政が1部で全敗しているという事で甘い気持ちがあったんだと思います。でもコートに入ってやることはやってくれたので良かったです」
―法政大相手に、インサイドを攻めようという指示はありましたか?
「裕也(#43鎌田)と龍野(#7今井)のところを起点に、という話はしていましたね。日大と青学のビデオを見ても、日大だったら熊吉(#24)が結構攻めていたので、だったら“ガツガツいけよ”という風に言っていました。でも向こうのインサイドもチャージングの取り方とかが上手くて、空回りしてしまって結果的に外からの点数が多くなったと思います。でも攻めようという気持ちがあって良かったです」
―今シーズンはずっと去年の4年生のことを仰っていましたが、先輩たちのためにも1部昇格を成し遂げましたね。
「そうですね、秀生さん(石井)と研太郎さん(小島)に嬉しい報告ができると思って本当に良かったです」
―先ほど遠藤選手(#15)にもお話を伺ったんですが、去年お話を聞いた時よりもだいぶ変わったというか、自覚が芽生えてきたように思いました。
「3年の3人は本当に成長したと思います。来年も安心して任せられますね。まだ終わってませんけど(笑)」
―今までの4年間で、入れ替え戦の厳しさを知っていると思いますが、その厳しさを乗り越えられたのはなぜだと思いますか?
「僕もずっと入れ替え戦を経験してきていますからね(苦笑)。最後に上がれて良かったです。昨日とか負けた時に自分は結構落ちてしまったんですけど、周りが結構カバーしてくれて、声も出してくれました。1回負けても次勝てばいいわけで、連敗しないようにしようとチームで話していましたね。モチベーションの維持が出来たというか、連敗しないチームになったことが良かったんだと思います」
―勝利の陰には応援の力もあったと思います。
「本当にあの応援には助けられていますね。応援がなかったら今日の勝利もなかったと思いますし、リーグ優勝も出来なかったと思います。そういう意味で、チームで勝ち取った1部昇格ですね」
―次は休む暇もなくインカレですね。
「とりあえず、1戦目から油断せずにしっかり関西のチームを倒して慶應に臨めたらいいなと思うので、また厳しく練習していこうと思います。少しでも今のチームと長くやるためにも頑張りたいです」
―今後の課題はいかがですか?遠藤選手は、試合中重くなってしまう時間帯があると仰っていましたが。
「そうですね。やっぱり受け身になる姿勢が多いというか、少し点差が離れると油断してしまう部分がありますね。それで今日とかも追いつかれてしまったので、強い気持ちを持つように一人ひとりがもう少し意識すればオフェンスも上手く回るのではないかなと思います。あと今日はブレイクがあまりなくて流れに乗れなかったということもありました」
―残すはインカレ、そしてその先のオールジャパンだと思いますが、どのようなバスケットで終えたいと思いますか?
「4年生は少ないので少しでも4年生と、そして他のチームメイトと、少しでも長くバスケットが出来れば。ただそれだけですね。練習から一日一日を大事にして、一試合一試合頑張っていきたいです」
「素直にうれしい」
自覚が芽生えたエースのここからに期待
◆#15遠藤祐亮(大東文化大・3年・G)

―1部昇格おめでとうございます。今の気持ちを聞かせてください。
「ありがとうございます。素直にうれしいです。2年間、ずっと勝てない試合が多くて、下の方にばかりいたので…。リーグ戦を含めて、多く勝つことができてよかったです」
―3戦目は大接戦となりましたね。チームで意識していたことはありましたか?
「相手は長谷川選手(#11)が乗ってくると、みんなも乗っかってくるので、そこを潰そうという話をしてしました。あとは、“気持ちでやろう”と言っていました。特に気持ちは始めから入っていて、いい感じだったと思います」
―入れ替え戦までのチームの雰囲気はいかがでしたか?
「リーグ戦の最後のほうは、強いところと試合ができていなかったので、モチベーションを保つのが大変でした。今週1週間も、少しグダグダになりそうになっていたんですが、やっぱり1部に上がりたいという気持ちがあったことが大きかったです。直前の練習はかなり気持ちが入った練習ができたと思います」
―今年の大東大の選手からは、“去年の先輩たちのために”という言葉を多く聞きますが、それは遠藤選手も一緒ですか?
「そうですね。去年、ずっと出させてもらっていましたし。去年の経験があったから、1部に上がれる権利を手に入れられたと思うし、こういう結果に繋がったと思います。去年の先輩たちにはすごく感謝しています」
―小山選手が、3年生の自覚が出てきたことが大きいとおっしゃっていますよ。
「そうですね。一人ひとりが、試合に出たら、自分の仕事をきちんとやろうということを常に意識できていると思います。3年生だけではなくて、藤井(#19)とか、隆一(#14岸本)とかも、強い気持ちを持っています。こういう気持ちを持つようになったのは、合宿とかで、今の4年生がミーティングをたくさんやってくれたからです」
―敢えて課題をあげるとするならば、どのようなところになりますか?
「2戦目もこの試合もあったんですが、大東は試合の中でプレーが重くなってしまう時があります。そういうところを勢いで持っていけるようにしたいですね」
―インカレへ向けて。
「当たるところは関西大と、勝てば慶應大と、既に決まっています。このいい流れを切らないように、みんなで関西大も慶應大も倒すための練習をしていきたいです」
「キャプテンである自分の責任」
全てを負う覚悟を結果で果たせなかった悔恨
◆#10山越健司(法政大学・4年・GF・主将)

