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2018.11.02 (Fri)

【2018リーグ2部・コラム】泥臭く、あきらめず 〜慶應義塾大・吉敷秀太〜

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常に全力でやり続けるひたむきさが
チームに力を与え、伝統をつないでいく
〜慶應義塾大・吉敷秀太〜


昨季の2部リーグ、相次いで怪我人や離脱者が出たことで苦しんだ慶應義塾大。しかし、今年のチームは過去と比べても最も小さいであろう布陣ながら、第21戦終了時点で11勝10敗と中盤よりやや上で健闘。ディフェンス力の向上や上級生のリーダーシップは眼を見張るものがある。

特筆すべきは、一貫校出身選手の活躍だ。ここ数年は部員がかつてほど多くない。それゆえ以前はなかなか出番を得られなかった一貫校の選手の活躍はチームに必須であり、1部・2部を見渡してもこれほど一貫校の選手がプレータイムを得ているチームはないだろう。中でも目を引くのが、常にハードワークし続けている4年生の吉敷秀太の働きぶりだ。OBたちが築き上げてきた慶應義塾大の“らしさ”の体現、それが彼のプレーにはある。




強豪撃破で掴んだ手応えと
大学部への憧れを胸に一歩上を目指す


慶應義塾大のバスケット部は1部在籍時代からセレクションなしに入部できた。全国大会で活躍してきた華々しいキャリアを持つ選手がいる一方、そうした経験のない一貫校の選手が一緒になり、刺激を与え合うのも面白いところだ。吉敷は慶應志木出身。主力として出場している志木の同期・小原とともに大学でも体育会でバスケットを続けることを選んだ。小原はガード、吉敷は3〜4番をこなすが、2人は高校時代、インターハイの県予選でベスト4に進出。創部以来2度目の好成績で、大学でもプレーをしてみたい気持ちはそこから生まれた。

「ここまでやっているのは、高3の時の県大会、ベスト8のかかる試合で格上の埼玉栄に勝ったのがきっかけです。そこで自分にもできる可能性があるんだと感じて、もう一段階上で挑戦してみたくなったんです。慶應義塾では大学生と一貫校の生徒が触れ合う機会は多く、自分が高校時代にもジェイさん(’14卒吉川治瑛・現B3東京海上)や良太さん(’14卒伊藤良太・現B3岐阜)が練習や練習試合に来てくれました。そうした上手い人相手でも、たまにディフェンスを抜けたりする。それをモチベーションにできたし、ありがたい経験でした。それに、一貫校の生徒にとって大学のチームはやはり憧れの存在です」

インカレやリーグ、そしてバスケット部として最大のイベント、慶早戦などを一貫校の生徒もたびたび観戦に訪れる。また、幼稚舎から大学部、医学部バスケットボール部までが一堂に会すバスケットボールフェスティバルでは、大学生にすべてのカテゴリが総当たりとなるが、大学チームに勝てると一生忘れられないと言う選手もいる。こうした交流を経て、大学部への憧れは自然と醸成されていくのだろう。

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「飛び込むことは苦じゃない」
ひたむきに役目を果たすことだけを考える


1810kisiki5.jpg吉敷が1年生のときの主将は福大大濠出身の福元直人。ほかに洛南出身の大元孝文(現社会人バスケット三井住友海上)、延岡学園出身の黒木亮(現B3東京海上)らが揃い、彼らはチームが2部から1部に上がったときにも欠かせない活躍をした選手たちだ。「やばいところに入ってしまった」と感じたそうだが、吉敷の真価はそれらOBとは違うところにある。それは飛び込みリバウンドやルーズボールといった、際どい瞬間におけるボールへのあくなき執着心。下級生の頃こそ出番はなかったが、しぶといプレーは学年が上がるほどチームになくてはならない活力となり、4年目の今年は春のプレシーズンでは1部強豪相手からターンオーバーを、2部リーグ戦でも何度もチームに好機をもたらすシーンを披露している。

「自分にはそれぐらいことしかできないと思っています。スキルで言えば自分より上手い後輩もいる。でも取れなくても、意地でもボールに触って時間を稼いでいくことが自分の役割だし、だから出してもらってもいます。ディフェンスでいえば鳥羽だって激しくやってくれる。でも、鳥羽や髙田たちには得点を取ってもらわなければならない。彼らには彼らの役目としてしっかりシュートを打って欲しい。だったら、自分が彼らの体力をいくらでも肩代わりします。代わりに飛び込んだりぶつかったりすることは、怖くもしんどくもないんです」。