リーグ戦の最初に語った山越の言葉は、今度こそ法政大を変えるのだという決意に満ちていた。試合にこれまでほとんど絡んでこなかった自分がキャプテンという重責を担う意味はそこにある、という意志の現れだった。ここまで、法政大はいい選手もいたがその反面、どこかだらしない印象で悪い印象を残してきたこともまた事実だ。それをどの代の選手たちも「変えなければ」と言い、実現できずに終わった。それを、彼は本当に変えるつもりだった。
試合では、これまでにないパフォーマンスでチームをもり立てた。だが、結果を伴わなかった事は、やはり彼にとっては「自分の責任」でしかない。だが、この入れ替え戦での法政大は、これまでと違う粘りもあった。それを危機に立って初めて出せる力にするのではなく、常に実力として発揮していけるようになれば、変われる。この敗戦をさらなるチームの成長につなげられるよう、残された時間で努めて欲しい。
―今のお気持ちを聞かせて下さい。
「いやもう…僕の責任です。後輩たちにも申し訳ないとしか言いようがないです」
―でも今日の試合、山越選手をはじめ法政大の選手の気持ちはすごく感じられました。
「もちろん、全員勝ちたいという気持ちで戦いました。コートに出る人間が、出ない人間の想いも持って行かなければならないのは当たり前のことです。試合に出るからにはしっかり気持ちを込めてプレーしようと話していました。でも結局1部残留という結果は得られなくて…本当に申し訳ないです」
―1戦目は受け身に回ってしまったような印象を受けたのですが、やはり入れ替え戦の入りという事で特別な意識があったのでしょうか。
「入れ替え戦は自分自身4年間やってきて初めての経験でした。でも先輩たちから、入れ替え戦は大学で一番厳しい世界の戦いで、空気も全く違うというお話はいただいていたので、リーグが終わって1週間は本当にみんな目の色を変えて練習してきたと思います。それでも1戦目は、“残留”という形からか受け身に回ってしまった部分もありました」
―2戦目は一転して良い内容でしたね。
「1日目が終わって、負けという結果をしっかり受け入れて切り替えなければならないという話をして、2戦目上手くいったことは大きく評価できると思います。負けて崖っぷちに立たされて、もう一度初心に戻ろうとチームで話しました。それで法政の良さってなんだろうとみんなで考えた時に、それはやっぱり“バスケットを楽しむ”という事だったんです。だからアップから笑顔でバスケットを楽しもうと意識していました。そうやって原点に戻ったことがあの2戦目に繋がったと思います。でもやっぱり、今日勝たないと意味がないという話はしていたんですが…こういう結果になってしまいました。それは4年生、というか自分の責任です。それだけですね」
―“自分の責任”と言いますが、具体的にどうしてですか?
「去年の神津さんたちの代が終わって自分がキャプテンになった時から、チームの問題点ははっきり分かっていました。それは、モチベーションの差が出てきているということです。うちの大学はスポーツ推薦の枠も少ないですし、バスケットが好きで入部してくる人も多いんですが、その中には1部のレベルに自信を無くす選手もいます。試合に出る、出ないもあって、みんなモチベーションがバラバラだというのは感じていました。例えばトレーニングにしても、やっている選手、やってない選手がいて。でもやっぱり“勝ちたい”という想いはみんなあるわけですから、そこに向かって一つにまとめたいとずっと思っていました。問題点を直して新しい法政にしたい、というのは今井さん(監督)にも伝えましたし、だから恵二(#3鈴木)ではなく自分がキャプテンをやりたいと言ったんです。チームの問題点が分かっている中で、自分一人ではなく4年生全員で変えていこう、もともとあった良さに加えて新しい法政の良いところを作っていこう、と話していました。でもこんな風に負けて、勝利に向けてチームを一つにまとめられなかったのは、キャプテンである自分の責任だなと思います」
―4年生が少ない分そういった面は難しいですね。
「でもそれは言い訳に過ぎないと思うので。それにまず4年生の中でもモチベーションの差があるというのが、今一番の問題だと思っています。その4年生をまとめられなかったのは自分ですし。4年の大槻(#11)なんかは、特に今年からすごく奮起してくれましたが、不運な怪我をしてしまって。だからあいつの分も頑張りたかったですけどね…」
―でもまだ終わりではないですし、次はインカレです。
「そうですね。後輩にこれ以上負の遺産は残せないです。負けてから気づいたのでは遅いと何度も話してきたんですが、それでもまだ入れ替え戦でも一つにはなれませんでした。問題点が分かっている分、インカレこそ修正して臨みたいです。自分としても最後の大会ですし、僕はもうバスケットは将来やらないので、楽しみたいです。後輩に良い想いをさせてあげたいと思います」

喜ぶ大東大のメンバーたち。

5人の充実が、大東大の勝利に欠かせなかった。

試合後、崩れる法政大の面々。

うつむく選手たちを、4年生の鈴木がベンチへと促していた。
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