世代は少し離れてしまったが、慶應といえばルーズボールと言われた時代がある。2004年にリーグ・インカレの2冠を達成した頃から、慶應義塾の泥臭く頑張る姿勢は一つのカラーになっていった。時とともに選手やコーチも代わり、イメージは変化してきたが、吉敷の持つガッツや執着心は過去のOBが築いてきた慶應らしさを今に伝えてくれている。「ほかの武器はそんなにない」と言うが、彼の球際の頑張りなくして語れない試合は今季いくつもあった。ただその代わり、リスクもある。その奮闘ぶりが仇になり、怪我で第10戦から12戦まで欠場を経験。ほかにも欠場した選手がおり、チームとして苦しい3戦となった。

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できることを 100%やり続ける
4年生たちに共通する思いを次世代へ


1810kisiki3.jpg今年の慶應義塾は吉敷いわく「圧倒的に小さい」。スタメンの最高身長は187cmの髙田で、センターはいない。しかし昨年よりもバスケットの質もメンタルも向上している。それはなぜか。

「シーズンインのとき、話し合いメインの合宿を行って、チームの考えを一致させてからスタートしていることが大きいです。話す機会が多いのはいいことだし、今年はこれまでと危機感がまったく違います。僕らは小さく、何か特別なことを起こさないと勝っていけないとみんなが思っていました。それに同期の鳥羽や小川(学生コーチ)の発信力や助力が素晴らしい。あの2人の影響力が甚大で、伝えてくれることがとても大きいからこそ、自分も近づけるように頑張っていかないと、と思うんです」。

話に出てくる鳥羽や小川以外も4年生はプレイヤーはもちろん、スタッフも一丸となり、全員がそれぞれの役割でチームを支えている。数字では髙田や山﨑といった3年生エースたちも目立つが、試合を見れば鳥羽、原、小原、澤近、そして吉敷らが見えるところ、見えないところで貢献をしてこその11勝だということがわかる。またここ数年、慶應大は怪我人が相次ぎ、年間を通して誰かが欠けた状態だった。リーグがスタートしてから原、吉敷、澤近が負傷してヒヤリとさせたが、彼らが全員コートに戻ると落ち着きも増した。その4年生全員に共通する思いも語ってくれた。

「僕らのチーム哲学は何なのだろうと、4年の皆で共有しあっていることがあります。それはそれぞれができることを100%やって、最大の結果を出せるチームを追い求めていくということです。自分にとっての100%はディフェンスとリバウンド。これは結果がどうあれ、誰もが全力でできることでもあります。僕は自分のできることをさぼらずにやり続けていく。そうした姿勢や意識をチームに残したい。これは口には出していないけれど、4年生みんなが思っていると感じます」。

チームに慶應義塾に必要なDNAを残せるかどうか、4年生は使命感を持って取り組んでいる。2部降格を経験し、今の4年の多くが長期欠場を強いられる怪我に泣き、苦難を味わってきただけにこの4年間は楽ではなかった。だからこそ、言いあわなくても感じられるものがあるのだろう。そして、吉敷は自分と同じ一貫校の後輩たちの頑張りも期待する。

「早慶戦ではベンチメンバーの自信のなさが課題だと感じました。でも、リーグ戦では一貫校出身の小原や僕、工藤、岩片といったベンチメンバーも戦えるんだということを、ちゃんと見せられている。大学生になればスキル的な成長というのはそんなにたくさんないと思います。でも、自信を持って自分の良さを出せば、ちゃんとできる。それを忘れずやり続けたいし、後輩もそうあって欲しい」。

「大変なところ」と感じた大学の世界だが、全国区のようなキャリアだけがすべてではないと、吉敷のプレーは物語っている。そして彼の後に続く後輩たちが再びチームで最高峰の場所を目指すためにも、その精神をしっかり残さなければならない。吉敷、そして4年生全員は最後までそれを全力で見せていくだろう。

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吉敷秀太/きしき しゅうた
#8/F/178cm/77kg/慶應志木



テーマ : バスケットボール(日本) - ジャンル : スポーツ

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